セスタバジカ Cesta Basica

「基礎的なバスケット」という意味のポルトガル語。
ブラジルでは「日常生活を送るための必需品のセット」を指します。

久々の大ネタ(でもないか)

2012年09月22日 | 日記
もし「最も好きなクラシック音楽のコンサートは?」を尋ねられたとしたら躊躇なく「Last Night of the Proms」を挙げます。

BBCプロムナードコンサート(通称「プロムス」)は毎年7月から9月にかけて8週間にもおよぶ大音楽祭ですが、その最終日に開催されます。今年は先週土曜日の8日でした。日本では同時生中継こそありませんが、後日NHK-BSプレミアムにて日本語字幕付きで放送されるのが常なので、録画して観ることになると思います。

収容人員7000強を誇るロイヤル・アルバート・ホールが一杯になるので、それだけでも大変な熱気ですが、毎年必ず演奏される曲目のうち声楽付きのものでは満員の聴衆もコーラスに加わり、壮麗壮大な合唱が繰り広げられます。また一部の曲では手拍子、口笛のほか、ラッパやクラッカー、風船といった「鳴り物」もOK。みんなお祭り騒ぎを楽しんでいます。(残念ながら日本にはこれほど盛り上がれるクラシックのイベントはありません。)

既にYoutubeに動画が上がっていますので、そのうちいくつかを埋め込んでみます。

エドワード・エルガー作曲「希望と栄光の国」(威風堂々第1番)


「イギリスの海の歌によるファンタジア」(プロムスの創始者、ヘンリー・ウッドによる編曲)
から「ルール・ブリタニア」(トーマス・アーン作曲)まで

このコンサートのチケット購入に際しては音楽祭に数多く足を運んだ人に優先権が与えられるそうです。(そうなるとロンドンに在住もしくは長期滞在するしかありませんから私は諦めています。)が、会場に入れない人に対して市内のハイドパークが解放され、巨大オーロラビジョンで生中継を観るだけでなく先述の合唱に参加することも可能。また英国の各地(ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)でも同様のイベントが開かれます。

ところで私は今を遡る23年前、このラストナイトコンサートをナマで聴いています。もちろん中でではありません。では、どういうことかといえば・・・・・・

さっき調べてみたところ、1989年の9月16日と判明しました。私が2年半ほど住むことになる村(ほぼ南回帰線上にありグリニッジ標準時と4時間の時差 (遅れ) がある場所)に来て迎えた最初の週末でした。電気がないと聞いていたので音楽ソフト(CD、カセットテープ)や再生装置は一切持って行きませんでした。大好きな音楽が聴けなくなるのも覚悟の上でした。が、メキシコでの語学研修(7週間)からずっとクラシックを耳にしていなかったため、とうとう寂しさが限界に達しました。(早い話、禁断症状が出たという訳です。)ふと「そうだ、あれがあった!」と荷物から携帯型の短波ラジオを引っ張り出し、それこそ祈るような思いでチューニングしていたところ、しばらくして流れてきたのがラストナイトコンサートのライブ中継だったという次第です。その時の感動は絶対に言い表せないですね。それ以外の音楽関係の感動を全部足したとしても全然追いつかないでしょう。


その日の映像もアップされています。(もちろん私も聴いているはずです。たしか夕方の5時頃でした。)さすがに画質はイマイチですが、サラ・ウォーカーの歌唱は掛け値なしに素晴らしい。(近年はこれほど迫力&貫禄のある歌手が登場しないので残念です。)

当時「プロムス」の「プ」の字も知らなかった私が何故あの日、あの時間帯に短波ラジオのことを思い出したのでしょうか? 手っ取り早く言うと「ものすごい偶然」ということです。それ以上の説明をする気にはなりませんし、今の私はそれを求めてもいません。(まして「奇跡」という言葉は使いたくありません。)しかし、あの偶然を思い返す度に「必要なものは必ず与えられる」ということについて考えずにはいられません。

余談
 上の動画の終わりの方でスピーチをした指揮者(サー・ジョン・プリッチャード)ですが、不治の病に冒されており(それゆえ急遽代理で出演することになったと思われます)、3ヶ月も経たない内に(またしても偶然ながらモーツァルトの命日と同じ12月5日に)亡くなってしまいました。ということで、この年のラストナイトは「特別なコンサート」の中でもとりわけ特別なものだったといえるでしょう。

