
![]() | ヒトラー・コード |
エーベル.H,ウール.M | |
講談社 |
初版 2006/01/27
長いです。厚いです。でも読み応えがあります。脚注もとても多く、じっくり読むとかなりの時間がかかります。読み物、というよりヒトラー研究にはもってこいの研究書のような書物。
1933年からヒトラーが自殺する1945年4月30日を経て5月8日までの事柄が事細かく書かれています。側近たちの脱走の様子が最後。
まるで実際に見てきたかのように書かれていますが、それもそのはず、ヒトラー側近の二人が、たった一人の読者のために書いた本、それがこのヒトラー・コードです。その「たった一人の読者」とは、スターリン。下手な事を書いたら、即、シベリア送りとなってしまう状況だったので、ヒトラーのスターリンに対する言動などは省いてあるようです。
この本の元々の原本は、55年近くもロシア公文書館に眠っていたという事で、それがようやく日の目を見たのは2005年の事。当時、かなりの注目を浴び、欧米ベストセラーになった本です。ヒトラーについて知りたい人にとってはまず第一級の書物ともいえます。
が、スターリンただ一人のために書かれた本なので、スターリンを喜ばせるために多少の誇張をしたり、年号に間違いがあるなど、若干おかしい内容も含まれているようですが、それを差し引いても、資料としては超一級と思います。
「ヒトラー 最後の12日間」の映画が封切られたのはこの原本がロシアで発見される前の2004年。両者の間には、ヒトラーの最後の日々の内容に関して多少の違いはありますが、両者合わせて見て読むと、より理解が進むかもしれません。
ヒトラー・コードの中で私が興味を抱いたところは1933年から国のトップに上り詰めていく間のヒトラーの言動です。
ヒトラーに関しては、やはり第二次世界大戦中の事が大きくクローズアップされる事が多いですが、トップにいかに上り詰めていったのかを理解しないと、戦争中のヒトラーの言動については理解がむずかしいかもしれません。
また晩年、パーキンソン病で体が弱っていったとは良く言われている事ですが、10数年も興奮剤とかありとあらゆる薬物を乱用していた点に注目したいです。何かあったらすぐ注射。主治医特製のカクテルのような注射もあったとか。これほどの量の薬物をほぼ毎日投与し続けていれば、肉体的にも精神的にも影響が出るのは必然と思われます。まるで麻薬中毒者。
こうでもしないと独裁者としての威厳と地位を保てない、という独裁者の悲しみを見たようです。もともとのヒトラーは神経質で線が細いかんじの人間ではなかったのでしょうか。
最後、今まで自分のために働いてくれた部下たちを信用する事が出来なくなった姿には、なんとなく、現在の北朝鮮の様子がだぶって見えます。
また、ヒトラーが最後の日々を過ごした首相官邸の地下壕は現在、駐車場になっています。1990年までは東ドイツ領だったという事です。

現在は何の変哲もない駐車場です。周りはアパートでしょうか。町のなかの普通の住宅街のように見えます。
でも、この下に地下壕が埋まっているのです。
終戦当時、この辺りはがれきの山だったのでしょう。
実際にドイツに行った事はありませんが、この場所があの総統地下壕+首相官邸だったとは信じられない風景です。

駐車場の案内板ということです。
歴史好きの方、ヒトラーに興味がある方などにおすすめです。一度は読むべきと思います。