アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

第32回東京国際映画祭:DAY 2

2019-10-30 | アジア映画全般

今日は、昨日とはうって変わったよいお天気でした。六本木会場の様子もちょっと写真でお見せしておきましょう。


今年は無料配布のプログラムは桜色の表紙だったのですが、カタログでは白地になり、どうもこちらがメインのカラーのようです。毎年変わるのもいいような悪いような...。上映作品ポスターがいっぱい貼ってあるボードには、いつものように通る人がみんな足を止めていきます。


本日は、3本の作品を見てきました。

『ある妊婦の秘密の日記』(画像はいずれも©One Cool Flm Production Limited)

 2019年/香港/広東語/95分/原題:Baby復仇記
 監督:ジョディ・ロック[陸以心]
 出演:ダダ・チャン[陳静]、ケヴィン・チュー[朱鑑然]、キャンディス・ユー

主人公のカーメン(ダダ・チャン)は広告代理店で働くキャリアウーマン。夫のオスカーは香港のプロバスケ・チームの花形で、夫の母親とも仲良くやっていたカーメンでしたが、予期せぬ妊娠をしたことで人生計画がいろいろ狂うことに。会社から派遣される予定だったベトナム行きはおじゃんになるし、義母は妊娠生活のアドバイザーを雇ってどんどんカーメンの生活に介入してくるし、で、いいかげんうんざりする毎日です。マカオの女子校で同級生だった友人たちはすでに子持ちになっているのですが、彼女たちを見ていても子供を持つことはそんなに幸せとも思えません。おまけに、カーメンの実母は子育てを放棄して麻雀にあけくれていた過去があり、それもカーメンのトラウマになっていたのでした...。

 

妊娠&出産を巡るあれやこれやのドタバタを描いているのですが、描き方がチープで見ている方に少しも響いてきません。主人公の妄想シーン等では目をそむけたくなるシーンもあり、もう少し女性を尊重して描写を考えてくれたらなあ、と何度か失望しました。『レイジー・ヘイジー・クレイジー』(2015)の女性監督ジョディ・ロックの作品、ということで選ばれたようですが、これでは香港の女性たちにも支持されないのでは、と思います。


『失われた殺人の記憶』(画像はいずれも©Dante Media Lab)


 2019年/韓国/韓国語/109分/原題:
 監督:キム・ハラ
 出演:イ・シオン、ワン・ジヘ、アン・ネサン

 ある朝、ドアを叩く音で目覚めたジョンホ(イ・シオン)は、尋ねてきた警察官(アン・ネサン)に別居中の妻が殺されたことを知らされます。ところが、昨夜のアリバイを尋ねられても、ジョンホは何も記憶がないのです。それどころか、ジョンホの手と着ているYシャツには血がついている始末。警察官に疑われたジョンホはその場から逃げ出しますが、昨夜の記憶を取り戻さないと、妻の殺人犯にされることは明らかです。ジョンホは、昨夜一緒に飲んだ友人を思い出し、彼と会って記憶を辿り始めますが...。


主人公が思い出す前日の記憶がフラッシュバックで描かれ、さらなる過去に遡って思い出したシーンのフラッシュバックもあり、加えて妻の行動や関連する人物の行動を見せるフラッシュバックも...と、複雑な構造に頭が混乱しそうでした。その時々の主人公の姿でかろうじて判断できるものの、かなり見るのがしんどい作品であることは事実です。ただ、作品の骨組みはしっかりしており、登場人物たちも少々ごちゃごちゃしているものの描写がそれぞれにうまいので、最後まで引き込まれて見てしまいました。ラストに、事件が一応の解決を見てから14ヶ月後のシーンが出てくるのですが、主人公を借金苦に陥れたサラ金の女社長が「三つ子の魂百まで」であることはわかったものの、あの主人公の姿はいったい...と、その点だけ「?」でした。どこか配給会社が買って公開されるかも知れないので、あまり詳しく言わないようにしますね。


『フォックストロット・シックス』(画像はいずれも©Rapid Eye Pictures)


 2018年/インドネシア/英語/114分/原題:Foxtrot Six
 監督:ランディ・コロンピス
 出演:オカ・アンタラ、マイク・ルイス

近未来のインドネシア。全体主義政党ピラナス党が国家権力を掌握、反対運動が勃発します。取材に駆け回るサリ(ジュリー・エステル)は恋人のアンガ(オカ・アンタラ)から結婚指輪を示されますが、貧しい彼はまだダイヤを買えず、金属の部分だけでした。将来に含みを持たせて別れた2人でしたが、その後サリは行方不明になってしまいます。それから10年、今はピラナス党の国会議員となったアンガは、優雅な生活を送っていました。ところが、政権の中枢にいる人々が重大な裏切り行為をして、国民をだましているとわかった時、アンガは昔の海兵隊時代の友人らに声を掛け、政権に対して反旗をひるがえすことを決意します。彼らの目的は、大統領らお偉方自身の口から裏切り行為を白状させ、その映像を全国民に見せることでした。武装したアンガら6人は、要塞のようなピラナス党の本拠地に乗り込みます...。

