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Retro-gaming and so on

ロードス島戦記

これ、書こうかどうかちと迷った。
うーーーん。上手く纏められないんだよなぁ。
あと、基本的には厨二病をこじらせたゲームであるし、売れたのも偶然が重なったから、に過ぎない。
そして、全バージョンが面白い、ってワケでもないのだ。

さて、セガのRPG事情を腐したわけですが。
一方、PCエンジンは「殆どの人が見たことが無いにも関わらず」、評判的には

「PC生まれの本格的RPGをやるならPCエンジン」

ってなカンジになっていた。
いや、ホント「殆どの人が見たことが無いにも関わらず」である。これには2つの意味がある。
まず、PCエンジン自体を殆どの人が持ってなかった、って事だ。一応ゲーム人口の20〜25%が買ったと言われるPCエンジン。大体ゲーマーの4人に1人、は持ってる概算になる。概算はな。
しかし、実際は殆どの人が見たことないんじゃないか。ファミコンを持ってるヤツはいる。MSXとか持ってるヤツもいる。しかし、PCエンジンを持ってるヤツにはまず遭遇せんのだ。「よっぽどの金持ちしか持ってないマシン」。それが当時のPCエンジンだったんだ。
もっと酷いのがまぁ、セガのマシンだったのは事実だが。こっちは「よっぽどの好事家しか持ってないマシン」である。
原則、これらの「ファミコン以外のマシン」、特にPCエンジンは購入年齢層が高かったのだ。小学生等が親に強請って買ってもらうには高嶺の花過ぎたのだよ。当時の大学生以上のゲーマー向けのマシンだったんだな。
もう一つの理由、ってのはそもそもPC自体を持ってるヤツが少ない。これも今だと想像つかんかもしれんけど、日本でPCが売れるようになったのはWindows95以降であって、それ以前に個人でPC持ってるヤツこそ好事家とか金持ちだったのだ。つまり、PCエンジン時代ではPC自体の普及率が全然無かった。
結果、「PC生まれの本格RPG」ってのが具体的に何を指すのか当時のコンシューマ市場の子供ゲーマーは誰も知らんかった、って事だ。今なら「当時のPCのRPGはクソばっかだった」ってこうやってヘーキで書けるけど(笑)、当時はそんなモン夢にも思わんかったのだ。何せ誰も具体的に見たり遊んだりしたわけじゃあない。
例えばファミコン雑誌で、PCのゲームがファミコンやらスーファミに移植される際、「アレンジされて簡略化されてる」と言う文章がちょくちょく現れる、と。「そうか、PC版はもっと複雑なんだ」「それは家庭用機には簡単に移植出来ないんだ」「PCのRPGってじゃあもっと本格的なんだ」とか想像に想像が重なって「PCのRPGは家庭用マシンのゲームに比べてもっと本格的」と言うイメージが出来ただけ、である。
つまり、実際起こってる事は「誰も具体的に見た事も遊んだ事もないPCのRPG」が「誰も具体的に見た事も遊んだ事もないPCエンジン」に移植されてる、って事である。そして、その「素晴らしさ」はファミコン雑誌で辛うじて伝えられてるに過ぎなかった、のである。

とは言っても、である。PCエンジンのRPGの数は全ソフト650本中65本である。丁度10%だな。これは結構高い比率なのではないか。「ギャルゲーならPCエンジン」になる前の、「本格的RPGならPCエンジン」と言う評に恥じない結果、である。

しかしながら、PCエンジンも最初から順風満帆だったわけではない。セガと同様に、PCエンジンのRPGの船出もキツかったのだ。ただ、セガのマシンとPCエンジンの何が違ったか、と言うとハドソンとNECは試行錯誤しながら、ででもRPGを出し続けるようにした、と言う事である。そしてセガのようにARPGなのにRPGと言って頭数を誤魔化すような事もしていない。ハドソンとNECはセガより遥かにクソマジメに仕事をしていただけ、である。そしてセガは片手間にやっていた。

