アコギおやじのあこぎな日々

初老の域に達したアコギおやじ。
日々のアコースティックな雑観

息子に手を上げた日

2012-12-30 | Weblog


 息子の頬を初めて叩いた。


 息子のDS(ゲーム機)を叩き壊した。



           ◇


 12月29日朝。息子は、妻と「30分」という約束でDSを始めたが、いつまでたってもやめない。


 母親不在のところで取り上げた。つかみかかってきて私の顔を殴った。「お父さんの顔を殴ったな。お父さんも殴るぞ」と恫喝してから殴った。取り上げたDSを地面に叩きつけた。


 私の顔を殴ったというのは、正確には、振り回した拳が私の顔に当たったというところだろう。


 子どもに手を上げてしまった親の心は、こんなにも痛むものなのか。


           ◇


 「約束した時間にやめられないときは壊して捨てる」。DS購入当初から言い続けてきた。


 ただ、高価なおもちゃだから、私自身、壊すことは想定していないし、息子もそれはお見通しだった。


 実行されるはずのない、軽くて薄い脅し文句。続けていれば、なめられるのも当然だ。


 「お前の将来のためにならないならゲームは壊したほうがいい」などと言ったが、そんな理性的な行動ではなかった。やめるように注意しても聞き流している息子の態度に、一瞬、血が沸騰した、というのが実際のところ。


 逆上した上での暴力だった。


           ◇


 息子は家を飛び出し、小学校や知人宅の周囲を歩いたり、道路の縁石に座り込んだりしていた。


 スーパーのトイレで小用は足したが、次第に寒くなってきたし、小雨もぱらつきだした。おなかもすいた。


 私が見張り続けていたのは承知していたようだが、お互い声を掛けられない時間が過ぎた。3時間過ぎ、「何か食べに行くか?」と私から声を掛けた。


 手をつないで家に向かった。


 家路の大半は、原発事故前は休日のたびに息子と遊んでいた公園の側道。


 「あの木ででっかいカミキリを見つけたよね」「あそこから蹴ったボールが池に落ちちゃったよね」


 息子から話し掛けてくれた。


 夜は、いつもと同じく二人でふろに入ることができた。


 原発事故前の思い出が、息子の心をほぐしてくれた。


           ◇


 現在、30日午前6時。これから息子と二人でスキーに行く。

 移動の車の中ではいつもDSをやっていたから、息子は当初は戸惑うだろう。

 しかし、会話の時間が増えたということだ。


 一番大切なのはお前なのだという気持ちを、なんとか伝えたい。
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