時は、流れ移る。
由は、何の不自由なく伸び伸びと育った。もう十五になる。
天界の掟は、十五になった天の子は登龍門がある天神山で、人生最大の試験が待っている。言わずと知れた、通り抜ければ天女になるというあの門である。
合格すれば、天の羽衣を身に纏い天界を自由に飛べるようになるのだ。その登龍門が、由の一生を左右する門として立ち塞がった。
由は、迷っていた。このまま天界にいて天界の男と付き合うことになるのかと。安住に溺れ堕落しきっていた天男に失望していた由は、登龍門さえも辞退して下界へ降ろうかと考え始めていたのである。
そんな由に、毘沙はこう言って諭した。
「 由、そなたもこの父と母の子なら、立派な天女になっておくれ。何の為にここまで育てたと思うぞ。」
そして福は、いつものように「 由、下界へ行くことだけは止めなさい。貴女は、天女になるしかないはずです。違いますか?」とキリッとした顔をして口やかましく言うのだった。
由は、心に蟠りを感じながら黙り込むしかなかった。由は、言いようのない辛さを押し殺して一人で思いあぐねる。
この広い天界に、由の理解者は本当に少ないのであった。
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