以前書いた通り、PCエンジンの登場は1987年10月30日、である。初代のドラゴンクエストが発売されたのが前年の5月27日、IIが発売されたのが同年(1987年)の1月26日で、もはやRPGブームは決定的であった(PCエンジン発売後比較的すぐの12月18日にファイナル・ファンタジーIが発売されている)。つまり、PCエンジンは登場時期的にファミコンでのRPGブームのまっただ中で勝負をしなければならない運命を背負っていた、のである。

PCエンジン初のRPGは1988年1月22日に発売された。PCエンジン発売から3ヶ月を待たずにRPGが投入されている。と言う事は、明らかにPCエンジン発売前から「RPGが必要になるのは間違いない」と準備されてた、と言う事だろう。
ところがこのゲーム・・・「邪聖剣ネクロマンサー」は、カルトな人気は得たモノの、ハッキリ言ってクソゲーと言って良いレベルである。
何がダメか?
プレイした感想で言うと、とにかく必須アイテムの数がアイテム欄に比べると多すぎるのだ。結果、常にアイテム欄が圧迫されてる、と言う、ちょっと考えれば分かる「ヘタクソな」設計になっていて、敵と闘う前に自らのアイテム欄と戦わねばならぬ、と言うワケが分からんゲームとなっている。
と言うわけで、これはぶっちゃけると、セガのファンタシースター同様に急造品で、テストプレイをロクにせんかったんだろうな、と言う酷い出来なのである。


そして、この邪聖剣ネクロマンサーを皮切りにして、メガドライブよろしく、暫くPCエンジンは決して褒められたモノでもないRPGばっかをリリースしていくのである。受難の日々、だな。
最初の4本くらいはパッとしなかったのだ。セガならこれで既に息切れである。
さて、PCエンジン発売のほぼ一年後(1988年12月4日)。待望のCD-ROMが発売される(時期的にはまだ邪聖剣ネクロマンサーしか出てない頃だ)。そしてCD-ROM発売から約半年後(1989年6月30日)。CD-ROM初のRPGが発売される。
これが「天外魔境」であるが・・・・・・。
ぶっちゃけこのシリーズはつまらん。ハッキリ言ってクソゲーである。そしてクソゲー加減はIIになっても解消してない。弱い主人公、やたら高いエンカウント率、すぐ切れる補助呪文、なかなか増えないパーティメンバー(※1)、しつこい使い回しの中ボス戦、等とロクな要素がない。
ぶっちゃけ、天外魔境に比べればファンタシースターの方がまだマシかもしれない(いや、マシだ) 。クソゲーをアニメ的演出で包んだだけ、の粗悪RPGが天外魔境である。当時ファミ通で色々褒められてたから期待してやってみれば実際は大した事がなかった、って以上に腹が立つゲームであった。
そして初代天外魔境が出てもなお、PCエンジンのRPG受難は続くのである。
ここまでで22本。そしてこの時点で1991年10月25日である。PCエンジンが発売されて殆ど4年。
で、全部が全部ハドソン/NEC製ではないし、中には日本テレネットみたいな役に立ってんだか立ってないんだか分からない会社のモノもあるし、何だか良く分からんメディアミックス品があったり、ファミコンで売れた桃太郎伝説なんかも混じってはいるんだけど、基本的には多分どれを見ても名前がパッとしないんじゃないか。
つまり、実はこの時点でも「本格的なRPGをプレイするならPCエンジン」と言う評価には繋がっていないのである。ハードウェア発売から4年も経っている、のに。
ぶっちゃけ、セガだったらこの時点でもはや投げやりで「次世代ハードで・・・」とかバカな事を言い出すだろう。しかしそこはハドソン+NEC。そういうイカれた事は全く考えなかったのである。そしてここまで頑張ってきたのである。みすみす育てた市場を捨てるわけにもいかない(この辺もセガとは大違いである)。
そして、この辺で気づき出したんだよな。

