アコギおやじのあこぎな日々

初老の域に達したアコギおやじ。
日々のアコースティックな雑観

虫の凄さが分かる人びと

2009-07-20 | Weblog
 なぜ、人はテレビに出ている人間を有り難がるのだろう?


 客観的にみて特段優れた人物でもない。しかし、テレビに出ていれば崇拝したくなるらしい。








 彼らは「カブトムシ」でしかないのに。

 ゾウムシやゲンゴロウや、もっと凄いのはいくらでもいるのに。







 小さな頃から、友達の反応が不思議だった。

 初めて歌手を生で見たクイーンのコンサート。


 武道館のアリーナ。熱狂する周囲の反応が不思議だった。


 「ライブ、どうひいきしても下手っぴじゃん」。


 タイツ履いてる変な人も、奇をてらってるだけ。


 ミスター「陳腐」。


 歌も踊りも「体操のお兄さん」のほうがずっと底が深いってば。みんな!


 クイーンの売り出し方は、日本のアイドル事務所顔負けの強引さだった。


 ベイシティローラーズの売り方も凄かったが、彼らは結局、失敗した。



 私には、歌手や俳優を無条件に尊敬する類の感覚は、欠落していた。




 多くの人が、テレビに映った人をただあがめ、出会えば無条件にうれしがっている。

 そうして、いずれは自分もテレビに映ることを目指す。

 なぜ?


 アイドルという「偶像」もしくは「印象」を自分の中でつくりだし、自分の中で育て、やがてそれに支配されていく。





 経験的に知っている。


 アイドル好きを蔑んでいるような陳腐なロックスター好きも、構造は一緒。偶像崇拝に自分を安寧させ、その後は引きこもる。


 ただ、同一感を求めて生きる。






 子供の「カブトムシ」好きもそれに近いと思う。




 植えつけられた印象をただ追い求める。





 ヒトが一番鋭敏な感性を持つとき。


 生まれたとき。


 何にも支配されないし、何をも嫌悪しない。





 先日、ムシテックワールドに息子と昆虫採集に出かけた。

 指導してくれたのは、脳科学者であり、昆虫博士の養老孟司さん。

 養老さんの言葉に、はっとした。





 「順応したい。この環境の中でなんとか生きていきたい。人間なんかが考える可能性は、昆虫たちは、ずっと前からすでに試しているんです」



 昆虫たちは非常に多様な姿をしている。それは、多様な能力をもっているという表れだ。



 昆虫たちは、生きていくためになんと知恵を絞っていることか。

 昆虫に対する尊敬を、養老先生は分かりやすく話してくれた。


 5歳の息子には難しい話だったと思う。

 しかし、将来、養老先生と自分が一緒の写真を見て、夏の子供のころを思い出して、そうして、養老さんの本を手にしてほしい。



 すごい虫好きの先生と一緒に虫捕りをした夏の一日を。




 養老さんのたばこにまつわる話も、考える力をつけてから、大きくなってから接してほしいな。


 いろいろと考えられるようになって、かつ、世評に毒されない「自分」と「学問」をもってから。




 ともかく、養老先生はていねいに子供に接してくれた。


 「ようろうせんせい、すきだよ」


 昆虫採集の方法を説明している途中の養老先生に、息子がいきなりハグした。



 離そうとしたが、離れない。


 「うわぁ」と養老先生。





 今回の昆虫採集に際して、確信をもった。


 昆虫の最大の敵は「人間の子供」。


 養老先生の最大の敵は、きっと「人間の大人」。




 ともかく、息子は虫が好きだ。


 翌朝、息子のために4時起きして、虫探しをする私であった。



 しっかし、自分を医者と自覚していない医者って、同じようなこと言うな。


 かつて、友達に天才がいた。

 いやいやながら進んだ大学は、医学部。

 酒を飲んでは、虫の凄さを熱っぽく話していた。
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