そらとPornograffittiと♪

多趣味だけど一番続いている趣味はポルノグラフィティ☆

因島日記 Last

2017年11月08日 08時13分27秒 | 因島日記2006
夕方早めにホテルに戻り、美味しい夕食でお腹も目も大満足
上階の広いお風呂で思い切り手足を伸ばして大きく溜息をつきながら脱力。。。
久しぶりにノンビリとした入浴時間
窓の外は海の黒い部分と対照的に町の明かりのキラキラが綺麗に瞬く

ふと、家族を思い出す。

ちゃんと食べたかな。調子悪くなってないかな。
悲しいけど何をしててもお母さんに戻る時間が必ずやってくる。

この島で話し込んでいくうちに言われた言葉

「旦那さんに感謝しないとね」

そうだねとわかったように返していたけど、心の底では逆なことを考えていた。
そうやって子育てはするものよ。主婦とは、母とは、妻とは・・・・うんざり。
下の子供が4歳になって上の子から数えて10年間母親業をしてきた。
10年ぶりに一人になって、自分のための旅に出た。
家族も大切だし、子供も可愛いし出来るだけ手を尽くしているし、それは嫌ではないけれど
自分の真ん中がスカスカになってしまっていたんだ。

自分の感情を○○業というフィルターに包んでから発信することが当たり前になっていくうちに
私自身の感情が色や弾力をなくしてカチカチになって粉々になってスカスカになってしまったんだ。

まだもうしばらく母親業を続けなければならないけど、
このタイミングで自分を取り戻して体の隅々まで深呼吸をしたい。 
そう願ってこの島を拠り所に頼ってきたのだった。



アタシが思う幸せは良い妻でもいい母でもないところが私の家族の不幸なんだろうね。

きっとアタシは女としてはポンコツなんだと思えば割り切りも出来るし

“母ちゃん元気で留守がいい”はそのうち我が家の合言葉になるんだろうね。


答えの出ない問いかけを頭の中でしているうちに体は十分に温まった。
早く寝よう。明日は最後の日。フルーツのおばちゃんに会わないと因島をコンプリート出来ない。


翌朝目を覚ますと外がうっすら明るい。時計を見ると午前5時49分

窓に近づきカーテンを開けると日の出はまだだった。

輝きと共にゆっくりと山や海が色を取り戻す様をただじっと見ている。
弓削島のさらに奥の山がポチっと赤くなって次第に光る部分が大きくなり光も強くなってきた。

真っ赤な朝日だった。

サバンナの夕陽のような色。グイッグイッと音がしてきそうな力強さだ。
窓を開け、手をかざす。
空気は冷たいが手のひらは日に照らされほんのりと温かい。

生きている そう感じられる力強い朝日で嬉しい。この瞬間に出会えた事に感謝した。

感謝

この島についてからずっと感謝している。

ゆかりの地の人はもちろんだが、
バスの方向を聞いたおばさん。
土生小までの道を教えてくれたおじさん。
バスの時刻表が古いとバス案内所まで取りに行ってくれたおばさん。
はっさく屋のはっさく大福を取り置いてくれてた売店のおばさん。
道ですれ違うとき会釈をしてくれたたくさんの島の人。

一人なのに、全然寂しくなかったのはいつも島の人たちがそばにいてくれたからだったんだ。
今、心から感謝しているよ。ありがとう。

振り返ると部屋中がオレンジの染まっていた。
真っ直ぐに入る朝日をただ言葉もなく見つめていた。
お日様と共に寝て起きる。
単純なことだけど人間の生き方としては正解なんだろう。
この朝日を思い出したら、つまづいた時も前向きになれそうだ。

自然と島の人からたくさんのパワーを貰った。
ここを出るときはきっと寂しくないだろう。
家の窓から太陽をみたらこの朝日を思い出せる。
いつでもここに帰ってこれる。
そう思ったら何だか嬉しくなってきて着替えをしロッジの近くにある因島公園の展望台に向かった。