「あれ、オリジナルなRPGを頑張って作って出すより、PC-8801/9801のRPGを移植した方が評判エエんちゃうか?」

例えば、ハドソン/NECが直接関わっているわけではないが、PCのRPGでマニアックな人気を誇ったラストハルマゲドンとか。


あるいは「ブライ(BURAI)八玉の勇士伝説」とか。



どうもそういう元々評価が高いPCのRPGの移植作の方が評判が高い、って事が段々と分かってきたみたい。
と言うのも、先にも書いた通り、PCエンジンの購入者層は元々年齢層が高い。1990年時点でもうスーパーファミコンがリリースされてたわけだが、スーファミは任天堂の方針で基本やっぱりジャリ向け。PCエンジンはそういう「子供向け」を考慮するのは価格的にもムリゲーだったのである。
だったらPCの名作RPGをそのまま持ってきた方が・・・と方針がハッキリしてきたわけだ。そしてそれはスーパーファミコンのRPGとの差別化を意味する。
そうして、(個人的にはあまり好きなゲームじゃないが)ハドソンが日本ファルコムからライセンスを取ってPCエンジン向けに「ドラゴンスレイヤー 英雄伝説」を移植してこれがヒット(これ以前にもARPGで、イースなんかの成功例が既にあったが)。この辺が「PC-8801/PC-9801用RPGを移植すれば成功する」と言う方針がある程度確定した瞬間だったのだ。


実際、1992年は、1月24日に発売になったマイトアンドマジックを筆頭に、PCでのRPGの移植作品比率が増えている。当然、RPGの製作日数から逆算すると、既に1990年辺りから(イース等の販売実績を考慮して)、「PCのRPGを移植すればイケる」と言う方針はある程度固まってたのではないだろうか。
そして1992年辺りからのPCのRPGの移植ラッシュが始まり、これをもって

「本格的なPC生まれのRPGをやりたいのならPCエンジン」

と言う評価が始まるのである。

と言うPCエンジンのRPGの背景を記しておいて本題に入ろう。
正直言うと、「ロードス島戦記」の存在を知ったのは割に最近である。ファミ通なんかだと天外魔境の宣伝記事は良く見かけたが、ロードス島戦記は・・・・・・多分あんま取り扱ってなかったんじゃないかなぁ。全然印象がないのだ。
曰く、原作小説は「和製ファンタジーの古典」とか言われてるらしいが・・・それほどの話か?登場する名称も英雄戦争だの、マジで厨二病丸出しだったりしてゲンナリする。
それに、呪われた島なんて呼ばれてる島に人は住まんと思うぞ(笑)。
小説の文章は下手ではないが、結局、色々とダサいのである。こんなんが一般ウケするわけねーだろ。
ぶっちゃけ、この手のモノを「常識」と言い切る「オタクの認識度合いの狭さ」ってのに割にイライラするタイプである。お前の見てる世界はあくまで世界の一部でしかないんだよ、と。
大体、ロードス島戦記を知ってるのは角川のコンプティークを読んでた連中だけ、だろう。そしてコンプティークはパソコン系雑誌として考えても売上一位の雑誌ではなかった。角川書店は何にしても売上一位はなかなか取れない会社、なのである。
そんな中で考えてみるとロードス島戦記自体は決してメジャーな商品ではない。従ってオタクの常識は世間からズレている。結果、それは一般的な常識ではないのだ。

さて、ロードス島戦記をもうちょっと解説してみよう。これは元々、角川のコンプティークと言う雑誌で掲載されたテーブルトップRPGの解説記事である。いわゆるリプレイ、だな。1986年の事、である。まだRPG自体が認知度が低く珍しかった、ドラクエIが発売された年だな。
そこで行われたTRPGのメンバーはグループSNEのメンバーで(まだグループSNEはサークル程度の存在で法人化されてなかった)、そのロールプレイが雑誌で人気が出たわけだ。あくまでコンプティークの、と枕詞が付くわけだが。
そして元々、これはD&Dの解説記事だったのだ。



余談だが、今だとD&DとAD&Dは統合されて、単一名称Dungeons & Dragonsに統一されているが、この当時は違ったのだ。TSR社の戦略から言うとD&DはRPG初心者向け、AD&Dは上級者向け、と言う商品展開になっていた。
この2つ、何が違うのか、と言うと、ザックリ言うと職業(クラス)が違う。D&Dではドワーフやエルフ等のデミヒューマン(亜人種)はクラスになってるのだ。従って、人間の戦士はいてもドワーフの戦士はいない。ドワーフはドワーフでしかないのだ。
同様に、人間の魔法使いはいてもエルフの魔法使いはいない。エルフはエルフで以下同文。
んで、コンプティークの当初のこの連載では次のパーティが組まれてたわけだな。
  • ドワーフ
  • 人間の戦士
  • 人間の僧侶
  • 人間の盗賊
  • エルフ
  • 人間の魔法使い
コンプティークでのこの連載はコンプティーク読者にそこそこ人気があったらしい。
ところで、Wikipediaなんかを見ると次のような事が書かれている。

