池上優游涵泳

「料理と散歩と仕事で海外」「ベトナム生活あらかると」改め、「池上優游涵泳」として日々を綴っています。

【じんけんカフェ】学びとはなにか 第2回

2019-11-11 17:42:21 | 地域情報

今日は、明け方は雨でしたが、

散歩に出かける頃には止んで、

日中は明るく晴れましたが、

夕方にはまた降り出したり、、、

落ち着きのない天気でした。

 

写真は、朝方、雨上がりの時間帯、洗足池のボートハウスの前の鉢植えに一輪だけ咲いていた白い花。

雨粒を弾く凛々しさが感じられます。

画像検索すると、キバナヒルガオと出るのですが、それっぽいような、、、それっぽくないような、、、

最近は、花の感じで迷ったら葉っぱを比較するのですが、それで言うと、キバナヒルガオであっているような、、、

でも、なんか早朝に咲くのが、ヒルガオかなあ、、、と思ったり。。。

 

さて、先週金曜日は、おおた区民大学【じんけんカフェ】学びとはなにかの第2回でした。

第1回では、学ぶことの意義を問い続けた教育研究者・大田堯(おおたたかし)さんの生き様を追ったドキュメンタリー映画「かすかな光へ」を鑑賞し、この映画を撮影した森康行(もりやすゆき)監督から、大田堯さんの教育哲学と、教育は感動を呼ぶなどのお話をお聞きしました。

第2回では、教育史研究家、大多和雅絵(著書:戦後夜間中学校の歴史)から、夜間中学校が今日までどのような人の学びの場になってきたのかを知り、夜間中学校の現状と課題から「学ぶとはなにか」について考えます。

実は、非常に分かり易い詳細なレジメが配布され、それに沿ってお話が進んだので、私のメモとしてブログ記事を起こす必要はなく、また、そのレジメ(パワポではなく、論文形式)を貼付すれば、十分に内容が理解できるものだったのですが、

まさかそのまま貼付する訳にもいきませんし、私の悪筆のメモが書き込まれてもいますので(恥)、

一応、私なりにポイントを掻い摘んで、講座の内容をご紹介したいと思います。

 

夜間中学校とは?

  • 夜間中学校のイメージってどんな感じですか?山田洋次監督の「学校」のイメージ。リアリティーが追求されている映画。西田敏行さん、竹下景子さんも夜間中学校に何度も足を運んでいる。「こんばんわ 」も、森監督が学校に入り込んで、信頼関係を構築した上で撮影したドキュメンタリー。
  • 学校教育法上は「夜間中学校」「夜間中学」という学校は存在せず、昼と夜の二部制の「夜間学級」が建前
  • 2016年12月の議員立法「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」によって、初めて法的な開設根拠を得た
  • 全国の公立夜間中学校は33校。公立以外で財団法人、NPO、ボランティア自主的に運営するものもある。違いは、前者は卒業資格・卒業証書がもらえるが、後者はもらえない。識字学級などと同様、社会教育の一環の位置づけ。
  • 卒業資格がなくても、文科省が年2回実施する認定試験に合格すれば高校進学できる。


戦後夜間中学校の歴史

(1)東京都における夜間中学校の開設の経緯

  • 1947年、新学制がスタートし、中学校が義務教育となったが、昼間の就学がかなわない学齢期における子供が多数存在した地域で、教員が自発的に夕方から授業(夕間学級)を行なったことが始まり
  • 共通する開設動機:家庭の経済的貧困(昼間の労働従事、家事手伝い)で不就学の学齢生徒を救済する。義務教育未修了で社会に出ていくことは、就職や職業上の資格取得に極めて不利益であるので救済する。
  • 地域の特性:小規模経営の多い地区、家内工業地区、近海漁業地区では、子供に教育を受けさせず、家の手伝い、家業の修行をさせがち。被差別地域。娯楽施設が多数存在する地域での非行防止など。
  • 東京都では1951年に足立区立第四中学校に夜間中学校が開設されたことが始まり。切っ掛けは、当時の校長がワークショップで福島県の学齢期の子供たちの出稼ぎの問題を知って。

(私の郷里の福島では、子供の出稼ぎがあったの?あったんでしょうね。。。)

  • 東京都教育委員会が、文部省の反対を押し切って、二部授業(夜間学級)の開設を認可。文部省は黙認。日を経るにつれて生徒数が急増。
  • 文部省は「義務教育の建前から言えば当然違反」と否定的で、現場に廃止の圧力をかけることも多かった。建前とは、現行学校教育法において認められていないということ。文部省としては、(夜間中学校ではなく)就学援助費など経済的支援を充実させること、家庭への修学奨励を図ることで、状況改善を企図していた。

(法律がそうだから、というのは役人としては仕方ないとしても、廃止の圧力をかけるなんて、役人のメンツの話ですよね。大田堯さんの「自分を変える力を助けるのが学習であり、その自ら変わる力と対話をして、周りから援助するのが教育」から外れ過ぎています。。。)

  • 学齢生徒とは、学校教育法第17条において定められた学齢期間内の年齢(年度に7歳に達する4月から、15歳に達する年度末まで)にある子供。
  • 学齢超過者とは、学校教育法において定められた学齢期間を過ぎた人々(義務教育を受けられなかった人のこと)

