アジア映画巡礼

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TIFF2023-DAY4:コンペ部門のイランがらみ作品がすごい!

2023-10-26 | アジア映画全般

本日は無事にTIFFに出勤し、予定していた3本の作品を見ることができました。そのうちのコンペ作品2本は、製作国にはイランが入っていないものの、イランと深い関係のある作品で、もう1本はカザフスタン作品ながらインドとパキスタンが製作費の一部を出資しているという、カスピ海を巡るあのあたりの世界に浸った1日でした。3本それぞれ、短くですがご紹介しておきます。

『ペルシアン・バージョン』

©Yiget Eken. Courtesy of Sony Pictures Classics

 2023/アメリカ/英語・ペルシア語/原題:The Persian Version
 監督:マリアム・ケシャヴァルズ
 出演:レイラ・モハマディ、ニコシャ・ヌール、カマンド・シャフィイサベット
 今後の上映日時:10/27(金) 14:45- / 10/29(日) 10:00- 

©Yiget Eken. Courtesy of Sony Pictures Classics

アメリカに暮らすイラン人一家の話で、中心人物は母親と彼女の8人の息子のあとに生まれた一人娘のライラ。イラン革命のずっと前に、医師である夫と共にアメリカにやってきた母は、イラン革命で帰国できなくなり、アメリカで様々な職業に就いて夫を助けながら、9人の子供たちを大きくしてきました。ところが、一人娘のライラはレズビアン婚はするは、妻となった女性とは結局離婚するはで、心配事が絶えません。今回も、仮装パーティーで知り合ったドラァグクイーンの男とベッドインしたと思ったら、何と妊娠してしまったではありませんか。いつでも角突き合わせているこの母娘に、和解は訪れるのか...。

©Yiget Eken. Courtesy of Sony Pictures Classics

ジェットコースター・ムービーと呼んでもいいぐらい、2人の過去に遡り、さらにその上の祖母の過去まで描かれて、お話はあっちへ飛んだりこっちへ飛んだりなのですが、旋風のような母と娘の迫力で、最後まで面白く引っ張っていってくれます。途中みんなで歌い踊るシーンも挟まれ、懐かしいグーグーシュ(イランの革命前に絶大な人気を誇った女性歌手)の名前も飛び出したりと、イラン文化にかつて浸った人間にはたまりません。会話が半分英語、半分ペルシア語なので、ペルシア語がもっとわかればよけいに楽しかっただろうに、とちょっと残念ですが、字幕も工夫してあって、十分楽しめます。監督はこんな人です。マリアムというお名前から女性だとは思っていましたが、若い! イラニアン・アメリカン映画界のファラー・カーンというところかも。


『タタミ』

©Juda Khatia Psuturi

 2023/ジョージア、アメリカ/英語・ペルシア語/原題:Tatami
 監督:ザーラ・アミール・エブラヒミ、ガイ・ナッティヴ
 出演:アリエンヌ・マンディ、ザーラ・アミール・エブラヒミ、ジェイミー・レイ・ニューマン
 今後の上映日時:10/27(金) 21:15- / 10/29(日) 13:20- 

©Juda Khatia Psuturi

もう1本は、『ペルシアン・バージョン』とは真逆のシリアスな作品で、モノクロの映像が緊迫の度合いを高めます。イランの女子柔道選手が主人公で、海外で開かれた国際柔道選手権の試合中、イラン当局から横やりが入り、イスラエル選手との対決を避けるため棄権しろ、と迫られるレイラが主人公です。コーチは当局の意を受けてレイラに棄権するように言うのですが、優勝を狙える実力があるレイラはそれを斥けて試合を重ね、勝ち進んでいきます。当局の手が迫った夫は幼い息子と共に国外に脱出することを選びましたが、レイラの年老いた両親が当局に拘束され、弱々しい父親の「国のために棄権してくれ」と言う声が入った動画がレイラの携帯に送られてきます...。

©Juda Khatia Psuturi

コーチ役を演じると共に、共同監督も兼ねているのが、『聖地には蜘蛛が巣を張る』(2022)で女性記者を演じたザーラ・アミール・エブラヒミ(上写真)です。レイラ役のアリエンヌ・マンディも熱演で、柔道の試合シーンも迫力満点。こちらも最後まで緊張感が途切れない力作でした。最後に監督お二人の写真を付けておきます。

 

 

『マディーナ』

©KANOKINO PRODUCTION

 2023/カザフスタン、パキスタン、インド/カザフ語/原題:Madina
 監督:アイジャン・カッセィムベック 
 出演:マディーナ・アキルベック、アリベック・アディケン、ネセィベリ・セリクバエワ
 今後の上映日時:10/28(土)
19:25- / 10/30(月) 21:05- 

©KANOKINO PRODUCTION

多分カスピ海の沿岸だと思うのですが、ある街に住むマディーナは、昼はダンス教師、夜はクラブのショーのダンサーとして稼ぎながら、2歳の女の子と祖母、そして定職に就こうとしない弟ラウアンを養っています。ラウアンはギャンブルで稼いだりもするのですが、何かトラウマがあるらしく、人前で話す訓練をするクラスに参加したりしているものの、なかなか就職ができそうにありません。マディーナが生んだ娘の父親は、自分の子であることを認めようとせず、マディーナはDNA鑑定に持ち込んで決着を付けようとしているのですが、時間がかかるばかりでらちがあきません。クラブの客で、すでに2人の妻がいる金持ちがマディーナを誘ったり、ダンス教室に怒鳴り込んできた男がマディーナをさげすんだりと、心は傷つくばかり。しかし、ラウアンはもっと深い傷を負っていたのでした...。

©KANOKINO PRODUCTION

これはコンペ部門作品ではないのですが、これも女性監督の作品で、アイジャン・カッセィムベック監督は下写真のような人です。マディーナが解放されたことを示すためか、プールで全裸で泳ぐシーンが最後の方に出てくるのにはちょっとげんなりしましたが、カザフスタンに海がある! と驚き、そう言えばカスピ海にも面しているのだった、とあらためて風景に見入ったりと、中央アジア世界も多様なことを知らされた作品でした。

明日はやっとインド映画の『相撲ディーディー』が見られます。24日のプレス試写上映を体調不良で断念し、一般上映のチケットをもらって見よう、などと思っていたら、本日香港映画『離れていても』のチケットが満席でもらえず、これは人気作はチケット売り切れが多いかも、と青くなったのでした。で、先ほど『相撲ディーディー』のチケットサイトにアクセスしたら、奇跡的に1席、しかも端の席が空いていて、ラッキー! とばかり購入を済ませました。で、他作品の状況も見てみると、皆さん、面白い作品はどれかをよーくご存じのようで、私の見たい作品はほぼ全部ソールドアウト。『相撲ディーディー』は日曜日の上映ももう売り切れていました。配給関係の皆様、『相撲ディーディー』には注目なさった方がいいみたいですよ~♫。ではでは、おやすみなさ~い。

 


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