雑木帖

 ─ メディアウオッチ他 ─

もう一つの「限界」

2006-01-02 12:45:52 | メディア
 国際報道をめぐる諸問題に関して様々な意見交換が行われたが、議論の過程で度々浮上したのが、「何が本当に起きているのか」「何を報道するべきなのか」を正しく探し当て、これを偏見なく報道することの難しさだった。

 メディアのジャーナリズム観が違うと、何が報道に足る事実なのか、これをどう報道すべきか、も変わる。取材の自由が限定される場合や取材者側に思い込みがあったり、知識不足があれば、正確な現状把握は困難になる。

 こうした点から、会議中に特に顕著になったのは、米英メディアの限界ではなかったか、と思う。(「NEWS XCHANGE 放送会議報告―1 米英メディアの限界」小林恭子の英国メディア・ウオッチ
 とても興味深い、勉強にもなるレポートなのだが、もう一つの「限界」、つまり外部からの圧力、また内部圧力、あるいは”筆を折る”という意味での自主規制の問題が、こういう会議に限らず何故どこでも話し合われないのだろうか。

 たしかに方法論や技術論をたたかわせるのは必要であり、例えれば、プロ野球の選手が技術をみがき一流のプレーをしないのであれば、球場の環境がどんなに優れていても話にならないだろう。
 けれど、その球場自体が、打球が空にあがったらどこからか扇風機の風が起こり打球が流される、あるいは球審から投手に返された球が通常の球の重さの3倍ものものだった、どうみてもワンバウンドで外野席に入ったのに、それがホームランになっても選手をはじめ誰も文句を言わない…、球場の環境がそんなことになっていたら投打の技術どころではないだろう。
 その球場の環境の問題も、投打の技術と同じように重要となってくる。

 野球の場合はそういう状況は球場に行けば見ることが出来るが、メディアという名の球場は、読者や視聴者には窺い知れない。
 観客のいない球場で、ビデオカメラが選手だけをめまぐるしく追い、おかしな場面はフォーカスを外したりして写し、それを全国ネットで見せている、そんな野球のような話に僕には映ってしまう。これは彼女のレポートがそうであるというのではなく、その会議自体がそういうものに思えるということなのだ。
 たとえ、僕が言ったような球場のことも話し合っているように見えても、そんなきれい事で済んでいるのだろうかとの、懐疑の念を禁じえないのだ。
 結局、怪我を負っている者が健康者のふりをして運動の話をしている、そんなふうに僕にはその会議が思われてしまう。

参考:
「9.11テロから3年の米」愛川欽也パックイン・ジャーナル から
  2004年9月11日放送のハイライトの音声ファイル。
 Windows Media Player [32Kbps] 約35分 ファイルサイズ 約8MB

司会:愛川欽也 出演:田岡俊次、二木啓孝、内田誠、下村満子、横尾和博

田岡
 私は正直いってあんまり感心しなかった。だって内容は、アメリカではあまり知られていなくても日本ではもうけっこう知られている事だし。特に何故テロにやられたのかといえば、それはひとえにアメリカがイスラエルを支援し過ぎるからで…。イスラエルが酷いことをする。それで国連で制裁をかけようとしても、常にアメリカは拒否権を発動してずーっとイスラエルをかばい続ける。1967年の第二次中東戦争で占領したヨルダン川西岸とかガザから撤退しろということは、その年にもう決まっていたことなのに、37年間も居座っておる。まあ少しだけ返したけれど。イラクがちょうどクウェートに侵攻して国連の安保理決議に違反して居座ったのと同じ形なのに、イスラエルは経済制裁を科せられないだけでなく、アメリカから毎年3000億円くらいの援助を受けている。これを恨まれてもしょうがないのに、その事をアメリカではユダヤ人の勢力が強くて言えない。さすがのマイケル・ムーアも、ブッシュ家とビンラディン家の結びつきには触れているがイスラエルのことは言っていない。

 2000年の9月にシャロンがわざわざ東エルサレムを挑発して第二次インティファーダが始まった。アラブ人のテロ活動による死者は去年末までで800人だか880人くらいでよく報道されているが、それに対してイスラエル軍は2700~2800人くらい殺しているはず。概ね1:3くらいの比率で殺しているんだけど、そのことはあまり知られていないし、まずアメリカのメディアには出ない。「イスラエルを背後から支援するからテロにあう」なんて言おうものなら、みんなに「テロを正当化する気か!」と言われて袋叩きにされるものだから、怖くてとても言えない。さすがのマイケル・ムーアでも言えないんだなぁと思った。

下村
 ニューヨークタイムスの支局長は田岡さんと全く同じことを言っていた。「それが根源なんだ。そこを解決しないことには…」と言うので、「それなら書きなさいよ」と言ったら、「いや、絶対に書けない。タブーだ」と言った。
http://www.h7.dion.ne.jp/~fttb/data_b/p911.html

「立花隆氏のザ・タイムズ評」(小林恭子の英国メディア・ウオッチ)
http://ukmedia.exblog.jp/3309560

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