この前アップした「真鱈に金沢を想う」と同じく、ブログなるものが登場するず〜と以前の大昔にや
っていた「ホームページ」なんて呼び方をしていたウェブページに載せたコラムに面白いものがあっ
たのでここに復刻しておきます。(^^ゞ
インターネットはまだまだ途上の時代、ウェブページに写真を載せると途端に重くなりコラムの表示
どころか頻繁にフリーズを起こす時代、写真はいらない!なんて悲鳴が聞こえた時代でした。それに
インターネットの料金が電話料金に直結なんてひどい時代でした。・・・。
♢ ♢ ♢
だいぶ昔に亡くなった友人のヨープさんから仕入れておいたネタです。いま読んでもけっこう面白く
/興味深いシチュエーションに嵌まり込んだ友人ヨープさんのお話しです。ヨープさん、オランダ外
務省に職を得て働き始め、4年ほどした頃エジプト_カイロの大使館へ赴任となったそうです。初め
ての海外赴任地だったそうです。しばらくして、土地の長老から公式のディナーに招かれたそうです。
主賓としての招待です。
♢
いわゆる「カスバ」というのが北部アフリカの国々にあります。一種の砦とか城塞の意味ですが、そ
の城壁に囲まれた居住区全体を指しているようです。現代の「カスバ」は居住区というより巨大な市
場 (いちば) と化していると言った方が正しいでしょうね。観光の目玉にもなってます。私もなん度か
行ったことがありますが、なかなか楽しいところです。殊に値段交渉が、つまり値切り倒すのがね。
この国々はイスラム教徒の国です。
カスバには肉屋さんが何軒もあります。ヨープさん、若かりし頃の赴任したてのことで、全てが珍し
く、暇があるとこのカスバへ入り浸っていたそうです。まだ物価のメチャ安の頃で、骨董品や革製品、
絨毯等々いろいろ買い漁ったそうです。で、肉屋さんに気がつくまでは楽しめたそうです。魚屋さん
は問題なし。肉屋さんにラムの枝肉が何頭分もぶら下がっています。客が注文するとそのぶら下がっ
ているところから切り取って売ります。新鮮といえば新鮮なのかもしれません。
でも、そのぶら下がっているものはラム肉に見えないのだそうです。切り取るときにその部位をバー
ンと叩いてから作業に掛かるそうです。その枝肉、真っ黒な固まりに見えるほど蠅がたかっているの
で、その蠅を追ってから切り取り作業にかかります。それでバーンです。何か昔漫画かなにかで見た
ようなシーンですね。それを見てから肉が欲しくなくなっちゃったそうです。ラムだけじゃなく牛肉
も。チキンもです。豚肉はイスラムの国では売られておりません。不浄の動物らしいので、口にして
はいけないんですって…。
この赴任地以降、ヨープさんには肉類は工場生産のパックで出てくるハム・ソーセージがいいとのこ
とです。まあ、ポークのステーキは肉色といい、あまり動物っぽくないし…。それにカスバにはない
ものだから許容出来る、となったそうです。^^。私が行った頃にはだいぶ改善されて、蠅は真っ黒に
なるほどはいませんでした。でも、大差ないかな〜?
