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28週後…

2008-01-23 02:32:21 | 日々の随想録

日比谷のスバル座で『28週後…』を観てきました。

ダニー・ボイル監督作品、『28日後…』の続編となる本作。
今作はスペインのフアン・カルロス・フレスナディージョ監督で、ダニー・ボイルは製作にまわっています。

感染すると自我を失って凶暴化するレイジ(RAGE)ウイルスのパンデミックフルーによって壊滅状態に陥ったイギリス。
国連の要請により派兵された米軍の管理の下、ようやく復興への道筋を辿り始めたかにみえたが…

---<以下、ネタバレあり>---

本作は前作の登場人物は一切登場せず、設定のみを引き継いだ作品。
冒頭で感染者に襲われるシーンから始まるのは、いわば前作のおさらいですな。

妻を見捨てて逃亡するドン(ロバート・カーライル)を追う形で物語は始まる。
このシークエンスの出来映えがとても良く、その感染速度ゆえにさっきまで味方だった奴が次の瞬間にはモンスター!というレイジウイルスの脅威が上手く描かれていて、一気にヒートアップ。
心臓バックバクです。
全速力で走って逃げるドンに、これまた全速力で追いすがる感染者群が、直線に対して畳み掛ける面の圧力といった感じでとても良い。

その後、災悪を逃れたドンは米軍管理下の隔離地区へと避難し、旅行先のスペインから帰還したドンの子供達、タミーとアンディの姉弟との生活がはじまる…のだが、ここから冒頭のスピード感が一気に失速してしまうのが残念なところ。
姉弟が避難特区外に出るエピソードの理由付けも希薄で、それを米軍は発見しながらみすみす見逃すという体たらくぶり。
その後、実は母は生きていた!というお決まりの展開から、なぜか彼女だけがウイルスに感染しながら発症していない保菌者であることが判明。
このあたりはかなり大雑把に処理されていて、なぜ保菌者として生き延びることができたのか、なぜ自宅に戻ったのかといった疑問はスルー。

母が生存しており、ドンの説明と矛盾することから、そこからドンと姉弟の間にすれ違いが生じるのだが、幼い弟はまだしも姉は十分大人であることから、ドンの取った行動が過ちなのか、正しかったのかはともかく、状況が許さなかったこと位は理解するべきだろう。

それにしても随分損な役回りを押し付けられたロバート・カーライル。
一応、主演のように宣伝されてますが、実質的な主人公は子供達で、本人は割合あっさりモンスター化。
ダニー・ボイルに頼まれて断れなかったのかな。

で、案の定隔離地区においてレイジウイルスの感染が発生するのですが、ここでも一民間人のドンが米軍の最高機密区域までやすやすと侵入できてしまう無用心ぶり。
どっか地方の零細企業なんでしょうか、米軍は。
続々と感染者が発生する状況に米軍は最終手段[コード・レッド]を発令、感染を食い止めるべく一般人もろともに銃撃という作戦(?)に出る。

本作ではあからさま過ぎるように米軍のイラン進駐を皮肉っている(米軍が来たことで事態は更に悪化し、多くの無辜の人々が死んでなお、テロの連鎖が断ち切れないでいること)のだが、さすがに未知のウイルスをテロと同一視して米軍を叩くのには若干無理がある。
ともあれ米軍、バッタバッタと感染者と一般人の別なく射殺していきます。
それはそれとして軍人にも良識派に目覚めた奴がおり、彼らに護られつつ姉弟は脱出行に。

話は脱線するが、タミー役のイモージェン・プーツがなかなか美貌で、まあそんなコがかわいそうな目に会うのはホラーのお約束。
このあたり、わざとホラー的な記号を外すことで終末的な世界観を描き出していた前作とは対照的で、これもビッグバジェットゆえ…と思わされたりしますが、素直に楽しみましょう。
対して物語の核となる弟君は、どうもいまいちキャラが立っていないのですが。
個人的にはかわいい姉だけ残してくれていれば問題なかったです。

ともあれ感染者&米軍から必死で逃げる主人公達。
終盤、地平線一面に広がった感染者の大群が襲い掛かってくるシーンはおおっ!と思った。
そんな感染者群をヘリのローターでなぎ倒し
さらに、前作より格段に予算規模が大きくなったことが幸いして、ロンドンを盛大に空爆&バイオ兵器で殲滅。
ベトコンよろしく感染者を駆逐していくわけで、このあたり前作のスマートさに欠けるところがありますな。

最終的には救いがありつつ、そのさらに28日後の後日譚を描くことで、世界中にレイジウイルスが拡散してしまったことを示唆しつつジ・エンド。
なんとなくマンガの『チャイルド・プラネット』を思い出しました。

結果的に、低予算ながらシニカルな視点で極限状態においてはモンスターよりも人間の方がよほど恐ろしい、という結論を提示した『28日後…』にははるかに及ばず、普通のホラーアクション映画に落ち着いてしまったのが実にもったいない感あり。
とはいえアクションシーンなどに一見の価値があるし、続編としての出来はなかなか良いと思うので、こういったジャンル好き、あるいはイギリス映画好きの方は劇場に足を運ばれてはいかがでしょうか。

付記:
『28日後…』の方は万人にお薦めします。
無論怖いシーンもありますが、それ以上に美しいシーンもあり、ぐっときます。


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