かりんとう日記

禁煙支援専門医の私的生活

フライング

2018年07月27日 | サポーターの心得

年4回発行している当院の広報誌。

昨年から、垢抜けた感じにリニューアルされた。

 

公的病院でも、法に触れない可能な範囲で広報をしていかないと、患者獲得競争に勝てず、存続が危ぶまれる時代になった。

というわけで、病院側も広報に力を入れるようになり、広告業界に興味を持っているという総務課のNさんが担当窓口になり、病院専属のカメラマン氏の力量も発揮されて、なかなかいい感じの広報誌になってきたと思う。

 

来月号には、禁煙外来の紹介ページが掲載されることになった。

禁煙外来は18年前からやっているが、やっと病院公認になった気分である。

これまでの努力が報われた気がして、感慨深い。

先週末、休み返上してがんばって原稿を書き、提出した。

 

ところが、2日後、Nさんからダメ出しされた。

 

「先生の禁煙治療への熱意はとてもよくわかるんですが、マーカーをつけた文章は、病院の意向ととられると困りますので・・・」

 

見ると、「喫煙者の多くは、ほんとうはやめたいと思っている・・・」といった文章や、「タバコは薬物・・・」という言葉の部分に緑色のマーカーで線が引かれていた。

 

喫煙者の6-7割は、本数を減らしたりやめたいと思っているというデータは多くの研究で示されている。

ならば、引用文献を示せばよいのか?

 

いや、どうも、そういった問題ではないようである。

 

編集長であるNさんに、事の真意を聞いた。

「(小声で)いまだにやめない輩がうちにもいますよね。自分はやめたいとは思っていないとかって言われても困りますし。先生の禁煙への熱い思いはもう少し抑えていただいて、治療内容の紹介を前面に出すようにしてください」

 

そういうことか。

 

恥ずかしながら、当院のトップは喫煙者なのである。

直接クレームを言われてはいないのであろうが、組織のトップへの気遣いが働いた結果のダメ出しなのであった。

忖度した広報部長F医師からの指示であるのかもしれない。

 

公認されたなどと、喜ぶのはまだ早かった。

私はやっとスタートする選手として名前を呼ばれただけであり、しかも、フライングしそうなところを、「まあまあ落ち着いて、どうどうどう」とマネージャーから背中を撫でさすられたのであった。

 

 

 

 

 

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