アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

第32回東京国際映画祭:DAY 1プラス

2019-10-30 | 香港映画

昨日の、『ファストフード店の住人たち』のQ&Aレポートです。司会はプログラミングディレクターの石坂健治さん、登壇者は黃慶勳(ウォン・シンファン)監督、郭富城(アーロン・クォック)、楊千[女華](ミリアム・ヨン)のお三方です。


石坂:この作品は、日本語のタイトルを付けるのに苦労しました。英語のタイトルは「I'm Livin' It」ですが、中国語のタイトルは「麥路人」で、「麥」は麦のことであるものの、香港では大手ファストフード・チェーンの名を指すのです(「麥當労」がマクドナルドの中国名)。それで、こういう日本語のタイトルになりました。では、お一人ずつご挨拶からお願いします。


監督:これは、私の初めての監督作です。自分の夢でもありました作品ですので、皆さんに見ていただけて幸せです。

石坂:今回がワールドプレミアで、皆さんが世界で初めてご覧になったわけです。また、このお三方が揃うというのも珍しいことですね。


アーロン:(しばらく言いよどんで)自分はこれまで何本も映画を撮ってきて、いろんな役柄に挑戦してきました。この作品は、2年前のカンヌ映画祭で脚本を見せてもらったんです。こんな役柄は初めてだったんですが、香港映画を応援したい、という気持ちで引き受けました。この作品が香港だけでなく、世界中の人々に見られて、香港映画を応援して下さるといいなと思っています。こんな風に世に出てとても嬉しいですし、皆さんにも応援していただきたいと思います。

ミリアム:この作品に参加できて、とても光栄に思っています。娯楽映画として見ていただくとちょっと違うと感じられるかも知れませんが、もっとも大切な人と人とのつながりを描いています。皆さんが見て下さることを願っていますし、私にとってもこの作品はいろんなことを学ぶいい機会になりました。

石坂:アーロンさんとミリアムさんは初共演だと思いますが、共演してみていかがでした?


アーロン:(どちらが先に発言するか、ミリアムと目線で譲り合って)私の方が先輩なので、先に話させていただきます(笑)。ミリアムとは初めての共演でしたが、とても頭がいい人だと思いました。ちょうど同時期に、彼女はテレビドラマの仕事もしていたんですね。そこではまったく違う役を演じていて、同時に本作の役もこなしていました。ウォン監督とも初めての仕事ですが、とても才能のある人で、どんなシーンでも的確に演出していました。ミリアムは賢くて、感情をうまくスイッチして演じていたし、いいチームワークがあってこそ、こういういい作品ができたのだと思います。


ミリアム:私も本作に参加できてとても嬉しく、監督にもアーロンにも感謝したいです。最初、アーロンのマネージャーである小美(シウメイ)さんからオファーが来たお陰で、この役にチャレンジすることができました。さっきお話に出たドラマの方は、とても幸せな妻の役で、弟もいたりと、本作の孤独な役柄とは正反対でした。本作の難しい役に関しては、準備をいろいろとしなければいけなかったし、挑戦した、という感じです。でもラッキーなことに、アーロンと出会えたし、いい監督とも出会えてとても嬉しかったです。こんな機会が与えられたことに感謝しています。ありがとう、監督、ありがとう、アーロン、と言いたいです。


石坂:監督にお聞きしたいのですが、監督デビュー作が大スターの共演作で、アレックス・マンなども出演しているすごい作品ですね。どういう思いでこの作品を撮ったのか、お聞きしたいです。


監督:スーパースターのお2人に、ほかにもスターがいろいろ出演しているわけですが、自分の現場に来てもらっている時は、皆さん俳優として来てもらっているわけです。自分が演出する作品の出演者として、この人たちには来てもらっている、と思って撮りました。

石坂:(監督の答えが短かったので)以上で大丈夫ですか?(監督、もちろん、という感じでうなずく)では、会場からのご質問に移りましょう。


Q1:ハンバーガーショップと香港映画は、王家衛(ウォン・カーウァイ)監督の『天使の涙』や陳可辛(ピーター・チャン)監督の『ラヴソング』など因縁があります。『天使の涙』では監督が無許可で撮ったので麥當労との間で問題になりましたが、今回はちゃんと許可を取られたのでしょうか?


監督:「麥」は単なるロケ地なので、ロケ地はどこでもよかったんです。えー、一応、無許可です(爆笑)。この件は、ナイショということで(笑)。

(会場にいた香港通の友人によると、ファストフード店のセットを土瓜湾に作り、ほとんどはそこで撮ったのだとか。ごく一部の外観だけ、ナイショで撮ったようです)


Q2:台湾から来ている者です。中国語でもいいですか?

監督:可以(いいですよ)。

Q2:(中国語で)作品も、そしてタイトルもすごく好きです。アーロンさんとミリアムさんにうかがいたいのですが、ファストフード店で、作中の人物のように、時間をつぶしたことはありますか?


アーロン:(中国語で)脚本を読んだ時に、自分でもネットでいろいろ調べました。それで、ファストフード店難民がいる、ということがわかったのですが、自分がこの役を演じるにあたって、いろんな情報を調べて取り入れました。その時日本のことも調べたのですが、日本ではファストフード店ではなくて、ネットカフェで夜を過ごす人が多いことがわかりました。ただ、この映画はファストフード店のことを伝えたいわけではなく、伝えたいのは人と人との間の愛なんですね。重要なのは、人の愛なんです。


ミリアム:(達者な中国語で)私にとっては、24時間開いているファストフード店は、子供時代の記憶につながっていきます。小さい時にお店に行って、フライドポテトを食べたいと思ったことなどを思い出します。今も自分の子供を連れて行きますしね。この映画でファストフード店難民のこともよくわかりましたが、つらいことがいっぱいあるのに、家族には言えない人たちなんです。私が望むのは、もっと家族とコミュニケーションすることです。愛を共有することが大事なんだと訴えたいですね。


石坂:残念ながら、時間になってしまいました。監督、最後に締めの言葉をお願いします。


監督:本作の英語タイトルには2つの意味があります。一つは「ここに住む」、もう一つは「生きていく」ということです。原題の「麥路人」の「路」には、「口」の字がたくさん入っています。ですので、「食べていく」ということにもつながると思って、このタイトルを付けたんです。


石坂:では、この辺で。あとはフォトセッションなのですが、今日はそのあと特別に、アーロンさんがロビーでサイン会をして下さるそうです(どよめき!)。時間がないので写真はNG、サインだけですが、上階のロビーにお並び下さい。監督、アーロンさん、ミリアムさん、どうもありがとうございました。


帰り際、会場ロビーには100人以上の列ができていました。なお、昨年のTIFFで上映されたアーロンと周潤發(チョウ・ユンファ)主演作『プロジェクト・グーテンベルク』は来年2月7日から公開されます。会場ではそのチラシも配られたりして、今回の上映は大いに盛り上がりました。



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