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アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

ローカル色豊かなテルグ語映画『ハヌ・マン』③ツッコミどころは満載!

2024-10-03 | インド映画

『花嫁はどこへ?』と同じ日、明日10月4日(金)に、トリウッド映画『ハヌ・マン』も初日を迎えます。テルグ語映画だというので、『RRR』かはたまた『バーフバリ』か、と期待した方には「ごめんなさい💦」の作品なんですが、しかし、侮れませんぞ、この映画。製作費がたったの4億ルピー(約7億円)なのに35億ルピーも稼いでしまって、歴代興収トップ50にも堂々のランクイン(第46位だけど、それでもたいしたもの)。テルグ語映画の歴代興収トップ10にも第8位にランクインして、プラバースやラーム・チャラン、NTR Jr.、アッル・アルジュンらの主演作と肩を並べているのですから、敵もさるものひっかくものの映画なのです。でもね、やっぱりノンスター映画だけあって、いろいろツッコメるんですよ、この作品。ネタバレにならないよう気をつけながら、皆さんに楽しんで見て貰うために何カ所かツッコんでみたいと思います。その前に、本作に関する以前のご紹介は、こちらこちらにあります。ハヌマーンのことなどもご紹介していますので、見てみて下さいね。

①まずは、日本版チラシからツッコミを始めましょう。チラシ一番下のキャッチフレーズ「2024年インド映画世界興収No.1!」というこの言葉、実は正しくて正しくないんですね。なんじゃそりゃ、と言われそうですが、「No.1!」の下に書いてある小さな小さな字をご覧いただければ謎が解けます。そこにあるのは――「2024年6/25時点 imdb調べ」の文字。つまり、22024年6月25日の時点まではそうだった、でもその後は残念ながら違うのよ~、ということなんですね。「imdb」はロゴとしては「IMDb」と書き、「International Movie Data Base」の略語です。このサイト、皆さんもよくチェックしてらっしゃるのではと思いますが、タイトルとストーリー、スタッフ、キャスト紹介等が画像と共にアップされている「世界映画データベース」なんです。同時に各作品への採点も出ていて、『ハヌ・マン』は7.8/10、つまり100点満点で78点、というのが観客の評価です。IMDbの採点は、投票者数が少ないとちょっとあやしいのですが(100人以下で高得点、というのは、身内ばっかりが投票している恐れあり)、『ハヌ・マン』は「30k」なので3万人が投票していることになり、公平な評価と言えると思います。たまにハズレもありますが、IMDbで7点以上だと見る価値ありの作品、と言っていいと思います。8点以上だと、これは「マスト・ウォッチ」作と言っていいですね。

©2023 RKD Studios & Primeshow Entertainment. All Rights Reserved

ちょっと話がそれましたが、このサイトは興行成績も扱ったりするので、そこからデータを取りました、ということなのでしょう。実は6月27日には、同じくテルグ語映画である『Kalki 2898 AD(カルキ西暦2898年)』が封切られ、あっという間に『ハヌ・マン』を抜いて世界興収は100億ルピーを超え、歴代興収第7位まで駆け上がってしまったんですね。主演はプラバースで、共演はアミターブ・バッチャンにディーピカー・パードゥコーンという、トリウッドとボリウッドの大物がタッグを組んだ作品で、ハリウッド映画を思わせるディストピアもの大作です。このブログではこちらで概略を紹介していますが、実は私もまだ全編は見ていません。というわけで、『ハヌ・マン』は三日天下ならぬ「半年天下」だったのでした。でも、ほとんど無名のテージャ・サッジャーが主演しているのですから、半年天下でもたいしたものですよね。

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②その主演のテージャ・サッジャーですが、「ほとんど無名」と書いたものの、子役としてはたくさんの映画に出演していて、大人の俳優としてデビューしたのは2019年のサマンタ主演作『Oh! あやしいベイビー』から。この作品、本年5月の「テルコレ」で英語字幕上映されたので、ご覧になった方もいらっしゃるかも知れませんね。この同じ「テルコレ」で『ハヌ・マン』も英語字幕で上映されたのですが、この頃はまだ『ハヌ・マン』がツインさんの手によって一般公開されるとは「テルコレ」さん側はつゆ知らなかったようで、従ってチラシの『Oh! あやしいベイビー』紹介はテージャ・サッジャーには一言も言及なし。私も全然知らなかったので、『ハヌ・マン』は見に行ったけど、韓国映画『怪しい彼女』(2014)のリメイクだという『Oh! あやしいベイビー』はパスしてしまいました。だって、シム・ウンギョンの韓国版はもちろん、多部未華子の日本版も見たし、ベトナム版も見たのでもう結構、と思ったんですよー。どの映画も軽んじてはいけません、と自分にツッコミを入れておきましょう。