キラキラと光る瀬戸内の海。
新たな息吹きを感じさせる若緑の山肌。
潮の匂いがする風。

公園の桜の木もつぼみの桃色を強くしていた。
もうすぐ緑の島はピンクになる。

おじさんの言葉を思い出した。
「あの子らはこんなに小さい島から夢を叶えるために飛び出して必死に頑張って、
努力して、ファンのみんなに支えてもらっとる。
どこで生まれたからじゃない、信念を持てば願いは叶うんよ」
ズキっと刺さった言葉だった。


最後の日、ロッジを出て土生港からバスに乗り水軍城方面に向かう。

島の北は時間的にもこれ以上いけそうにない。
昭仁が少年時代を過ごした町。
母校の因北小を眺め子供達の元気な声を聞く。この小学校も合併されると聞いた。

近くの喫茶店にいってみたが休みだったのでまたバスで移動することにした。
港に戻るバス早くくるがあと20分ある。
ここにきて待つのは慣れた。今日帰るけど、次があるさ。
そんな思いだった。

天気も良かったので、新藤フルーツで葡萄とみかんを買った。
おばちゃんは忙しそうに見舞いかごを作っていた。
買い物だけ済ませ、桟橋に腰かけて甘酸っぱい果物をこの景色と一緒に頂いた。
海からの風が爽やかに吹く。
いつの間にか因島がだ~い好きになってた。
ポルノを知りたい旅だったがもういいや。ポルノはまたそのうち、追々でいい。

彼らも成長し都会の人として生活してるし、私自身前以上にポルノが好きと言える。
でもポルノよりも因島が好きになってた。
彼らの故郷だけど勝手に私の故郷にしてしまおう。
海を見ながらぼーっと考え事をしていて時間を忘れていた。

尾道へ戻らなきゃ。
うん、やっぱり寂しくない。
又来るからね~とその辺の人に手を振りたいぐらい。
来た時と同じ道を正反対の気持ちで眺めて行った。

      

因島日記2006 2-2

2017年11月07日 12時51分33秒 | 因島日記2006

土生に戻ってハルちゃんのお馴染みのお好み焼き屋さんへ
テーブル席はほぼ満席で、カウンターに案内された。
目の前でおばちゃんが焼いてくれている。
広島風を頼んで鉄板の端っこを借り冷たくなった手を暖めた。
テレビではWBCが流れてる。おばちゃんも真剣に見ている。

「一人?どっから?」
「はぁ~遠いとこからポルノで来よったん」
これはセットになっている挨拶。

話かけようとおばちゃんを見るととコテを鉄板に立てて真剣に野球を見ている。
あまりに真剣なので私も振り返って見る。
すると突然後ろから話しかけてきた。

「新藤くん、この前にも来たんよ。マネージャーと2人で。
ノッソリと『おばちゃん、こんちは~』って、毛糸の帽子を深くかぶってジーパンとこんなん着て」

そのジェスチャーはいただけない格好と言いたそうだった
「アタシもあのジーパンはグッと上げたいのよ」

私が言うとおばちゃんは嬉しそうに目を細めた。

焼いくれている間に因島ライブの時の話を聞いた。

ファンがたくさん島に来たので結局実家に寄ることもできず、島外の宿に泊まったそうだ。

「うん、たいへんだったみたいね。こんな時くらい家族と過ごさせてあげたかったね。胸張って帰ってきたんだしさ」

おばちゃんは大きくうなずいてお好み焼きをひっくり返した。
どうぞ と私の前に差し出され小さなコテで口に運ぶ。

素朴で優しい味だった。でも本当に美味しいお好み焼き
ハルちゃんは子供の頃、このお好み焼きを食べて育ったんだね。
同じ味を体験出来て嬉しいのと同時に羨ましいわ。

「おばちゃん美味しい」と言ったら、嬉しいわぁと満面の笑顔で答えてくれた。子供みたいにピュアな笑顔だった。
おでんの鍋がカウンターの端っこにあって、牛筋食べたいといったら
「やだ~朝たくさん入れとったのにさっきの人全部食べてしまった?」と
もう一人のおばちゃんと一生懸命に鍋をかき回してくれて、辛うじて1本見つけてくれた。
なんかホントに居心地いい。