リプレイ第1部と第2部は『Dungeons & Dragons』を使用していたが、版権上の問題が発生したため、第3部からはグループSNEオリジナルのTRPGルールによってプレイされている。この関係上、第1部と第2部の連載は単行本化されておらず、後にオリジナルルールで再プレイしたものがリプレイ本として発売されている。 

正直言うと、時期的な事を色々と鑑みれば、これは違うんじゃないか、とか思っている。恐らくグループSNEは「そろそろオリジナルのTPRGを作りたい」と言う方向に動きつつあったんじゃないか。多分TSRの方から何か言ってきた、と言うより、今後の商品展開を考えるとD&Dを始めとする他社製品に依存しない方が良い、と言う判断になったのではないか。
と言うのも、リプレイ第3部と題された連載がコンプティークで始まるのが1988年。この年にPC-8801/PC-9801等対応のCRPGとしてロードス島戦記が発売されるわけだが、当然このシステムはD&D実装ではない。非常に原始的ではあるが、ソードワールドRPGの雛形っぽいシステムで実装されている。そして当然、CRPGはすぐに作れるようなビデオゲームではない。ということはそれなりに・・・つまり1年くらい前から準備していただろう事を考慮すると、グループSNEが新しいTRPGを設計しだしたのは1988年より前じゃないと計算が合わないのだ。
要するに恐らく1987年辺りには既に「脱D&Dを視野に入れてた」のではないか、と推察出来るのである(そしてグループSNEは1987年に法人化するのである)。

(1989年に出版されたリプレイ等で採用されるロードス島戦記RPG。しかし、これよりも先にCRPG版が出ている。やはり第3部開始以前に既にオリジナルルールを、CRPG発売に向けて開発してきた、と考える方が妥当。)

そして、小説版「ロードス島戦記」が刊行されるのが同じく1988年なのだが、これを鑑みれば分かるんだが、実はPC版の「ロードス島戦記」は小説が原作ではないのだ(時期が被りすぎている)。こっちはコンプティークに連載されてた「リプレイ」が原作である。
従って、登場キャラの台詞回しなんかが小説版なんかと大幅にイメージが違う。



さて、PCエンジン版ロードス島戦記へ移る前にこのPC版ロードス島戦記をもうちょっと詳しく見てみよう。と言うか、1988年発売のこのゲーム、結局PCエンジンに移植され発売されたのは何と4年後の1992年である。時期的にバカ正直に見ると「全く美味しくない」移植だ。旬じゃない。
実はPCエンジン版より先立ち、ロードス島戦記のOVAが1990〜1991年にかけて製作されている。OVAなんで要するにオタク御用達で一般人は知らん、って事なんだが、要するにこれを請けるカタチで、平たく言うと「アニメ原作のゲームとして」PCエンジン版ロードス島戦記が企画されてるわけだ。そんなワケで、当時の感覚で言っても既にレトロゲームであった「ロードス島戦記」が記念碑的にPCエンジンに移植される、ってニュアンスに見えるわけだな。
うん、見えるだけ、である。
実は違うんだ。
ハッキリ言ってPCエンジン版「ロードス島戦記」とPC版「ロードス島戦記」は別物、って言って良い。先にも書いたけど、PC版は「リプレイ」を原作にしてるが、PCエンジン版は「アニメ原作」である。もうこれだけで全然違う事は分かると思うんだけど、一方、「ビデオゲーム化権」自体は(既に消滅して久しい)ハミングバードソフトが入手している。従って、権利的に若干ややこしくなってるわけだ。
要するに©にハミングバードソフトが名を連ねてるのは、ビデオゲーム化権を押さえてるからだ、ってだけの話であって、PCエンジン版は実際問題まるっとハドソン製作の新作のCRPGと言って良い。背景のアラスジが同じだけで全くの別物なのだ。
しかも、PC版は・・・ぶっちゃけ、かなりクソゲーに近い出来だ。ザーッと挙げるだけでも
  • 音楽がサイテー
  • 効果音がサイテー
  • 操作性がサイテー
  • ゲームバランスがサイテー
である。
PC版の販売会社、ハミングバードは、ADV屋としてそれなりに名を馳せてはいたが、多分RPGは前年の(同じくグループSNEと組んだ)ラプラスの魔とそれ以前のファミコンディスクシステムのディープダンジョン2作しか経験がない。要するにRPG屋としてはあまりノウハウを持ってなかったのだ。
結果、クッソつまらんヘンなBGMが鳴り響き、ひっでぇ音が割れたような魔法の効果音がとどろき、カクカクしたスクロールのゲーム、それがPC版ロードス島戦記、なのである。



