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Retro-gaming and so on

クラッシュローラー

本題に入る前にちと学習研究社の話をしよう。

学研と言えば「☓年の科学」とか「☓年の学習」とか、子供向け教育雑誌を出してた事で有名な出版社だ。元々の立ち位置としては基本的には「小学館」の同業、一種ライバルのような印象だった。
ただし、「書店に卸す」いわば、通常の販路を使ってる小学館とは違って、学研は「訪問販売」で「年間契約を取る」と言うスタイルの出版社だった。ちと変わり種だったんだよな(今だとベネッセに近い?)。
そんな中、学研は70年代から、「多角経営」の道を模索し始める。おもちゃの製造販売に乗り出すんだ。
このブログこの記事で触れられているが、これはOEMなんだけど、この辺をキッカケにして、出版社なのにおもちゃ屋の販売ルートに乗り出す。
70年代中盤以降では、列車モデル、Nゲージメーカーとしての一角を担っていた事を覚えている鉄道、あるいは鉄道模型ファンもいるだろう。当時の模型専門店ではどうだったか知らんが、少なくともおもちゃ屋の販路ではトミーを相手に互角に戦ってた「二社目」の印象だった。



と言うわけで、この辺で学研には、「科学・学習」出版社と言うイメージだけではなく、「エレクトロニクス玩具に強い」と言う印象が徐々に出てくるんだ。
そしてLSIゲームブームが到来する。ここに学研も参入するわけだが、当時のLSIゲームのその殆どがアーケードゲームの「パクリ」だった。ぶっちゃけ、キチンとオリジナルのアーケードに「アイディア使用料」を払ってたかどうかも知らん。その当時だと、そもそも「ソフトウェア」に対する「著作権」がどうなってんだか整備されてない状況だったんだよな。
(ちなみに、今だと基本的には「ソースコードを丸写し」しない限り、パクリ自体は問題視はされない・・・と言うか、あらゆるソフトウェアは「模倣」の上に成り立ってるから、だ)
そしてそんな中で学研は八面六臂の大活躍を見せる・・・ここでもおもちゃの老舗メーカーのバンダイを向こうに回して、極めてアーケードゲームの再現性が高いLSIゲームを出し続けるんだよな。
個人的な印象だと、ゲーム&ウォッチみたいなLCD分野を除くと、LSIゲームでは「第一の」メーカーだと言って良かったんじゃないか、と思う。他のメーカー(例えばバンダイ)は、モデルとしたアーケードのゲーム性は改変しなくても、そのデザインは大幅に改変してる事が多かった。
一方、学研はなるたけその「見た目」を再現する事にこだわってた印象だ。しかも、「FLを無駄にしないように」と言う、一種、「画面設計の圧縮化」にも極めて高いセンスを発揮してたのだ。


パックマンのパクリのLSIゲーム、学研パックモンスター。モンスターの「目」がエサののドットも兼ねてる、と言うような「FL(蛍光管)の使い回し」が一番上手かったのが学研だと思う(当然、FLの数が増えれば値段も跳ね上がる)。
パックマンパクリゲームの中でも学研パックモンスターの出来が一番良かった。

まぁ、もっとも、アーケードゲームの「カラー」がきらびやかになってくと同時に、さすがに学研の「職人芸」でも追いつかなくなってくんだけどね(笑)。
学研の「職人芸」が何故に最初に通用してたのか、と言うのは、要するにそれまでのアーケードゲームは「背景黒画面」で、扱える色彩が限られてたからFLでエミュレートが可能だったわけ。ところがLSIゲームブーム終焉近くになってくるとこれが破綻してくるわけよ。アーケードはどんどんカラフルになってく。そしてやっぱ「ドンキーコング」の登場が大きかった。これでアーケードゲームには「面が進む」と言う概念が出てきた。それまでの固定面の「繰り返し」じゃなくなっちゃったんだ。FLで固定面は再現出来ても「面が変わる」は再現出来ない。
よって、ドンキーコングが出てきた辺りからこのLSIゲームってのはブーム終焉に向かうわけ。もうアーケードゲームの「再現」が無理になってきた、ってのがメーカーもユーザー(子どもたち)もなんとなく分かってきちゃったんだな。
そしてLSIゲームと入れ替わるように、このブログに書かれてるようなコンソールが台頭してきてファミコン登場、に繋がっていくわけだな。

