原題 Three billboards Outside Ebbing,Missouri
u-next で視聴。
今年の
アカデミー賞主演女優賞・助演男優賞を受賞した作品です。
日本語タイトルより原題の方が長く、そのタイトルの意味を理解していないとこの映画の本当の意味するところがわからなくなるような作品になっていると思います。日本語だけだったら、スリービルボードだけなので、3枚のビルボードに描かれている言葉に何か意味があるのかと、若干サスペンスのような状態になってくるわけですが、ここに
Missouri がタイトルの中に入っていることが、実はとっても重要になっている、この映画。
原題を見た時、なぜ、Missouriが入っているのか、ものすごく興味が湧いたわけですが、後からいろいろ調べてみて、なるほどと思った次第。この映画はMissouriでなければいけないと。また、今年のアカデミー賞の作品賞って
シェイプ・オブ・ウォーターなんですが、どっちかというとスリービルボードを選んでもらっていた方が、アカデミー賞の重みがずっと増したのでは、というような感想を持ちました。
最近のというか前からそうだったかもしれませんが、アカデミー賞ってその時の気分で選んでいるような雰囲気がする。つまり、その時の社会の動向とか政治情勢とか。昨年のアカデミー賞の作品賞はムーンライトなんですが、それだってその前だかに黒人がでていない映画ばかりを選んでいるとアカデミー賞に批判が出たりとか、社会情勢的に同性愛のことなどが取り上げられることが多かった時期で、だからこういう映画を選んだのか、と思ってしまったのです。本当に作品で選んでいるのか、わからないところもあります。
ラ・ラ・ランドでもよかったんじゃないの、と未だに思っているところ。ですが、オトコを捨てたオンナ、というような構図は好きではないですが。また、この映画では、今の(その時の)社会情勢に合わない、と意見する人もいたようです。
今回のアカデミー賞、前評判的にはスリービルボードも非常にオスカー候補だったわけのようですが、Missouriとくるとトランプ政権に関係してくるので、それもあって作品賞に選ばなかったのかとすら勘ぐってしまいました。シェイプ・オブ・ウォーターも評価は高かったようですが、盗作疑惑などがあり、ゴールデングローブ賞をスリービルボードが受賞したりしていたため、オスカーはスリービルボードになるのではないのか、と予測している人もいましたが、蓋を開けてみればシェイプ・オブ・ウォーターが獲得してしまいました。
私てきには、スリービルボードが絶対に一番、と思ったのですが。。
そのかわりではないですが、主演女優賞に
フランシス・マクドーマンド。とういうか、今回の場合、主演女優賞には彼女しかいません‼️あの「
ファーゴ」を彷彿するような演技で、彼女でなければこの映画は成立しなかったでしょう。
一見隣の気取らないおばさん風ですが、芯が強く自分の絶対的な意見を持っていて、他人に惑わされず、決めたことは絶対にやり抜く。と、アメリカの強い女性そのもののようなイメージです。凄みがあります。ファーゴの時もそうでしたが、彼女の独特な演技や存在感の強さは忘れられません。そこにいるだけで演技になっているような雰囲気を持っています。日本だったら、彼女のような女優さんって、今はもういませんが、
乙羽信子さんかなあと勝手に想像しています。
助演男優賞を獲得した
サム・ロックウェル。この方も癖のある個性的な俳優さんで、フランシスと互角に張り合っていると思います。最初は、なんてイヤな奴❗️と思ったのですが、ラストに見せる笑顔は素敵でした。
そして、なぜMissouriなのか。
私はMissouri州がアメリカではどういう立ち位置なのかよくわかりませんでした。が、トランプ政権になってからこの地方のことが注目され、日本でも一気に認知度が上がってきたのではないでしょうか。Missouri州は、保守的な気風が漂う田舎町ということで白人が多く住んでいて、いまだに人種差別が根強く残る地域だということです。それだけではなく、この地に住む白人もまた差別される対象になっているんだそうです。この白人、というのが低賃金の労働者。このようにアメリカの経済成長から取り残されてしまったこの州の人々は「
ヒルビリー」と呼ばれ、蔑まれる存在だということです。彼らヒルビリーは、トランプ政権の支持基盤とも言われ、映画では「貧しく劣等感を抱えた存在」としてネガティブに描かれることが多く、西海岸のエリート層であるハリウッドの人々から見れば侮蔑の対象となっているということです。
それだから、このスリー・ビルボードは、ハリウッドが蔑み続けてきた彼らを“人間”として扱っている映画なんだとか。ディクソンのような人間もまた、成長し変わり得る存在だと証明しているとともに、「
White trash(白いゴミ)」とまで蔑まれる彼ら白人は、差別的で暴力的、女性を侮蔑し、閉鎖的なコミュニティに生きていて、好意的な存在には見えないにもかかわらず、そんな彼らも人間なんだということをスリー・ビルボードは描いているのだそう。
日本で、こういうような地域ってあるかしら?
こういうようなことを知った上でこの映画を見ると、また別の思いを持って見ることができると思います。
そして、こういう内容の映画を撮ったのが、イギリス人の監督、という事実も考えさせられますね。
とういうことで、じっくり見る映画、ですね。アメリカの内部の問題に思いを馳せつつ。。。
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