中でもどの辺りが一番設計がマズいのか。それはTPRGの文法をそのまま持ち込むにはどうすれば良いのか、と言う直球的な方法論を作ろうとする方策を取らずに、ドラクエ的なCRPGが売れてるから、とその辺を中途半端に混ぜようとした辺りである。
いつか書いたが、そもそもTRPG自体にはランダムエンカウント、と言う概念がない。従って、旅の途中で敵に合うって事がほぼ無いのだ。いや、あるこたぁあるが、その辺はDM(TRPGでプレイヤーではなく、シナリオの進行役で審判役)の裁量一つの話であって、事実上CRPGで言うイベントに近い。
このゲームは戦闘に本格的なタクティカルコンバットを導入しようとしてるのだが。旅中にランダムエンカウントで起こる戦闘は「簡易戦闘」としてWizardry型の戦闘を提示する。それがまず全然ダメで、また、元々のコンセプトはどーしたんだ、と言う出来である。実装も全然良くない。



しかも遭遇する敵のレベルもマチマチ過ぎて、道中、結構高いレベルの敵に合う確率が高い。従って、ゲームバランス、と言う意味で言うと極めて悪い設計になってる、と言わざるを得ないのだ。
反面、旅の途中で「休憩」出来て、MPを完全回復可能ではある。ただし、そのせいで宿に泊まらなくて良い、と言う仕様になってるが、それを避けさせる為、宿でしかセーブが出来なくなってるのだ。従って、このゲームでは、セーブをするためだけに宿代を払わないとならない。



結局、この辺のCRPGへの「TRPGの旅の方式の持ち込み」の完成を見るのは、後続する別の会社が実装したソードワールドPCを待つしか無かったのである(実際は、SSIのAD&D Curse of the Azure Bondsを参考にしたんだろうが)。
いずれにせよ、当時のPC上のCRPGはまだロクなモノが無かった事もあり、このゲームは「本格的なRPG」としてそこそこ好評価だったらしい。が、ファミコン/スーファミで発展するCRPGのレベルに比べればかなりお粗末な出来、と言って良い。しかも、RPGとしての分量も実は大きくない、非常に小粒なRPGである(ダンジョンが3Dの為、解くまでマッピング込みだと時間がかかるだけ、である)。
唯一このゲームの良かったトコロはエルフのディードリットの生ケツを拝める事くらいだったのではなかろうか。


と言うわけで、いわゆる「原作」と言われる本作は、コンプティーク読者とPCを持ってた好事家、そしてMSXユーザー以外には殆ど知られてなかったのではないか。ハッキリ言えないのは、僕は当時、コンプティーク読者でもないし、ファミコンも持ってなかったし、ゲームにも全く興味が無かったので良く知らないのである。でも周りにいたゲーマーも特に何も言ってなかったので、多分そこまでメジャーな作品でもなかったのだろう。