疲れと冷えでガチガチだった体に体温が戻り緩んできて、すっかりお家モードになってしまったが、
もうすぐ昼の営業が終わる時間。
お礼を言って店を出た。

もう所縁の場所も思いつかないし、昨日のお礼と報告をしたかったから
商店街を抜けて昨日も行ったペーパームーンに向かった。

日曜の昼下がりの店内は満席で賑やかだった。予約のお客様もいるようだ。
私の顔を見るとママさんが嬉しそうに出迎えてくれて大きなテーブル席に案内された。
「昨日どうだったん?」
「間に合いましたよ、おじさんともお話しできましたし。
とても助かりました、ありがとうございます」
私とママの会話を不思議そうにみる同じテーブルに座る若い女性たち
ママが「神奈川から来てくれたんよ~、この人たちもポルノファンでもう何度も来てくれてるんよ」
好きなものが同じと言うだけでものすごく安心感がありすっかり話し込んでしまった。
四国から来ている彼女たちは2時間ほどの日帰り旅行で来れる。
「いいなぁ~」と物欲しそうに言ったら関東が羨ましいと言われてしまった。
まぁ、はい、そうですね。

因島に来て二日目。
所縁の場所を巡っているとはいえ、本当にに皆さん歓迎してくださるのでつい図々しくなってしまいがちだけど
いつでも何でも歓迎してくれるわけではない。
営業時間外はご迷惑だし、大声で騒ぐのももちろん近所迷惑。
いたずら書きもNGだし、記念品を持ってくるのもダメ。

ポルノを応援してくれてるならと本当にいっぱいサービスしてくれるけど
お互い楽しかったと思える時間で終わりにする勇気も必要ね。

昨日のようにママさんは果物を配ったり、お話に加わったりと笑顔で大サービスしてくれるけど
パラパラと人が帰り始めたのを頃合いに私もホテルに引き上げることにした。


昨日行けなかったフルーツ屋さんでイチゴでも買ってホテルで食べようかなぁ~なんて
商店街を抜けて因島病院が見えてきたところで
バイクに乗ったおばちゃんが目の前を通り過ぎていった

ではまた、明日。

因島2006 2-1

2017年11月06日 18時12分19秒 | 因島日記2006
緊張と疲れで一度も目を覚まさずに朝を迎え
いつものアラームに起こされた。足が筋肉痛になってる

よく歩いたなぁ~と我ながら感心。バスが1時間に2本しかないので先を急ぐには歩くしかない。
窓を開けると雲が厚く時折雨雲が流れている。
なんとかなるさとホテルを出て因島公園を抜け、土生へ向かい自転車を借りた。

レンタカーも考えたけど自転車の方がフットワークがいいし
風も感じられてより楽しそうだったのでそうしてみた。
間違いだった

とりあえず・・・折古浜へ向かってペダルを漕ぎ出す
今降りてきたロッジとおなじ方向のバス通りを走ってゆく。

5分後、肩で息をしながら自転車を手で押していた。
自転車のチョイスをものすごく後悔した。
今どの辺だろうと見まわすとロッジに向かう横道がようやく見えた。

今いる下道よりも因島ホテルまでの道の傾斜に気をとられ下道のこの坂をすっかり忘れていた。
ロッジのすぐ下に以前タマの笑い話にあったHOTELがある。
『チャリンコ2ケツで行ったって~?絶対原チャだよ。
着いたらもう果ててるよこれじゃ!」
ゼーゼー言いながら一瞬本気で自転車を捨てていこうと考えたが、トンネルの先に道が見えないから下ってるのだろう。
いよいよ自転車で風を切る時が来たと喜び、トンネル内で自転車に乗り漕ぎ出した。