いずれにせよ、学研は

  • 平安京エイリアン
  • パックモンスター
  • インベーダー2000
  • ディグダグ
  • フロッガー
等、アーケードゲームの「LSIゲームでの再現」を徹底してやった会社だ。オリジナルゲームは全くない。ないけどマジで職人芸の会社ではあったんだ。
後年、ファミコンで「Might & Magic」の移植をやって、「何故に学研がファミコンを?」とか一部の人に思われたみたいだが、この時期の学研を知ってれば「むしろ参入が遅い」とか言う印象になるんじゃないか。一時期とは言え、学研はバンダイを向こうに回して戦える程の「エレクトロニクス玩具の雄」だったんだ。
なお、学研はこのLSIゲームの時期と被りつつ、多角経営の一環でアニメ制作にも乗り出し、NHKと組んだ「ニルスのふしぎな旅」を皮切りに、学研の癖に教育に悪い(笑)、スカートめくり&覗きアニメの「まいっちんぐマチコ先生」を制作する(今考えると、深夜アニメ的なブロックバスターモノの最初の例かもしんない・・・・・・自社で作った漫画雑誌「少年チャレンジ」へのテコ入れだ)。

とまぁ、ここまでが前フリ。っつーか往年の学研の「凄さ」を追体験してもらって、だ。
話は唐突にファミコンへと変わる。
ファミコンは大ヒット商品だった、ってのはもはや皆知ってるだろうし、膨大な数のソフトウェアがリリースされた、ってのも知ってるだろう。
特に、初期のファミコンを支えたのはやっぱ「アーケードゲームを家でもプレイ出来る」と言う辺りだった。
とは言っても、「全ての人気アーケードゲームが移植された」わけじゃあない。当然だよな。
特に、「ゲームセンターあらし」で登場して、知名度があったにも関わらず移植されなかったソフトが何本もある。
往年の「ゲームセンターあらし」の読者は当然小学生で、当時の小学生はゲームセンターに入れなかったんで、漫画を読んで溜飲を下げざるを得なかった、と言うのはいつぞや書いた通りだ。
ぶっちゃけ、後のファミコンで、例えばスペースインベーダーとか、もうとっくにアーケードとしてはハードウェアが陳腐化したようなゲームをわざわざリリースしたのは、当時の「ゲームセンターあらし世代」へのサービスのつもりだったんじゃないか。そうでもないと「より優秀で」「より高度な」アーケードゲームの移植をリアルタイムでは望んでる層が単純に多かったと思うんだ。
「ゲームセンターあらしを読んで歯ぎしりして」やりたい!と思ってた往年の子どもたちをターゲットにしたゲームをアーケードメーカーも率先して移植をしようとしたんだと思う(と同時に、一から開発するよか開発コストはかからんしな)。
しかしそれでも全部じゃないんだ。
そういう「漏れた」ゲームに例えばクラッシュローラーがある。


クラッシュローラー・・・。ポストパックマンのゲームのウチの1つで、

「刷毛で道を塗りつぶしていく」

ゲームだ。



カラフルで可愛くて、当時それなりにヒットしたゲームの筈なんだけど、生憎ファミコンには移植されなかった。
いや、何故に冒頭で長々と学研の話をしたのか、と言うと、これも学研がパクってLSIゲーム化してるゲームの一本だから、だ。タイトルも当然改変してペイントローラーとなっている。これもLSIゲームブームのほぼ末期に登場したゲームの筈だ。



もうこの時期だとLSIゲームレベルではなんだか良く分からなくなってるだろう(笑)。そもそも「塗りつぶす」筈が「塗りつぶしていない」。
図らずも、学研の培った職人技がもはや通用しなくなった例だ、と考える事が出来る。

と、「ゲームセンターあらし」に取り上げられたハズの人気ゲームだったのに(学研がパクリ品を出した、ってのは当時の「人気」の裏返しだ)、ファミコンに移植されなかったせいで「忘れ去られた」幻の名作アーケードゲームになった、と言って良い本作。
移植作がほぼない、と言った状況で唯一移植作が出たのは、何故かNEO GEO ポケットだった、と言う一言だけを添えて本記事は終了しよう。



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