碧泉流

Hekisen-ryu 中国山東省青島発祥の中国茶道の流派です

申年だから

2016-01-12 22:01:01 | 青島本部
今年の干支は申。
ということで、猿にまつわるお茶を飲んでみました。



安徽省黄山市黄山区の𤠣坑一体で作られる尖茶の系列の中で、
最も最高級とされるのが、こちらの「太平𤠣魁」。
こちらは、二叶抱芽の大きな長い茶葉が特徴的な緑茶です。
芳醇な甘い余韻は長く続き、蘭の香りのような香气は"猴韵"と言われます。
味わいだけでなく茶葉の形といい、類のない独特の風格あるお茶ですね。

久しぶりに淹れたのですが、今朝は今までで一番美味しく淹れられました!
蘭のお花の高貴な香りが口の中に広がります。
今朝は割と余裕があったので、ちゃんと湯も温度を下げ
入れている間に、太平𤠣魁の伝説となっている物語を簡単に娘たちに話していたのですが、
そのおかげか、ちょうど抽出時間とバッチリ合ったみたいです。


言い伝えは二つあるようです。

一つ目のお話。
昔むかし、ある山の民が茶の葉を摘んでいました。
すると、どこからともなく清らかな香りがします。
けれども辺りを見回しても見当たりません。
よくよく見てみると断崖絶壁の岩場に野生の茶樹が生えており、
その柔らかで瑞々しい葉から素晴らしい香りがするのでした。
山の民は諦めて帰ったものの、あの香りが忘れられません。
数匹の猿を訓練し、岩場で茶摘みをさせることにしました。

こうして積んだお茶を飲んだ人々は、味わいと香りの素晴らしさから
「お茶の魁(かしら)」だと言ったそうな。
この茶葉は、もともと𤠣子(猿)が摘み取ったお茶に由来するということから
後世の人々によって「𤠣魁」と名付けられた、ということです。

もう一つのお話。
昔むかし、黄山の近くに白い毛の猿の夫婦がおりました。
その子猿がある日一人で遊びに出かけるうちに、太平県までやってきてしまいました。
濃い霧に包まれ道に迷った子猿は、黄山へ帰ることが出来なくなってしまったのです。
親猿は子猿を探しに行きましたが、疲れはて心配のあまり病に倒れ
太平県の洞窟で息絶えてしまいました。

この洞窟には、野生の茶と薬草を採って暮らしを立てている老人がおりました。
心の優しい老人は、猿のために山の丘の上に墓を立て、
野生の茶樹と山の花樹を傍に植えてやりました。
老人が立ち去る時、
「あなたの心優しい行いに感謝します」
そう声が聞こえましたが、老人は人影も見当たらなかったことから
気にも留めずに立ち去りました。

その次の年の春のこと。
老人がまた野生の茶を摘みにやってくると、山の丘の上は
艶やかに輝く柔らかな新緑の茶樹でいっぱいになっていました。
その時、またあの声が聞こえて来ました。
「これは私からの贈り物です。よくよく茶樹を栽培すれば暮らしに困ることはないでしょう。」
老人はこの時ようやく、このたくさんの茶樹はあの猿が授けてくれたものだと気づいたのです。

こうして老人は、素晴らしいお茶の山を手に入れました。
老人は猿神様にちなんでこの山を「猴岗」、自分の暮らしていた洞窟を「猴坑」と呼び、
この山で採れる茶を「𤠣茶」と呼びました。
この茶が非常に優れた茶であったことから、
後々の人は魁の字を用いて「太平𤠣魁」と名付けたということです。


私は、心優しいおじいさんに幸運が舞い込むという二つ目のお話の方が好きです。

家では亜流で、公道杯で緑茶を淹れて茶壺に注いで飲んだりしています…。

月末に近づいた中級茶藝師のお試験では15種の干茶当てがあります。
太平𤠣魁くらい分かりやすい茶葉だと、いくら銘茶でも逆に出題されないのでしょうね。
皆さま、風邪に気をつけてお点前や試験勉強頑張ってくださいね。


貴泉



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