登りと同じ角度の下りだった
ジェットコースターのてっぺんから降りる気分だ。
道の端には小石や砂利があるので慎重に減速しながら降りた。そしてまたもや後悔。
同じ角度の登り坂だった
半端な修行僧の気分で進むと視界が開けた。
海岸線が近い。民家の間を抜け突き当たりになった。

防波堤の端に自転車を止めて階段をあがって浜に出た。
それほど奥行きのない砂浜を歩いていて波がない事に気付く。
チャポン、チャポンと頼りなげな音しか聞こえない。
うん。この海なら子供でもお友達になれるわね~ハルちゃん。
ほんの数メートル先で色が変わっているのがわかる。かつて海水浴場だった頃はあの辺りに飛び込み台があったのだろうか?
奥行きが10メートルもない浜の後ろはすぐ民家で大きな岩場も身を隠せそうな場所もない。
たしかにこの海じゃ、愛は語れんね~丸見えです

海を見ていてこの色をどう表現するか悩んだ。でもどこかで見たことある色。

ノドが渇いたのでバックから紅茶を出してわかった。
ラムネのビンの色だ 空じゃなくてフタをしたまま中身を揺らすと小さな泡がプクプクと立つあの色に似ている。
寄せて返す波を見ているうちに先ほどまでの疲労がスーッと引いていった。
さて。と膝を伸ばして次の目的地生口島へ。

しまなみ海道を渡るのも今回の目的のひとつだった。
海の上の橋を渡るなんてワクワクしちゃう
ところが島の誰に聞いても
「歩いて渡るんわ、えらいよ~」と言われていた。

自転車なら因島生口島が5分だからあっという間ジャン!と意気揚々と坂道を走り出した
橋に行くまでのアプローチは道幅も広くとってあって新しい施設の優しい設計だったけど
橋に続くサイクリングコースをまたまた押して歩く。

人のいうことはちゃんと聞くもんだね。
橋を渡るのが大変じゃなくて橋に行くまでが大変だよって教えてくれてたんだね
倒れるくらいの前傾姿勢で自転車を押しているアタシの横をバイクが抜き去っていった。
さっきより本気で自転車を捨てたかった・・・
でも考えると辛くなるから次第に近づく橋だけを見て押していく。
『千里の道も一歩から』呪文のように自分に言い聞かせてただただ修行に勤しむ。

やっと登り切った橋からの風景は見事だった
海風が心地よい
車は橋の上は停車禁止だけどアタシは止まれるのよ~~

橋のほぼ真ん中から島の浮かぶ海を眺めていると必ずどこか白波が立っている。
大小の船が島の人々の重要な交通手段。
アタシの足元を大きな船が流れるように進んでいく様をしばらく見ていたが、風に流されてきた黒い雲を見つけた。
先を急ごう。
下りはスイスイだし、瀬戸田は海沿いの道なので楽に移動できた。

あるお土産屋さんを見つけ自転車を降りた。
ここには写真を見るためにきたの。幼いハルイチの写真。Babyハルイチ可愛い
お店はお客さんがいっぱいでおばさん2人で忙しく動き回っていた。
土産を選んで箱につめ発送手配をお願いする。
その時勇気を出して言ってみた。

「おばちゃんあの写真・・・」
「ポルノグラフィティのハルイチの写真よ」
「うん、知ってる。でも名前が近藤ハルイチになってるよ」
「おばちゃん間違ってそのままなんよ~勝手に名前を変えてしまったよ」