インドネシア映画ですが、セリフは全編英語です。しかもどうやら俳優自身の声のようで、これはすごい! と思ってしまいました。見せ場は本拠地に乗り込んでからの戦いのシーンですが、そこに至るまでが「七人の侍」というか「八犬伝」というか、アンガ以外のキャラクターがどんな人物で、どんな風に参集してくるのか、ということを知る楽しみがあり、その辺から俄然面白くなりました。それ以前にサリと再会したりするシーンもあるものの、そのあたりの筋の運びはいまひとつで、浦川留さんがブログに書いていた「時たまクエスチョンマークが頭に浮かんだりもしつつ深く考えている余裕を与えない盛り上げ方にまあいっかと思えてしまうアツいB級アクション映画」という指摘はそういうところかも、と思ってしまいました。しかし、どこか配給会社が買いそうな作品ではあります。

映画の合間に外に出たら、ちょうど香港映画『チェリー・レイン7番地』の上映が終わったところらしく、楊凡(ヨン・ファン)監督がたくさんのファンにサインをせがまれていました。ヨン監督、もう72歳だというのにお若いですね。

『チェリー・レイン7番地』(下)はちょっとなー、の私ですが、ヨン監督の審美眼がよく現れた作品ではあったので、それで特に女性観客の心には訴えかけるものがあったのかも知れません。アニメ映画に詳しい小野耕世さんのご意見など、うかがってみたいものです。

@Farsunfilmcompanylimited


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4 コメント

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観るのがせいいっぱい(笑) (よしだ まさし)
2019-10-31 12:19:11
連日のレポートを楽しませていただいておりますが、相変わらずお仕事が早い。
映画のレポートからQ&Aのレポートまで、素晴らしいですね。cinetamaさんのレポートと、浦川留さんのブログで、自分の行けない映画の様子も知れて、たいそう参考になります。
自分の方は観るのが精一杯で、レポートを書けたのはとりあえずこれ1本だけ。
https://ameblo.jp/garakuta-fuuun/entry-12540925377.html
まだまだ、先が長いです(笑)
返信する
よしだ まさし様 (cinetama)
2019-10-31 22:20:32
コメント、ありがとうございました。
よしださんこそ、ラヴ・ディアス監督作品のレポート、超お早いではありませんか。
録音がなくても、片方の女優さんは日本語の受け答えだったらしいですし、ぜひQ&Aをアップして下さいね。

ところで、今日もこれからレポートを書くのですが、最後に遅れていって見た『リリア・カンタペイ、神出鬼没』がすっごい面白かったです。
しかし、記事にも書きますが、主人公の名前は劇中では「リリア・クンタパイ」と聞こえましたよ、TIFF事務局様。
”Lilia Cuntapay”の”Cuntapay”、英語読みにしたらダメじゃん!
JFアジアセンターが作品リストを出す時に”カンタペイ”にしちゃったのかも知れませんが、映画の中ではハッキリ”クンタパイ”と聞こえるのになあ。
明日ご覧になるようでしたら、たっぷりと楽しんで下さいね!
返信する
クンタパイでした(笑) (よしだ まさし)
2019-11-01 10:50:31
Lilia Cuntapayは、間違いなくリリア・クンタパイでした(笑)
映画を観ていれば、絶対に間違えるはずないのに、なんで映画のタイトルが「カンタペイ」になっちゃうんでしょうね。
ちなみにその後、いっきにレポートをアップしました。
でも、ぜんぜん追いつきません。
Q&Aのレポートは、いったいいつになるのでしょうね(溜息)

https://ameblo.jp/garakuta-fuuun/entrylist.html
返信する
よしだ まさし様 (cinetama)
2019-11-01 23:18:16
引き続いてのコメントと、TIFFのフィリピン映画紹介リストをありがとうございました。
ちょうど今日、『存在するもの』と『ミンダナオ』を見たので、『リリア・カンタペイ』と合わせて3本のご紹介を読ませていただきました。
しまった、と思ったのは、『フードロア:Island of Dreams』をもっと褒めておいて、よしださんを悔しがらせたらよかった、ということ(笑)。
いや、でもホント、エリック・マッティ監督作品とは思えぬ穏やかさでした。
『存在するもの』も、実は私は全然怖くなくて、あ~んなに脈絡なくいろんなものや現象を出してきたら、怖がろうにもしらけるばっかりじゃん、と冷めてしまっていました。
ホラー映画苦手の自分としては珍しい反応で、エリック・マッティ監督、ちょっとアカンのんちゃう? と思い始めています...。
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