そしてその4年後、ハドソンがPCエンジン版ロードス島戦記をリリースするのである。先にも言った通り、OVAが出た記念、ってなカンジでリリースされるわけだが、角川書店が特にしゃしゃり出たわけでもないようで(当時のメディアミックスは割に緩やかだった)、恐らく殆どがハドソン主導だろう。
そして、ハドソンは製作に対し気合が相当入ってた模様で、グラフィック関係はPCゲームのグラフィックで定評があった工画堂に完全補佐を依頼している。また、グループSNE色もかなり薄まってるお陰で(笑)、かなり良質のRPGになっている。
ハドソンもRPG製作は「桃太郎伝説」以降パッとしてなかったが、それでも本作がリリースされる辺りでは相当手慣れてきてて、手堅く本作を作り上げている。そして先にも書いたが、事実上、「原作」とはまるで別物の作品と化している。


「原作」との大きな違いは、PC版は実はWizardry/Ultimaでお馴染みである「キャラメイク」が出来るようになっているが、PCエンジン版はその辺は完全に無くなって、キャラゲーと化している。コンセプト的に言っても、完全に「OVAを追体験出来る」のがウリとなってる模様で、どっちかと言うとOVAファン向けに照準を合わせて製作されてるようだ(しかも「原作」でもキャラメイクしてプレイするヤツは案外少なかったのではないか)。


従って、「原作」は(キャラメイクしなければ)ギムが旅立つカンジでデザインされてるが、こちらはOVAの流れに合わせてパーンとエトの二人組で旅が始まるようになっている。

(比較的すぐに主人公パーティに合流するエルフのディードリット。先にも書いたが、「シャーマン」と言う職業はグループSNEオリジナルのRPGルールに則ったモノだが、元々D&Dではエルフはクラス(職業)になっていて、ディードリットもそれに従って生まれてきた。)

戦闘は「原作」と同様にタクティカルバトルになっているが、これも改良されている。タクティカルバトルの「面倒くささ」が緩和されるように自動戦闘が追加されている。
戦術的な話をすると、大きな違いと言えるのは召喚魔法である。「原作」だと、召喚魔法を使用すると使用者は全く動けなくなるんで、あまり意味が無い魔法だったのだが、PCエンジン版は召喚魔法を唱えても術者は動く事が出来る。結果、戦闘中にパーティメンバーが増えるようなモノで、手数が多くなるのだ。これは非常に良い改良である。


コマンドの操作体系も非常に分かりやすく使いやすくなっている。「原作版」はお世辞にもUIが良い、たぁ言えなかった。これはX68000版のマウスコントロールの「改良」でも全然良くなってなくって、ハッキリ言えばWindows版でもダメダメで、ハミングバードはこの辺のセンスが全くなかった(だから潰れたのかも・笑)。
反面、さすがファミコンで鍛えてPCエンジンでのノウハウがたまってるハドソン、ストレスがないコマンド操作になっている。

(左がPC版で右がPCエンジン版での「市場」。PCエンジン版はコマンドが整理されてて、買い物時に装備が出来るが、前者はそれが出来ないので、一々「広場」に戻らないと買ったアイテムの装備も出来ない。)

(左がPC版の「キャンプ」、右がPCエンジン版の「キャンプ」。やはりPCエンジン版の方がコマンドが整理されてて、コマンドツリーも上手く作られている。)

さて、ストーリーだが・・・ぶっちゃけストーリーいる?(※2)
いや、ストーリーがいらないRPGなんざねぇ、って思うかもしれないけれども、このPCエンジン版ロードス島戦記、大変良く出来てるのだ。個人的にはハドソンの熟練したゲーム設計能力を楽しんでもらいたい・・・それしか言いようが無い、のである。ハドソンによる軽快なタクティカルバトルの再設計・・・それだけでも十二分にゲームとしての価値があるんだよなぁ。
あとよ、グループSNE絡みのゲームってどれもストーリーは単なる厨二病なの。どれ見ても、ストーリーが素晴らしい!とか言うこたぁねぇから(笑)。
グループSNEは自ら作家集団とか言ってっけどさ。ぶっちゃけ、ゲームのシステム屋以上でも以下でもないです。彼らの作ったストーリーがいつまでも記憶に残る、とか面白い、とか、そんなのってのは元々無いんだよ。ロードス島戦記が角川の肝いりもあってマグレ当たりしただけ、ってのが本当なんだよな。事実、二匹目のドジョウはどこにもいなかっただろ?
作家集団って考えるからおかしくなるんだ。っつーか、そもそもビジネスモデルがTSRを模してるだけ、ってんが本当のトコ。
TSRがAD&Dを展開して拡販する際に自社から小説出して売ってたりしてただろ?それの真似。しかし、TSRから出てた小説・・・ドラゴンランス戦記は読んだ事ねぇけど、フォーゴトン・レルムの小説版はそんなに面白くない。そしてそういうビジネスを始めたヤツらは結果潰れてる(※3)のだ。
簡単にメディアミックス、とか言うけど、ゲームの性質と小説の性質ってやっぱ違うんだよ。だから偶発的にロードス島戦記は当たったけど、この界隈からは続くヒット作は出てきてないわけ。元々そんなんやる事自体が間違ってるからだ。