♢
「公式のディナー」の話に行きましょう。最初に主賓のヨープさんと招待側の主人の前に、美しいレ
ースのドイリーを敷き3枚重ねにしたお皿が運ばれました。お皿にはグニャ〜とした白と黒の混じっ
たモノが乗っています。で、そのご主人のご挨拶です。「主賓である貴殿のために私の牧場の最良の
子羊を厳選し、本日の晩餐の料理と致しました。先ず、主賓のあなたとホストの私で、"子羊の最良
の部位"をご一緒に頂くことにしましょう!乾杯!」と、なったそうです。お皿に乗っているのは子
羊一頭に2つしかないものです。まあ、色々ありますけどね〜、2つあるもの。
ナマの「子羊の目玉」ですって。ラム肉だってもう嫌なのに、どうしましょうね、こんなとき。目玉
ってけっこう大きいんですって! よく知らないけど、外から見えてる眼はほんの一部ですものね〜。
こんな公式の晩餐では、出されたものに手を付けない訳にはいかないだろうし、ホントに困ったそう
です。で、意を決してフォークで摘んで、一気に口に放り込んだそうな。ナイフで切ると水分が出て
しまい余計手にあまると思ったらしいです。眼は開けていても見ないようにして、息もしないように
それを噛まずに飲み込んだそうです。息を吸い込むと臭いで吐きそうな気がしたので…。ご主人はゆ
ったり食べるのを楽しんでいたそうです。
こんなディナーですから、黙して頂く訳にはいきません。皆さんがヨープさんの料理に対するコメン
トを期待していますし、どんな顔をして頂いてくれるかに注目してますしね〜。でも、下手に話をす
ると息をいっぱい吸い込まなければいけません。自分なりに晩餐の最中の会話の話題は用意してある
が、そのマニュアルにたよると長話になる可能性があるのでマズイ、とかいろいろ考えちゃったそう
です。出来るだけ、頷くくらいで済む会話に持って行こうとしたそうです。
で、目玉を食べ終わる (飲み込む) のを見計らって、そのご主人、大変に嬉しそうな顔を見せ「いや、
見上げた方!」と褒めて呉れたそうです。この褒め方に、ヨープさん「エッ?」と、思ったそうです。
ご主人曰く。「いままで何度もヨーロッパの外交官を招待して、これを食べさせようとしたが、皆に
断られた。あなたで、初めて成功した!」そうです。同席した家族や友人達に「この方は信用出来る、
この方は我々の真の友人である!!」とかの賛美の言葉。ヨープさん、そのとき「チェッ、からかわ
れたのか〜!」の印象だけだったそうです。別に腹も立たなかったそうです。でも、これは伝統に則
った古い型の正式な晩餐ではあったそうです。以降、地域の長ともいうべきこの方から、とても可愛
がってもらったそうです。仕事がとてもやりやすくなったとか…。
その後この方から食事に招待される度に、「肉は要らない、野菜と魚が好物です」と説明を加えるこ
とを、決して忘れなかったそうです。他からの招待の時も同様にしたそうです。他の国の外交官から
学んだそうです、これ。
♢
日本に赴任してから、ヨープさん、日本にもこの「子羊の目玉」の記憶に繋がるモノがあるのに気が
つきました。魚の姿作り。「活のいい魚の眼が睨んでる!」と、言ってました。で、いつでもシソの
葉っぱで、魚の顔を覆ってから食べ始めることにしたそうです。刺身は大好きでしたから。(^^ゞ
この話を聞いたとき、数え歌か何かの替え歌の一節を思い出しました。「○○○とするときは、ハン
カチ被せて、せにゃならぬ〜」という、いまだったら考えられないようなひどい歌詞の...。
以上、子羊の目玉のお話でした。
っていた「ホームページ」なんて呼び方をしていたウェブページに載せたコラムに面白いものがあっ
たのでここに復刻しておきます。(^^ゞ
インターネットはまだまだ途上の時代、ウェブページに写真を載せると途端に重くなりコラムの表示
どころか頻繁にフリーズを起こす時代、写真はいらない!なんて悲鳴が聞こえた時代でした。それに
インターネットの料金が電話料金に直結なんてひどい時代でした。・・・。
♢ ♢ ♢
だいぶ昔に亡くなった友人のヨープさんから仕入れておいたネタです。いま読んでもけっこう面白く
/興味深いシチュエーションに嵌まり込んだ友人ヨープさんのお話しです。ヨープさん、オランダ外
務省に職を得て働き始め、4年ほどした頃エジプト_カイロの大使館へ赴任となったそうです。初め
ての海外赴任地だったそうです。しばらくして、土地の長老から公式のディナーに招かれたそうです。
主賓としての招待です。
♢
いわゆる「カスバ」というのが北部アフリカの国々にあります。一種の砦とか城塞の意味ですが、そ
