イスタンブール 旅のつづき

以前旅の終着点だったイスタンブールに戻ってきて、生活を開始。また旅のつづきを始めたい・・・

オルハン・パムク氏

2007-02-09 09:22:50 | 政治関連
遅ればせながら昨年ノーベル文学賞を受賞したオルハン・パムク氏の『Benim adım kırmız(わたしの名は紅)』を読み終えた。近所の友人から原書を借りたけれどもとても読めなかったので、読んだのは日本語版です(トルコ人にとっても彼のトルコ語は読み難いようです、念のため)。

オスマントルコ帝国時代の細密画家たちの芸術性の高さ、そしてイスラム教の中で生きる画家たちが盲目になるまでその腕を磨き、ついにはアラーの神が見る世界、つまり真の世界を表現し、しかしヨーロッパから来る新たな芸術の中で苦悩する細密画家たちを見事に描いている。その宗教的な背景、文化的・歴史的な側面もさることながら、単にミステリー(犯人は誰か)として捉えても十分に面白い。

日本語でも最初は取っ付き難いですが、興味のある人は是非手に取ってみては


さて、そのオルハン・パムク氏、最近ドイツの大学に講演に行く予定が急遽延期にしたことで、同氏に対してではなく、トルコ政府に対して批判の声が上がっている。というのも、先日も書いたが記者フラント・ディンク氏が殺害された事件の背景と同様に、オルハン・パムク氏も以前アルメニア人大量虐殺は事実行われたと発言したことから、トルコ政府より国家侮辱罪で訴えられていた。

フラント・ディンク氏を暗殺した犯人が捕まった際、「オルハン・パムク氏も気をつけろよ」というようなメッセージを残したことから身の危険を感じた同氏が今回の渡航延期を決定した訳だが、ようはアルメニア人大量虐殺を認めないトルコ政府を、そしてそれに対して反対を唱える者が殺害されている(身の危険を感じている)状況に対しての批判である。

最近は、この手のニュースが多い。

先日もフラント・ディンク氏を殺害した犯人がイスタンブールからサムソンに逃走後、同地で逮捕されて警察に連行されたが、その後警察で身元確認等が行われている時、この殺害をやったことを批判するどころか褒め称え、「君は英雄だ」と言った警官がトルコの国旗を掲げて一緒にカメラを取っていた等の報道(ようは一部の警官が殺害を容認するような態度を取った)がされるなど、連日絶えない。


また、フラント・ディンク氏の葬式では何万もの人がイスタンブールの街中を歩いたのだが、その際"Hepimiz Ermeni'yiz"(皆アルメニア人)というプラカードを持って歩いた。ようは、みんなアルメニア人、アルメニア人と一緒、という平和のメッセージを込めたのだろう。とはいえ、その後各地でサッカーの試合等の人が集まる場では、"Biz Ermeni değiliz. Türk'üz.Hepimiz Mustafa Kemal'iz"(おれらはアルメニア人ではなくトルコ人。そして皆アタトゥルク(の子)だ。)というプラカードを持って反発しているようだ。アタトゥルクはトルコ建国の父です。

この祖国、民族を巡る議論が多少沸き起こっている、今日この頃。

次は、『雪』を読もうと思います。

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