自販機

冬の日に

駅のホームの目立たぬところに
アイスの自動販売機がある

どうみてもいい場所に見えないし、
買っている人を見たこともない

今は冬だし
屋外の吹きっさらしなのでなおさらだろう

通過列車の待ち合わせ時間
ふっと見ると

一人のお兄さんがゴム手袋をはめて
そのアイスの自販機を拭いている

腰には白いタオルを下げ
側らには小さなポリバケツを置いている

これがまた丁寧にゴシゴシと・・・
見た目は汚れているように見えないのだが・・・

隅から隅まで拭いている
と言うより磨いている

仕事と言っても
大変だな～なんて思う

この自販機って
今日一日どのくらい売れてるのかな

なんて
少し心配になってきた

そうこうしている間にドアが閉まった
ゆっくりと動き出す電車

お兄さんと自販機はあっという間に
車窓から後ろへと流れ消えていった

アイスの自販機は白いし
汚れてたら買う気しないもんな

新年に向けてのお色直し
今年もあと二日か

それにしても寒そうなアイスの自販機も
今日はしゃんとして暖かそう

晴れ晴れとして
気持ちもよさそう

そう、いつでも買って下さいねという
自信に満ち溢れているよう

今は一日中、
北風の中、

春、そして夏へ向かって
彼はそこに立ち続ける

ずっと、
ずっと