もう一つテージャ・サッジャーの出演作についてですが、デビュー作は1998年のチランジーヴィ主演作『バブーをさがせ!(Choodalani Vundi)』で、上写真で”メガスター”チランジーヴィ(ラーム・チャランのパパですね)に抱かれているのが、幼き日のテージャ・サッジャーです。『バブーをさがせ!』は、2000年に日本で初めて公開されたテルグ語映画『愛と憎しみのデカン高原』(1997)に続くテルグ語映画公開第2弾として、配給会社シナバールシネマによって全国上映されるはずでした。しかし残念ながら、公開までには行かなかったんですね。そんなご縁もあるというか縁がなかったというかのテージャ・サッジャー、いよいよ日本への本格的デビューです。(余談ながら、シナバールシネマの代表松沢靖さんは、この当時トリウッドに買い付けに行って、まだ少年のラーナー・ダッグバーティに会ったりしているのですが、テルグ語映画に目を付けたあと、今回『ハヌ・マン』の字幕監修も担当している山田桂子先生が東京外大AA研で行ったテルグ語言語研修に参加し、ついには山田先生と結婚してしまったという強運の持ち主です。2014年の2本のテルグ語映画『あなたがいてこそ』(2010/S.S.ラージャマウリ監督作)と『バードシャー テルグの皇帝』(2013/NTR Jr.主演作)公開から始まったと言っていいテルグ語映画@日本の隆盛も、元はといえばこの松沢さんの情熱に端を発しています)

上は、『愛と憎しみのデカン高原』のパンフに掲載された公開予告です。チランジーヴィの右は、2004年にヘリコプター墜落事故で亡くなる女優ソウンダリヤ。この四半世紀の間には、いろいろあったんですね....。

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③さらにツッコミたいのが、敵役の方がハンサム度高し!というキャスティング。上の写真が『ハヌ・マン』で敵役となるマイケルで、演じているのはヴィナイ・ラーイという俳優さん。背はすっと高く、顔もイケメンの部類に入るかっこいいお兄さんです。上写真で手に持っているのが、ハヌマントゥが水中で見つけた不思議な力を持つ宝石、赤輝石なんですが、これに執着してハヌマントゥの住む村に乗り込んできたという自己中男を、ヴィナイ・ラーイが憎々しげに演じていて見物です。それに、映画の冒頭に出てくるのがこの人が演じるマイケルの少年時代の話なので、どっちが主役かわからなくなってしまいます。このマイケル、名前からしてハリウッドのマーベル映画のダークヒーローを想起させるようになっている感じで、時にはハヌマントゥのテージャ・サッジャーを圧するような演技を見せてくれます。しかしこのハンサム顔、誰かに似てる...、と思ったら、ボリウッド映画のドンとも言うべき監督にしてプロデューサーのカラン・ジョーハルにそっくり! 最近のカラン・ジョーハルはなぜか痩せて頬がこけていますが、以前の顔はヴィナイ・ラーイとうり二つです。

   

カラン・ジョーハル Vs. ヴィナイ・ラーイ

あんまり言うとカラン・ジョーハル親分に睨まれるかも知れないので、まずは画面でご覧になってみて下さいね。

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④まだまだツッコミがあるんですが、ベタなギャグが多すぎる、というのも一応ツッコんでおきます。テルグ語映画は、ボリウッド映画の1970年代作品かと思うぐらい、コメディアン系の人がいろいろ出てきて、とにかくギャグをかましてくれるのですが、本作もそう。主人公ハヌマントゥの牛乳屋の友人カシやら、村の食料品店の巣頭のおっちゃんやらが次々に笑わせにかかります。そして、本作のピカいちギャグマンは、このお猿さんです。最初に登場した時は、まさかこのお猿さんがしゃべるとは思わなかったので、「え、木の下で誰がしゃべってるの?」と思ったりしたのですが、「コティ」というのがこの猿の名前だとわかると、そのうるさいおしゃべりが楽しめるようになります。声をあてているのが、主演級の俳優であるラヴィ・テージャなのが意外ですが、ノリノリでアフレコしていますので、楽しい役だったみたいです。ラヴィ・テージャはこんな人です。

お猿に似ていなくもないって? 結構ハンサムなんですが、ヒーロー役でもちょっと線が細いというか、人情味溢れるような役がお得意です。まあ、ベタなギャグ満載もテルグ語映画の特徴と思って、楽しんで下さいね。

⑤最後に、各所に登場するハヌマーンもツッコミたい存在です。まずは村の崖に彫られたハヌマーンの巨大な像。

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どうやって彫ったんだあ! ピラミッド作るより難しいぞーっ!! 「そこはハヌマーン様の奇蹟で...」とか言っちゃうんでしょうけど、インパクトありすぎです。あとは画像がないのですが、ラスト近くには見事な現れ方をし、観客を驚かせてくれます....が、「えー、そうなのォ?」になること間違いなし。ぜひお楽しみに。そのラストシーン近くの画像を付けておきますが、ハヌマーン像、ちょっと位置関係が違うんじゃないの? CGは丁寧に作りましょう、と最後のツッコミを。

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こんな風にあれこれ楽しめる『ハヌ・マン』、明日はぜひ劇場に駆けつけて下さい。最後に映画のデータと予告編を付けておきますが、主演のテージャ・サッジャーからのメッセージも来ているみたいです。こちらをチェックして下さいね。

『ハヌ・マン』 公式サイト 
 2023年/インド/テルグ語/158分/原題:Hanu-Man హను మాన్‌/字幕:福永詩乃、字幕監修:山田桂子
 監督:プラシャーント・ヴァルマ
 出演:テージャ・サッジャー、アムリタ・アイヤル、ヴァララクシュミ・サラトクマール、ヴィナイ・ラーイ、ラヴィ・テージャ(声の出演)
 配給:ツイン
10月4日(金)より新宿ピカデリーほかでロードショー

『ハヌ・マン』予告篇

 


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