(2)東京都における夜間中学校の入学生徒の変遷

  • 1950年代からは、首都である東京に人が流入してくる時代状況で、家庭の経済的理由による就労、親の無理解で長期欠席、不就学状態になっていた学齢生徒が多数。学齢超過者もいたが、夜間中学校のあり方は、学齢生徒の就学の問題。同年代、大阪では、在日韓国人、地区の問題を抱えていた。 
  • 1960年代後半からは、学齢超過者の問題に様変わり。
  • 引揚・帰国者(1965年の日韓条約締結、1972年の日中国交回復)、在日韓国朝鮮人。
  • 経済の好転によって学齢生徒は昼の学校に通えるようになり、学齢期に行けなかった学齢超過者の教育機会となった。
  • 日本語教育の必要性。昼の中学校では、日本語学級を作った時代。
  • 長欠理由が「経済的理由」や「家庭的理由」よりも「精神的理由」(現在の不登校につながる)が上回る。
  • 形式卒業者の入学の問題:学齢期に長欠しても卒業させてしまった人は、実質的に義務教育修了の学力が備わっておらず、学習しようと中学校に入学しようと思っても、義務教育を修了してしまっているので、再入学できない。内々に聴講生としてサポート。生徒が、卒業証書をもらわないという選択肢もあり、現級留置として、数年間は留めおけた。学校長判断で、除籍して、夜間中学校に勧誘する措置もあった。
  • 夜間中学校の開設運動の拡がり。1960年代、社会教育でいいのでは、と校数が現象したが、1970年代、教育を受ける権利を自治体が作っていく動きが拡大した。二部授業は都道府県への届出だけでよかったので、文部省が潰せなかった。
  • 1980年代からは、不登校を経験した学齢超過者の増加
  • 2000年代以降は、ニューカマー(外国人労働者、多様な国籍の生徒)。第3回で鑑賞する「こんばんわ」は2003年の映画なので、その時代を描写。
 

夜間中学校の現在

  • 大多和さんが勤務している(?)横浜市立蒔田中学校夜間学級の様子の解説
  • 2019年は29名。一年生から入学して、3年間通学する。
  • 近年、ネパールから入学者が増えた。東京でもその傾向がある。(なぜネパール?)
  • 日本語を母国語とする生徒は数名。日本国籍でも、日本語教育が必要な状況。
  • 年齢は幅広いが、15から19歳の若年の生徒が多数。進路の問題。東京都では夜間中学校卒業生の半数が高校進学。夜間中学校が高校進学のステップになっている。
  • 指導体制も整備。昼と夜で、兼務ではなく、専任の副校長と教員。
  • 社会教育ではなく、中学教育なので、体育や美術の授業もあるし、修学旅行もある。
  • 日本語教育、中高年で中学校を卒業、形式卒業で学び直し、高校進学など、夜間中学校で修学する目的、学習ニーズも多様化している。
  • 日本語を母国語としない生徒に、日本語の指導、高校へつながる学力をどう保障するかが課題に。

 

現在の夜間中学校に関する関連法規

  • 「義務教育修了者が中学校夜間学級への再入学を希望した場合の対応に関する考え方について(通知)」:形式卒業者の受入、学びなおし
  • 「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」:就学機会の提供、夜間に限らず昼夜都合のいい方で。

 

お話の最後は、夜間中学校で40年にわたり教鞭をとった見城慶和氏のコメントを引用して、ただ数が増えていけばいいというものではなく、夜間中学校が今日まで培ってきた内実こそが広く理解されることが大切で、拡げるべきは”在り様”の認知であり、それが日本の教育全体に普遍化されることを願いたい

そして、先週ドキュメンタリー映画を鑑賞した大田堯さんが、第3回で鑑賞する「こんばんわ」を観て、寄稿した夜間中学校に関するコメントを紹介してお話を締め括られました。

  • 「こんばんわ 」の夜間中学校は鈍行列車。年齢、職業、国籍等すべて違った人が乗り合わせる。生まれた場所、家、環境も違い、その後の生き方、経験、キャリア全部違っている。その違っている人間の寄り合い場所としての鈍行列車。
  • 第二の特徴は各駅停車。いろんな立場の、いろんな時の、いろんな時点に学習を始められる。しかも、一人一人のペースによって勉強できる。
  • 第三のポイントは、人の輪の中で学ぶということ。点数競争のバラバラではなく、人の輪の中で学ぶ。学ぶことで人と結びつく、結びつくことで自分というものを知る。自分を知ることで自分の足で立つことができる、自信がついて明るくなる。

その後、若干のQ&Aがあり、印象に残るところでは、

  • 学齢期においては、教育を受けさせることが親の義務で在り、自治体、国が支援するが、学齢期を過ぎると忘れられる。
  • 外国籍の場合、母国でどこまでの教育を受けたか、しっかり確認しなければならない。
  • 引きこもりの子供を、家族が後押しして夜間中学校に入学させても、夜間中学校でも不登校になったりする。

 

私としては、ちょっと、夜学の高校や社会教育と混同しているところがありましたが、時代毎の社会問題を背景に、義務教育を終了できなかった人、現行の義務教育でも対応できない人の問題が夜間中学校の内実に映し出されていることがわかり、

また、先週の大田堯さんの教育哲学が、夜間中学校の”在り様”に見てとることもでき、

今週の第3回で鑑賞する「こんばんわ」も楽しみになりました。

ではでは



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