夜明けとともに、帰ってきたYの顔は、
沈みきっていた。
疲れきったような、どんよりとした怖い顔で、
チエの顔を見ようともしない。
「・・・おかえり。」
チエは、出来るだけ落ち着いた声で、Yに話しかけた。
「どこ行ってたん??」
「・・・色々。」
Yは、やっぱりチエの顔を見ないで答えた。
「疲れた?お風呂沸かそうか。
おなかすいてる?なんか食べる?」
「・・・いらん」
重く、暗い空気が流れる。
・・・・・・・・・・息苦しい・・・・・・・・・。
Yと、あれだけちゃんと話をしようと心に決めたのに、
あんなに、Yの帰りを待ち望んでいたのに、
本人を目の前にすると、やっぱり体がこわばって、なかなか口が開かない。
じっとしているのに耐え切れなくなり、台所に立とうとしたチエに、
「待て。座れ。」
と、Yが声をかけた。
チエは、緊張しながら、しずかにその場に座った。
Yは、チエに背中を向けたまま、じっと下を向いていた。
チエは、Yが別れ話を切り出そうとしているように見えて、
胸がドキドキした。
待って。チエに先に話をさせて。
Yより先に、話し出そうとするのだが、言葉がなかなか出てこない。
何から話せばいいんだ・・・
チエは、100人の観客の前に、リハーサルなしでいきなりステージに立たされたみたいに緊張して、体が動かなかった。
すると、先にYが口を開いた。
「お前、昔オトコに犯されたって言っとったよな。」
ドキン・・・・・・・!!
「・・・・・・・・・・うん。」
Yは、壁に向かったまま、チエに語りかけた。
「俺がゆうべお前にしたみたいに、後ろから犯られたんか?」
チエは、胸が締め付けられるような気持ちで、こたえた。
「・・・・・・・・・うん・・・。」
なぜ、胸が締め付けられるのか分からなかった。
Yに対して申し訳ない気持ちと、
「2人の大事なH」を、あんな行為とダブらせてしまったことに対する、自己嫌悪
のようなものを感じた。
沈黙が続く。
Yは、いったい何を、考えているのだろう・・・
Yは、チエの方を見ないまま、
「ごめんな」と言った。
その声は、消え入るような小さな声だった。
チエは、謝られたことに驚き、
「なんで・・・なんで謝るん!? 悪いのはチエやのに・・・」
と、泣きそうな声で言うと、Yはやっとチエのほうを振り向いた。
「いや。俺や。スマンかった。」
チエは、フラレると思っていた予想が外れたことと、謝ってきたYに動揺し、
言葉が見つからず、代わりに涙があふれてきた。
ヒック・・・ヒック・・・と泣き出したチエを、Yはおそるおそる抱きしめた。
「ごめんな。俺、お前がヒドイ目にあったって知っとったハズやのにな。
自分のことしか考えんと、思い出させるようなことしてしもた。
最初、なんで拒否られたんか分からんで、腹が立ったんやけどな。
1人になって考えて、あぁ、そーいうことか。って、
分かったとたんにめっちゃ後悔してん・・・」
Yは、静かにチエをなだめるように、そぅ話した。
「ごめんな。強引なことして。もぅ、二度とせんからな」
そして、その言葉の一つ一つに、底から救い上げられるように
チエの心は軽くなっていった。
泣きじゃくるチエの顔を、両手でそっと持ち上げ、Yはチエにキスをした。
良かった・・・・・良かった・・・・・・・。フラレなくて良かった。
チエは、心から安堵感を覚え、またそのままYの胸に顔をうずめて泣いた。
Yは、必死に考えてくれたんだ。
その気持ちが、本当に本当に嬉しかった。
この人は、決して大人じゃない。
でも、子供なりに、チエのことを分かろうと、必死に頑張ってくれてる。
チエも、自分の伝えるべきことを、ちゃんと伝えられずに、
Yの前では、嫌われないよう構えてるだけのコドモだった。
でもちゃんと、Yを信じて頑張ろう。
大人になろう。
心からそぅ思えた。
Yは、1人で車で飛び出した後、すぐに友達の家へ向かうつもりだったという。
チエに対する腹立たしい気持ちと、ワケの分からない感情を、吐き出せる場所に行こうとして、しばらく車を飛ばしたが、
ふと、自分にとって、今必要なのは、1人で考えることだという気がして、
そのまま琵琶湖に向かったそうだ。
真っ暗な琵琶湖の湖岸に車を停め、ずっと考えていたら、
チエを不安にさせているのも、怖がらせているのも、本音を言えなくしているのも、
自分のせいではないかと、思えてきたらしい。
「自分のことしか考えてなかった。」
その答えが出たとき、体は自然にこの部屋へ戻ってきたのだと、
布団の中で話してくれた。
チエは、微笑みながら、また涙を流した。
Yのほうが、先に一歩大人になったみたいやな。
そんな気がした。
Yは、今でも仕事につまづいたり、壁にぶち当たったり、悩んだりすると、
車を飛ばして琵琶湖に向かう。
Yにとって必要な場所だ。
チエは、あの晩、本当の意味でYと向き合っていく覚悟ができた。
でも、すべて乗り越えたわけではないことは、
なんとなく分かっていた。
これから先に待ち構えている、たくさんの試練。
それを予感しつつも、
「お互いが自分のことではなく、相手のことを一番に考えられれば、
きっと乗り越えていける。」
そんな予感は、確かにあった・・・。
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これからまた、波乱続きの予感やけど、チエちゃんの気持ちがわかってもらえて、ほんっまに嬉しかった!Y君、よう気付いてくれたよね。チエちゃんの嬉しかった気持ちが伝わってきて、ハルも胸が熱なった(泣)
はぁぁぁ~。。。よかった!
二人共たしかに未熟。でも未熟なりに互いのことを思いやり、自分のことを省みて…なんて言うか、相手を受け止めたいって思う気持ちがヒシヒシと伝わってきたよ。
…恋愛ってええなぁ(*^-^)。
いやいや
:*:・( ̄∀ ̄)・:*:パシッ!!
映画じゃないからo(^-^)o
良かった。で、今って事やね♪ 終
いやいや、まだやよ!!
雨降って地固まる・・・かな?
これからも珍客ネタ絡めつつ、よろしく!
うん。なんかね、言葉がうまく出てこないけど、Y君がいたから今の強さを持っているチエさんになれたんやなぁって理解できた。
ホンマよかったなぁって思いました。
俺も今ちょっと切ない気持ちになることがありますが乗り越えていかねば!!
一通り見てみました。
まだまだクソガキの自分ですが、大人って色々あるんだなぁとつくづく思いました。
(ガキですみません)
色々あるみたいやけど、がんばってください!
よく別の女性に走らないでよかったね。ここで失敗してそれっきりというのをよく聞くな。
運とはいえ、長く付き合える伴侶を手に入れたんや
旦那が冷静に考える事ができて、悪かった事はちゃんと謝る事のできる人だからこそ今の2人があるんやね
その一件で2人の間の溝が少し浅くなったんでしょう
まだまだ深そうな溝やけど頑張って埋めていくんやね
やっぱり相手の気持ちになって考えなあかんって事に改めて気付かされました
ありがとうハルちゃんっ!!
心配かけてごめんねぇ!
でもでも、チエの書きたかった気持ちが伝わって良かった!!
ハルちゃんと雅くんの乗り越えてきたものには、
まだまだかなわんけど、チエたちもコレをキッカケに
分かり合えるようになったんよ。
また読んでな♪