風のたより #156 千葉甫 2020-02-09 14:03:50 | 短歌 脳内に忽ち満ちてくる思いにてこずらされる深夜目覚めて 眼をやった幟のゆるりと向き変えてお好み焼きの文字を読ませる 焼き芋を売る声ゆっくり過ぎて行く今夜は風が強まると言う
風のたより #155 千葉甫 2020-02-07 13:59:04 | 短歌 そのためにそこまで行ってそれをすることを忘れてまたそこへ行く 聞き耳を立てたけれども伝言は入らずに電話の切れる二度目も 淀みなく受話器からくるお喋りを聞きつつ探る切るタイミング
風のたより #154 千葉甫 2020-02-05 13:57:49 | 短歌 四階の窓に干されて水平にシャツの靡いている風の午後 先ほどから意識の隅で聞いていた遠くから来る太鼓のリズム 聞き終えて咄嗟に礼の言葉出る録音された電話の声に
風のたより #153 千葉甫 2020-02-03 13:57:11 | 短歌 微睡の不意に破れてオキュウトの売り声を聞く湯船の中で 卓上のひとつの林檎に映る灯の光って更けてゆく今日の夜 音立てて啜れば舌を焼かないと知った日からは音立てて飲む
風のたより #152 千葉甫 2020-02-01 14:01:01 | 短歌 あらかじめ十粒と決めて食べている味噌ピーナッツ十粒目を噛む 浮遊する微粒の埃の陽の光りまともに受けて煌めきを持つ 十代の頃に愛奏した曲を吹きつつ寂しくなるハーモニカ