きのう、パピルスを買ってきた。
「どう書けばいいかヤナギが教えてくれる」ってharuちゃんが言ってた。
想像から骨を組み立てて文を書くことをしない私には、ニュアンスはわかるけど
同意できるほどの深い理解はできずにいた。
でも回を重ねて読み進めるごとに少年は成長し、次第にはっきりとした輪郭を持っていった。
最初は細い線をいくつも重ねたスケッチのようなカレだった。
体つきのアウトラインがデッサンされ、顔ははっきりしない。
ただ、目があるはずの場所にふたつの黒く滲んだ穴と小さくも鋭い光が光っているだけのペラペラな紙の人形のようだった。
その線がもっと繊細に書き込まれて薄く色づいていくと
カレの髪の色、唇、腰から太ももへのライン、アキレス腱とかかとの角度も
カレについての見た目の印象が詳細に組み立てられていった。
それでもカレはまだペラペラの紙の人形だった。
コミックに出てくる主人公。
同世代で同じ経験をした者ならいざ知らず、自己投影をするにはまだかなりの距離があった。
それが・・・今回で変化した。
カレの“これまで”と“今”が繋がったことで、カレは現実のアタシに近づいてきた。
アタシは自分の手足が有り得ない方向に向いたこともなければ、肉親と引き裂かれたこともない。
ただ心の中ではずっとそんなことを繰り返して生きてきた。
今では回数は少なくなったものの、あまり成長も出来ずに痛みを受け入れることだけはうまくなったようだ。
束の間、空を見上げるカレはその目に何を映しているのだろう・・・
そう思ったらカレの匂いを感じた。
イイ匂いではないけど、体温を感じる匂い。
脳の芯に残る懐かしい匂い。
ようやくアタシの『トキノオ』のイメージが温もりを持った。
これからカレはどんな匂いを放ってゆくのだろう。
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