面白すぎる!!思い切り笑っちゃた。
お客の波は去ったようで私一人だった。
たぶんこの写真を見たくてきたと言えばひと話あるのだろう。
時計はもうすぐお昼。今のうちに休憩してちょうだい。
「荷物頼みますね~」とだけ言って店を離れた。もう1軒行きたい所があったのだが雲が怪しいから戻る事にする。
ただ・・・・
帰るということはまたあそこまで登らなくてはならない。橋が渡されている高い山を見上げてため息をつく。
ボチボチと向かっていると右に赤崎港が見えた。
そうだフェリーで帰ろう
そうすれば因島の金山に着く。
でも自転車は乗れるのか?
船が生活の中にない私には想像できなかった。
船といえば昔は三浦と木更津を結ぶフェリーか箱根の遊覧船しか思い浮かばない。
営業所の人に訪ねると「95円、乗ってから払って」
あっさり言われ待合室で船を待つ。
95円って。交通手段が95円て安いなぁ~
壁の案内に目をやると「合併に伴い因島市で運営していた高齢者優遇措置は排除になりました」
ここは隣の島だけど因島市。同じ島内に買い物に行くのに95円×2 190円。さらに中心にはバスで行くしかない。
合併によって良いことばかりでも無いようだ。

とってもシンプルな打ちっぱなしの取っ払いなフェリーに私とチャリのおじさんと車が3台乗って出発。
たった5分の渡航には風除けルームなど無かったとっても寒い。
ドライアイなので風が染みて涙が止まらない。
知らない人が見れば泣いているようにしか見えないよね。

今日の化粧も無駄だった・・・


因島日記2006 1-3

2017年11月06日 12時15分38秒 | 因島日記2006
タクシーの運転手さんにお願いして、青影トンネルを出たところで一度降ろしてもらい、トンネルの写真を撮る。
「みんなココの写真を撮りたい撮りたいゆうて。おかしいのう」
だってあの青影トンネルなのよ?何なら自転車でリトライしたいくらいだわ。

運転手さんとの楽しいお喋りをしているうちに目的のプラザオカノに着いた。
店には2組のお客さん。同じファンの方でおじさんがお話の相手をしていたので、
撮り終えたインスタントカメラを手にしばし待つ。
若い店員さんにカメラを渡すと若い店員さんは話かけてきた。
時々機械を見ては私と話をする。
待ち時間を退屈させないように配慮してくれているようだ。

作業の邪魔になると思い、奥を見せてもらえるようお願いし
ファンの親子と話をするおじさんにお邪魔しますと言い店の奥の部屋に入る。
ポルノ部屋になってるの。
様々な写真やポスターが貼られた部屋はどこを見ても目が合う。居場所がない・・なんだかこっちが恥ずかしい。

「アンタは前にもきたかのぅ」背後からしっかりした声が聞こえてきた
「いいえ初めてです」
「慣れてるようにスッと入って行きよったから何回か来た人かと思うたよ」
写真をみながら立ち話。おじさんのお嬢さんの話で盛り上がる。
湘南からといったら近くに良く訪れていたと懐かしそうに話てくれた。
プリントが出来上がり店を出ようとバスの時間を聞いた。
壁に貼られた時刻表を見るとまだだいぶ時間がある。
タクシーを呼ぼうかと考えていると椅子を差し出し座りなさいと言われた。

椅子に腰掛けると
「あんたはどこが好きね?」
そんな直球投げないでよ・・
「真っ直ぐで正直なところ」
それが自慢とばかり大きく頷く。
すっかりおじさんのペースにはまって笑ったり泣いたりおチャラケたり。

「ここに居るといい事も悪い事も聞こえてくる。来てくれた人の話で大事な事は昭仁が帰って来たときに言うとるんよ。
ファンあってのあの子らじゃけ。大事にせんといけんよっていっつも言うとるよ」
彼の性格のプロデューサーはこの人だった。
最近アキヒトの顔つきが変わったと感じていたがようやく理解できた。
この人のおかげでポルノグラフィティのアキヒトと岡野昭仁のバランスの取り方を覚えたのだろう。

「うん、大事にしてくれてるよ。あんなに温かいライブは他にないもん。
成功するには努力も我慢も必要だけど2人を見てるとその人が見えてくるから応援したくなるの。
おじさんのおかげね、ありがとう。」
「それとね、いつかまたタマちゃんともライブが出来たらいいなぁって思ってるの。
何年かかってもいいから待ってるって伝えてね」
「おじさんもそう思うてる。嬉しいのう」

