テレビアニメ「海のトリトン」のサウンドトラック盤。1978年。
海底火山が爆発して、16ビートのイントロがスタート。海のかなたから、白いイルカに乗った緑色の髪の少年がやって来る。
番組の冒頭が、とにかくかっこよかった。
このアルバムは、テレビアニメのストーリーの要約版。主題歌のほかには、歌は「ピピのうた」しか入っていない。ラジオドラマのような構成です。
写真はアルバムのダブルジャケットを開いた状態です。アニメの写真のほか、ストーリー解説や、プロデューサーの西崎義展さん(「宇宙戦艦ヤマト」もやった人ですね)のあいさつ文もある。こんなものが身近にあったので、当時の子どもは文章を読むことにまったく抵抗がなく、ごく自然に慣れ親しんでいけたのかも知れませんね。
もともとは手塚治虫原作のマンガだけれど、アニメと原作とはかなりストーリーが違っているらしいです。
アニメのストーリー。主人公の少年トリトンは、かつてアトランティス大陸に住んでいたトリトン族の末裔。暴力で海を支配するポセイドン族の追っ手から逃れて日本の漁村で育つが、海の平和を取り戻すこととトリトン族の謎を解くために、ポセイドン族に戦いを挑み七つの海へ旅立つ。
ロールプレイング形式で戦いが進み、やっとポセイドンの神殿へ。しかし、最終回にどんでん返しが待っている。実は、かつてトリトン族はポセイドン族を奴隷として支配していて、長く虐げられてきたのはポセイドン族の方だった。「善」と思っていたトリトン族が本来的な「悪」であり、「悪」と思っていたポセイドン族は被害者だった。
そうとは知らず「正義は自分にある」と思いこんで戦い続け、ついにはかわいそうなポセイドン族を滅ぼしてしまったトリトン。
「正義の味方」と信じて疑わずに主人公を応援してきたおれも、相当にショックを受けた記憶がありますね。
ただ、「戦時中は、日本がやることはなんでも正しいって教えられてきたけど、戦争が終わってみると、ずっと国にごまかされてきたことが分かった。正しいといわれていることも疑ってみなくちゃいけない」と言っていた母の言葉を初めて理解できたときだったと思います。
他国を「悪の枢軸」とかおとしめて湾岸戦争を始めてしまった息子ブッシュあたりに見せていれば、今の世界の対立構図はなかったかも知れません。
それに、物語の始まりの場面。繁栄を極めたアトランティスが大地震で崩壊し津波が押し寄せて海に沈む。いまの時代に、もう一度見ておきたいシーンだと思います。
ポセイドンを滅ぼしたあと、トリトンは同じくトリトン族の生き残りであるピピを伴って、海のかなたへ旅立っていく。主題歌の口笛バージョンが流れる中で。
作りも相当に格好良かったし、ストーリーもすごかった。レコードの中では、このアルバムが一番の宝物かな。今晩も聴こうとおもっとります。
あと、このアルバムのちょっとした楽しみ。
トリトンを育ててくれた日本の漁村の「一平じいさん」の声は、間違いなく「巨人の星」の判宙太の声の人。
トリトンが戦いに旅立つときの「トリトーン、トリトーン…」の叫び声が、「ほしー、ほしよー…」の叫び声に、ものすごくオーバーラップして、しみじみと味わい深いんです。
判宙太の声って、すごくオーラをもっている声だと思います。
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