「ロードス島戦記」と言うストーリー自体にそこまで魅力がない、と言う証として。
「ロードス島戦記」はこの後色々なプラットフォームに移植されるが、実の事言えばこのPCエンジン版以外は大して評価が高くないのだ(※4)。結果、このゲームの成功自体がハドソンの技術力・開発力に裏付けられてる、って事実に他ならない。
このバージョンの成功で気をよくしたのか、グループSNEはセガと組んでメガCD版のロードス島戦記(1995年)をリリースする。が、こっちはPCエンジン版と違って評価はメチャクチャ悪い。ハドソン絡んでねぇしな。
加えると、1995年、同様に今度は角川書店が色気を出して、グループSNEと「原作版」の製作者、ハミングバードと組んでスーパーファミコン用にロードス島戦記を製作して出す。が、これも基本的には酷評されている。
まず前日譚を延々を付け足した事・・・誰もそんなの望んでなかったろうが、上に書いた通り、元々「原作」はRPGのボリュームとしては大した量ではないのだ。プレイヤーがゲームを解くのにそこそこ時間がかかるのは、単にダンジョンがWizardry型の3Dダンジョンになるから、に過ぎない。
しかし、ダンジョンが3Dじゃなくなりフツーに2Dになればシナリオの「少なさ」は同時代のSFCのゲームと比すると致命的である事がバレバレになるわけだ・・・・・・だから「増量」を試みたんだろうけど、ハッキリ言うと失敗である。
あと、戦闘システムの変更の意味の分からなさ(TRPGからチェスになってる・苦笑)、プレイしづらいクオータービュー、とか改悪点ばっかり目立つ。それでもストーリーに魅力があれば・・・って言うかもしれんが、そんなもん無い上での増量、である。PCエンジン版から数えて3匹目のドジョウであるが、やっぱりそんなモンいないのだよ。そしてやっぱりハドソンは関与していない。

(SFC版。クソ長ぇイベントから始まる。)

そう、ストーリーはどうでも良い厨二病、PCエンジン版以外は惨敗な出来・・・だから言ったろ、このゲーム、PCエンジン版はハドソンの開発力を楽しむゲームなのである。ハドソンの底力があればこそ成り立ったゲームであって、極端に言うとグループSNEの存在さえどーでも良いのだ(笑)。
円熟期のハドソンのRPG開発力、是非ともPCエンジンで確認してもらいたい。いや、ホンマそれしか言いようがないんだって。恐ろしい事に、それだけで充分楽しめるゲームなのである。マジだよ?

※1: 洋ゲーのRPGは国産RPGに比べるとムズい、と言われる。しかし、「キャラメイク」が絡む以上、ゲームは最初期からフルメンバーで行動可能だ。そういう意味ではドラクエIIではじまった「仲間を探して旅をする」方がやりようによってはキツくなるのだ。
天外魔境はドラマ性を重視してる為か、フルメンバーになるのがフツーのCRPGに比べると極めて遅いのだ。しかしゲームとして考えると、「常に数名欠けて行動する」のが如何にキツいか。天外魔境のデザイナーはその辺が全然分かってない、のだ。
結果、フルメンバーが揃うまで時間がかかる、と言う事はプレイヤーに対しては「意地が悪いゲーム」と言う事に他ならない。
特にこれは続編の天外魔境IIに於いて顕著である。
(結局、「ゲーム」と「他のメディア」の違いが分かってないヤツが多すぎるのだ!)