このままでは話は尽きそうにない。
時間を見て席を立つ。
私が来る前から喋りっぱなしで疲れただろう。
「今度は家族も連れて来ますね。どうかお元気で居てください」
「うん、それがいい。待っとるけんね」
「お友達とも来ますからね~ちょっと年上だけどみんな心は乙女なのよ」
「おじさんそういうん大好きよ~」

帰りのバスの中で長かった1日を振り返る。
窓の外がすっかり暗くなり通り沿いの店に明かりが灯っていた。
キャリーケースを引き取り、土生港からタクシーで因島ロッジへ向かう。
二泊三日のこの旅の宿を因島ロッジに決めた当初、初日が満室で泊まれなかったのだが
その後キャンセルが出たのでと連絡をもらい連泊できて安心した。

ロッジは小高い山の上にあるからきっと見晴らしはいいだろう。
高級ホテルのような重厚感はないが、清潔で整えられたロビーやフロントは十分に気持ちがいい。
久しぶりの旅行。
しかも一人旅。
一人で夜行バスに乗り今朝因島に着いたんだった。
そう思うとなんだかワクワクしてきた
チェックインの時に対応してくれた女性スタッフさんと今日のポルノ旅のあらすじを話すと
「今日一日で主要なところは行かれたのね。明日はどこに行く予定なの?」と
気さくに話しかけてくれるのでついつい長い話になってしまった。

すっかり気持ちはポルノモードから一般旅行者に戻ってお気楽にシフトしていた。

私のキャリーケースを持って私たちの話が終わるのをじっと待っていてくれたおじさんスタッフさんが
部屋の案内のために階段を上がりながら、少し後ろの私に顔を向けてこう言った。

「今フロントにいた女の人、新藤くんのおばさん」



島を歩けば親族に当たる  恐るべし因島

因島日記2006 1-2

2017年11月05日 16時52分56秒 | 因島日記2006


高校に向かって自然に歩く速度が速まる。

赤いグラウンドへの門。

雨音の中で遠くから聞こえる犬の声。

良く見るとグラウンドの真ん中で私にむかって吠えている。

門を離れ校舎の入り口へ・・・
テレビ放送でみたあのままの校舎入り口。少し前の映像の2人が歩いていく姿を思いだす。
重い身体から気持ちが離れて私の前に浮いてるようだ。

門柱に触ると学生服の2人の顔が思い浮かんだ。
雨が顔にかかりアゴを伝って落ちた。  雨ではなく涙だった。
なんの自覚もなく泣いているなんて、可笑しくなって笑ってしまった。

再びグラウンドの門にたたずむ。奥に体育館が見えた。
自転車置き場では犬が3匹雨宿りをしていた。
なぜか島には犬が多い。飼い犬と野良犬とどっちつかずに犬
このどっちつかずの犬が多い。首輪もなく行くアテもなさそうに歩いているが顔はすっきり毛並みも綺麗。
人を怖がることもなく私を一瞥し追い越していく。
「どっからきたん?」そう言っているように見える。

体育館へ行く道をさがしていると校舎から人が出てきた!
近所に方らしい。会釈をし体育館にいくための道を聞いてみると
「中には入れんけど、ここ真っ直ぐいったらでるけぇ」
ぶっきらぼうに聞こえたが慣れているといった風にも聞こえた。
言われた通り校舎を横切り体育館の入り口についた。
古くはあるけど傷んではいない建物に通って人たちの年月を感じることが出来る。

気持ちを落ち着けてそっとガラスのドアに手をかけた

その途端に足の力が抜けてその場に座り込んだ

力を失った体とは反対に感情が内側から溢れ喉元を押し上げてくる。

必死に抑え込んで声を殺して泣いていた。 

暗く埃っぽいステージで泣きそうだったハルイチの代わりに。
ここに来るための旅だった 
彼らが歩く道の第一歩の場所が見たかった。

田舎モンで6年経っても芸能界ズレしていない彼らは
芸能人やアーティストになりたいんじゃなくて
ただ歌を歌う人、ギターを弾く人で居たいんだなと思った。
その姿勢を保とうとする彼らに力強さを感じ、頼もしさも感じた。


