息子の頬を初めて叩いた。
息子のDS(ゲーム機)を叩き壊した。
◇
12月29日朝。息子は、妻と「30分」という約束でDSを始めたが、いつまでたってもやめない。
母親不在のところで取り上げた。つかみかかってきて私の顔を殴った。「お父さんの顔を殴ったな。お父さんも殴るぞ」と恫喝してから殴った。取り上げたDSを地面に叩きつけた。
私の顔を殴ったというのは、正確には、振り回した拳が私の顔に当たったというところだろう。
子どもに手を上げてしまった親の心は、こんなにも痛むものなのか。
◇
「約束した時間にやめられないときは壊して捨てる」。DS購入当初から言い続けてきた。
ただ、高価なおもちゃだから、私自身、壊すことは想定していないし、息子もそれはお見通しだった。
実行されるはずのない、軽くて薄い脅し文句。続けていれば、なめられるのも当然だ。
「お前の将来のためにならないならゲームは壊したほうがいい」などと言ったが、そんな理性的な行動ではなかった。やめるように注意しても聞き流している息子の態度に、一瞬、血が沸騰した、というのが実際のところ。
逆上した上での暴力だった。
◇
息子は家を飛び出し、小学校や知人宅の周囲を歩いたり、道路の縁石に座り込んだりしていた。
スーパーのトイレで小用は足したが、次第に寒くなってきたし、小雨もぱらつきだした。おなかもすいた。
私が見張り続けていたのは承知していたようだが、お互い声を掛けられない時間が過ぎた。3時間過ぎ、「何か食べに行くか?」と私から声を掛けた。
手をつないで家に向かった。
家路の大半は、原発事故前は休日のたびに息子と遊んでいた公園の側道。
「あの木ででっかいカミキリを見つけたよね」「あそこから蹴ったボールが池に落ちちゃったよね」
息子から話し掛けてくれた。
夜は、いつもと同じく二人でふろに入ることができた。
原発事故前の思い出が、息子の心をほぐしてくれた。
◇
現在、30日午前6時。これから息子と二人でスキーに行く。
移動の車の中ではいつもDSをやっていたから、息子は当初は戸惑うだろう。
しかし、会話の時間が増えたということだ。
一番大切なのはお前なのだという気持ちを、なんとか伝えたい。
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