※2: 敢えてストーリーの骨格を説明すると、厨二要素を省けば、ぶっちゃけ、「囚われの女性を救出する話」となり、実はスーパーマリオブラザーズと全く同じ、極めてありきたりな話になるのだ。
そしてこの話の厨二要素とは何か、と言うと、主人公達が簡単に王族と知り合いになり、重要な任務に就く、と言うご都合主義に支えられてる辺りである。こんなご都合主義はTSRのAD&D小説でもあり得ない。簡単に「ロードスの平和は俺が守る!」になっちゃう辺りが実はファンタジーとして正統派でも何でもねぇ辺りなのだ。
しかし本当は、再確認するが、スーパーマリオブラザーズ的な「囚われの女性を救出する」と言う骨組みがこの話の肝である。つまり、ドンキーコング/クッパな魔王的存在が灰色の魔女カーラ(の本体であるサークレット)であり、囚われの姫(ピーチ姫?)がレイリアと言う「カーラと同一化した」女性である。
ただし、小説/OVA的なストーリーを解題すると、この「救出したい」と言うモティベーションを持つのはドワーフのギムであり、彼がマリオ役であって(笑)、主人公は全く関係ないのだ。その辺が、王道的なストーリーの軸があるにも関わらず、この物語の弱いトコロである。主人公の行動原理がプロットに実は従っていない。
だから単なる冒険者である筈の主人公はやたら正義を振り回し、クビになった騎士の息子、とか言う後付のどーでも良い設定が入り込まざるを得なかったのだろう。かつそのせいで厨二病的な雰囲気がますますこじれていくのである(あるいは、レイリア救出のモティベーションが主人公パーンにあった事にすればかなり素直な話になったのでは?)。
カーラの「完全に善でもなく悪でもない」、要するに「灰色である」と言う設定自体は当時は比較的真新しかったし、カーラのキャラ付け自体がこの話の一番面白いトコかもしれないが、いずれにせよ、ここで書いた通り、物語の骨格自体はさして真新しいものではない。
しかし、下手に捻らずそれで素直やってた方がもっとマシな・・・一般に受け入れられる話となってたのではないだろうか。

※3: D&Dの版元、TSRは1997年に債務超過により、WotC(Wizards of the Coast)社に買収されている。
と言うわけで、現在はD&Dの全ての権利はWotC社が持っていて、そしてTSRが破綻したビジネス上の理由は色々とあるが、どっちにせよ、自社製品(TRPG)の宣伝の為に小説を発売する、と言うビジネスモデルは大して上手く働いてはいなかった、と言う事だろう(上手く行ってたら債務超過に陥る事なんざ無い)。
いずれにせよ、TSRも「ゲーム」と「他のメディア」の違いが分かってなかったし、このビジネスモデルそのものをそのまま受け入れたグループSNE自体も「ゲーム」と「他のメディア」の違いをキチンと理解してるとは言い難い。
だから正直言うとグループSNEは小説屋としては「偶然売れた」ロードス島戦記以外は失敗続きで大した作品を出してない、と思われてるし、作ったビデオゲームの「シナリオ」が酷評されるのも基本その辺が原因である。全くその辺を自覚していないようだが。

※4: ただし、グループSNEの立場から言うと、この「ロードス島戦記」をドル箱と認識してる模様で、「あの夢(バブルと読む・笑)をもう一度!」ばりにゲームボーイやドリームキャストで出したり、ブラウザゲーにしたり、Yahoo!のモバゲーにしたり、オンラインRPGにしたり、と濫造してる。まさしくN匹目のドジョウを探せ!とばかりのライセンス乱発である。そして結果、殆どが極めて短命なサービスとして終了している。
そして、珍しく角川書店が関わってないトコを見ても、もうIPとしても賞味期限切れ、と角川も見限ってるのだろう。実際、ロードス島戦記と言う単語で胸を熱くするのは往年のオタクだけで、決して今の若者を含むマジョリティではないのである。だから何度も言うけど、実態はマイナー作品なんだっての。
なお、最新のロードス島戦記IPによるゲームはSteamで公開されているディードリットのアクションゲームである。そしてもはやRPGもクソも関係なくなっている。


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