体育館のガラス越しに見えるステージにお父さんの釣りベストを着て洋々と歌う昭仁を想像しながら
呼吸を整え振り返ると、雨があがり青影山に日が射し始めた。
ゆっくりと後ろ向きに高校を後にする。
もう二度と見ることの出来ないこの場所で貴重な二人の思い出に色を付けることが出来た。
文化祭の日、シャツの胸ポケットから煙草の箱を透けさせて現れたTamaちゃんに青ざめるハルちゃん。
今思い出しても笑える


体力より感情を使いすぎたことでとても疲労した。
景色や人、会話を思い出しながら土生へ帰る。
午前中だけでたくさんの思い出を作ってしまったことを残念に思ったけど
泣いて乾いた体に今日の記憶が温かく浸み込んでいくのがわかる。

土生までの道の途中にあるペーパームーンに入った。
週末になるとポルノFANで賑わういわゆる聖地というお店。

土曜の昼1時、奥のテーブルに座り食事を頼みノートを出す。記憶から消えてしまう前に書いておきたかった。
ここまでの気持ちのひとつひとつも。新鮮で忘れたくない景色や笑顔も。
食事を済ませコーヒーのおかわりをお願いした。

すると「タウン誌でも書いてらっしゃるの?」ママさんが声をかけてくれた。
「ポルノを訪ねに来ました」
途端にママさんはパッと笑顔をみせ
「早く言うてよ~ポルノファンの人には見せるもんがあるんよ」というと両手いっぱいに本やノートを抱えてきた。

「これがこの前のお正月の写真、これは学生の時のイラスト。高校の生徒会の冊子でしょ~そんでタマちゃんのがなかったからサッカーしよった時の写真・・・」
「ありが・・・」もう声にならない。涙が止まらない。
ハンカチに顔をうずめ肩を震わせている私にママは
「そんなに好きなんだね~いつから?」
「ライブは2001年が最初。でもその前から好きだった」
『好きだから泣いているんじゃないの、手放しで喜んでくれたママの気持ちが嬉しいの』そういったら又泣きそうだったから言えなかった。

これまでのいろんな話をしてくれて、あそこは行った?ここは行った?と旅の案内をしてくれる。
その話からプラザオカノが明日は休みという事を聞き、予定をどうするか考えた。
「まだ時間あるから今日行ったほうがいいかもしれんね」
仕度をし、出かける私に時刻表を見せて行き方を教えてくれた。
お礼を言い、店を出ようとする私に宿で食べてと八朔とデコポンをくれた。
もうほんとヤバイから~~~涙をこらえてバスに乗る。

初めて来た町で乗るバスはとてつもない緊張を強いられる。
教えてもらったバス停を聞き逃さないよう耳に神経を集中させていると、霧に包まれた青影山がみえてきた。
今日1日で旅が終わってしまうんじゃないかと不安になる。
島時間はのんびりなのに私一人がジタバタしているみたいだ。

停留所で降りてタクシーに乗り換え運転手さんに行先を告げると慣れている風に返事をしてくれた。
かつて造船で賑わった町は観光で人を呼べるほどの力はない
ポルノで来てくれるファンはそんな町の貴重なお客だろう。
着いてから感じてた矛盾のひとつだ。
もっとオープンにして観光ガイドくらい作ったら商売になる。町も賑わうだろう・・
でも残ってる島の人は、こののんびりした時間を過ごしてきて今更サイクルは変えられない。
島にいるのは昭仁でもハルイチでもタマでもなく、普通の、私達と変わらない人たちだ。
それを忘れてはいけないんだと気付かされた。
相手を思いやる心があれば心で答えてくれるのだ。
基本的な人と人とのマナーでありルールは常にどこにでも存在している。