余談2
 今年のジョゼフ・カレーヤはまともでしたが、「ルール・ブリタニア」での独唱者のコスプレ化が年々進んでいます。その先駆けというか先鞭を付けたのが1989年のサラ・ウォーカーでした。


(昨年のスーザン・バロック。正直やりすぎ。)

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3 コメント

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さらに余談 (だいひょう)
2012-09-22 11:15:15
サラ・ウォーカーが1985年に出演した時の映像もアップされています。この時は普通の衣装で登場し、最後に仕込んでおいた英国旗を拡げています。

http://www.youtube.com/watch?v=ZGR88fQ1Lms

繰り返しますが彼女の歌唱は本当に見事ですね。力強いし気品もある。(最近はきれいな音で収録するためかマイクを立てており、歌手が抑えてしまっているようなところがあります。非常に残念。)なお同曲他をスタジオ収録したCDも出ており、そちらのウォーカーも名唱を聞かせてはくれますが、エキストラ合唱も加わった熱気が入っていないのは何としても惜しい。

話は変わって、昨年のスーザン・バロックの衣装は英連邦を構成する国々の紋章をあしらったという話でした。また、2008年のブリン・ターフェル(バリトン)は出身地ウェールズの国旗をアレンジした衣装で登場。なお彼はその年もその前の1994年(プロムス100周年)もワンコーラスを母国語(ウェールズ語)で歌って喝采を浴びました。

http://farm4.static.flickr.com/3251/2857762794_4bc45b2b73.jpg

自国の旗を振る満員の聴衆もそうですが、こういった健全なる愛国心の発露というのは見ていても気持ちがいいものですね。
さっき気が付きましたが (だいひょう)
2012-09-23 05:51:23
本文中でリンクを張った2010年01月03日付日記の画像(サムネイル)に短波ラジオが写ってますね。(将棋盤の上の方です。)パラグアイで使っていたのはその少し前のモデル。何度か故障しましたが執念で直しました。ハンダごてを使って。(部品そのものが逝ってしまったのではなく接触不良や断線だったので、素人の自分でも何とかなりました。)

私は海外渡航する際には必ずラジオを持って行きます。現在は衛星放送やインターネットの時代といえども、それらがいつでもどこでも利用できるとは限りませんから。(そのお陰で命が助かった、ということだってあり得ると思います。決して大袈裟でなく。)
あったらいいな (だいひょう)
2012-09-24 05:13:48
今回は「残念」を何度も使いましたが、もう一つ。それは「希望と栄光の国」や「ルール・ブリタニア」のような、いわば「第二の国歌」(注)に相当する曲が我が国には存在しないことです。戦前は「海ゆかば」がそうだったらしいですが、いくら何でもこれを復活させるというのはちょっと勘弁してほしい。

(注:やはり私が大好きなシベリウスの「フィンランディア」も同様の地位を得ていますね。中間部を合唱付きバージョンで聴くと泣けてきます。賛美歌に採用されているのも納得の美しいメロディです。ちなみに米国ではスーザのマーチ「星条旗よ永遠なれ」がそう呼ばれることもあるそうです。蛇足ながら国歌はフランシス・スコット・キーによる「星条旗」、ちょっと紛らわしい。)

独立20周年の時に滞在したナミビアではラップ調にアレンジされた国歌が連日テレビで流れていましたが、日本で同じことをやったら間違いなく非難(下手したら脅迫)されるでしょうね。で、調べてみたところ実際にそういうことがあったみたいです(http://news.livedoor.com/article/detail/6860144/)。どうも「触らぬ神に祟りなし」みたいな雰囲気があります。だから、もうちょっと気楽に(肩肘張らず)みんなで(誰もがわだかまりを持つことなく)歌える曲があればいいとプロムスを観る度に思います。既に提唱されている「ふるさと」(by 日野原重明)でも「上を向いて歩こう」(by村上春樹)でも、あるいは違う曲でも私は全然構いません。音楽のクオリティが十分であれば。

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