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Retro-gaming and so on

キガタガキタ!

傑作ホラー漫画、「恐怖新聞」には作者のつのだじろうの手による続編が2作品程存在する。
しかしそれとは別に、2009年頃、恐らく週刊少年チャンピオンの編集部主導で、おっそろしい企画モノが誕生した。
何と、「恐怖新聞」を「鉄鍋のジャン!」を描いた西条真二にリメイクさせよう、と言うぶっ飛んだ企画だ。
それがここで紹介する「キガタガキタ!」だ。

 
ハッキリ言う。この漫画、往年の最恐漫画、「恐怖新聞」を期待して読むと肩透かしを食らう。
この漫画、「キガタガキタ!」は、恐怖新聞をモティーフにしていながら、ガッツリ西条真二の漫画だ。リメイクどころかリブートだ。
そして全然怖くない。ジャンルがもはやホラー漫画じゃない。定義が難しいんだが、敢えて言うと心霊アクションっつー他に例を見ない、なんとも説明の難しい漫画になってる。
いや、マジでどう言えばいいのか・・・例えば霊と戦うと言えば、霊媒師が主役とか?そういう漫画になるんだけど、この漫画、マジで幽霊と拳で殴り合う、と言うヘンな漫画になってんだ。
今回の主役、オリジナルの鬼形礼の親戚、鬼形冥は西条真二漫画の典型的な主人公で、何と幽霊とガチンコ勝負をする男、として描かれている。
オリジナルの鬼形礼は、霊現象に対して無力で、何だかんだ言って「恐怖新聞」に震えてるだけ、の男だったが、鬼形冥は違う。恐怖新聞を殴る、そして燃やす、と言う恐怖を知らん男だ。



主人公が恐怖を知らん男、って事はホラー漫画になりようがない
結果、幽霊とバトルする、と言う怪作として仕上がってるんだ。

「恐怖新聞」は「悪霊」なんで既に死んでるんだが・・・(苦笑)。

いや、ちなみにこれ、企画モノとしては大性交大成功作品なんだよ。単行本は全4巻、と「短かッ!」と思うかもしれないけど、オリジナルの「恐怖新聞」でも単行本は全9巻だった。
つまり、「企画モノ」のクセにオリジナルの約半分の巻数まで出せた、って事は充分性交成功作だと言っていいんだ。
そして「"あの"つのだじろうの"恐怖新聞"」を期待して読むと、恐らく、「何だこれ」って「怒っちゃう」作品なんだろうけど、西条真二作品として見れば割に「フツーに面白い」っつーか・・・要は「先入観ナシ」で読めばそこそこイケる漫画にはなってんだ。
言っただろ?リブート作品だって。ベーシックコンセプトを「恐怖新聞」と共有しながら脱構築し、西条真二キャラが好きに大暴れする漫画になってんだ。
恐らく週刊少年チャンピオン編集部も「往年の"恐怖新聞"の完全再現」なんて端から期待して無くって・・・結果西条真二センセも好きに描けた漫画だったんじゃなかろうか。


このヴァージョンでの「恐怖新聞の配達霊」は、西条真二的な「パイオツカイデー」な「チャンネー」の姿で現れる。
全身に新聞紙を巻き付けた、まるでミイラ女のような様相で現れ、しかも(多分)その「ガワ」により実体化してる。そのため、「火をつけられて」燃えたり、あるいは「水で」濡れてバラバラになったり、いいトコがない(笑)。
また、悪霊としては強力だが、オリジナルみたいに「知性」があるわけでもなく、コミュニケートが取れない。
単に「悪意の塊」として現れるだけ、だ。

そしてもう一つ、このヴァージョンの改変ポイントは、「読むと命が100日縮まる」のではなく、「書いてあった予言が成就すれば」代償として100日命が取られる辺り、だ。
そう、「予言が成就」しなければ主人公、鬼形冥の命は脅かされない。
従って、鬼形冥の反撃は、「恐怖新聞に書かれてある予言を成就させない」事になる。
結果としては、ここに、「悪意の塊」恐怖新聞と、鬼形冥の「激闘」が起こるわけだ。

なかなかトチ狂った設定だが、面白い(笑)。つのだじろうの「アイディア」を西条真二センセが解題するとこうなんのか、と言うなかなか味わい深い漫画だ。
オススメ。
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