の城壁に囲まれた居住区全体を指しているようです。現代の「カスバ」は居住区というより巨大な市
場 (いちば) と化していると言った方が正しいでしょうね。観光の目玉にもなってます。私もなん度か
行ったことがありますが、なかなか楽しいところです。殊に値段交渉が、つまり値切り倒すのがね。
この国々はイスラム教徒の国です。
カスバには肉屋さんが何軒もあります。ヨープさん、若かりし頃の赴任したてのことで、全てが珍し
く、暇があるとこのカスバへ入り浸っていたそうです。まだ物価のメチャ安の頃で、骨董品や革製品、
絨毯等々いろいろ買い漁ったそうです。で、肉屋さんに気がつくまでは楽しめたそうです。魚屋さん
は問題なし。肉屋さんにラムの枝肉が何頭分もぶら下がっています。客が注文するとそのぶら下がっ
ているところから切り取って売ります。新鮮といえば新鮮なのかもしれません。
でも、そのぶら下がっているものはラム肉に見えないのだそうです。切り取るときにその部位をバー
ンと叩いてから作業に掛かるそうです。その枝肉、真っ黒な固まりに見えるほど蠅がたかっているの
で、その蠅を追ってから切り取り作業にかかります。それでバーンです。何か昔漫画かなにかで見た
ようなシーンですね。それを見てから肉が欲しくなくなっちゃったそうです。ラムだけじゃなく牛肉
も。チキンもです。豚肉はイスラムの国では売られておりません。不浄の動物らしいので、口にして
はいけないんですって…。
この赴任地以降、ヨープさんには肉類は工場生産のパックで出てくるハム・ソーセージがいいとのこ
とです。まあ、ポークのステーキは肉色といい、あまり動物っぽくないし…。それにカスバにはない
ものだから許容出来る、となったそうです。^^。私が行った頃にはだいぶ改善されて、蠅は真っ黒に
なるほどはいませんでした。でも、大差ないかな〜?
♢
「公式のディナー」の話に行きましょう。最初に主賓のヨープさんと招待側の主人の前に、美しいレ
ースのドイリーを敷き3枚重ねにしたお皿が運ばれました。お皿にはグニャ〜とした白と黒の混じっ
たモノが乗っています。で、そのご主人のご挨拶です。「主賓である貴殿のために私の牧場の最良の
子羊を厳選し、本日の晩餐の料理と致しました。先ず、主賓のあなたとホストの私で、"子羊の最良
の部位"をご一緒に頂くことにしましょう!乾杯!」と、なったそうです。お皿に乗っているのは子
羊一頭に2つしかないものです。まあ、色々ありますけどね〜、2つあるもの。
ナマの「子羊の目玉」ですって。ラム肉だってもう嫌なのに、どうしましょうね、こんなとき。目玉
ってけっこう大きいんですって! よく知らないけど、外から見えてる眼はほんの一部ですものね〜。
こんな公式の晩餐では、出されたものに手を付けない訳にはいかないだろうし、ホントに困ったそう
です。で、意を決してフォークで摘んで、一気に口に放り込んだそうな。ナイフで切ると水分が出て
しまい余計手にあまると思ったらしいです。眼は開けていても見ないようにして、息もしないように
それを噛まずに飲み込んだそうです。息を吸い込むと臭いで吐きそうな気がしたので…。ご主人はゆ
ったり食べるのを楽しんでいたそうです。
こんなディナーですから、黙して頂く訳にはいきません。皆さんがヨープさんの料理に対するコメン
トを期待していますし、どんな顔をして頂いてくれるかに注目してますしね〜。でも、下手に話をす
ると息をいっぱい吸い込まなければいけません。自分なりに晩餐の最中の会話の話題は用意してある
が、そのマニュアルにたよると長話になる可能性があるのでマズイ、とかいろいろ考えちゃったそう
です。出来るだけ、頷くくらいで済む会話に持って行こうとしたそうです。
で、目玉を食べ終わる (飲み込む) のを見計らって、そのご主人、大変に嬉しそうな顔を見せ「いや、
見上げた方!」と褒めて呉れたそうです。この褒め方に、ヨープさん「エッ?」と、思ったそうです。
ご主人曰く。「いままで何度もヨーロッパの外交官を招待して、これを食べさせようとしたが、皆に
断られた。あなたで、初めて成功した!」そうです。同席した家族や友人達に「この方は信用出来る、
この方は我々の真の友人である!!」とかの賛美の言葉。ヨープさん、そのとき「チェッ、からかわ
れたのか〜!」の印象だけだったそうです。別に腹も立たなかったそうです。でも、これは伝統に則
った古い型の正式な晩餐ではあったそうです。以降、地域の長ともいうべきこの方から、とても可愛
がってもらったそうです。仕事がとてもやりやすくなったとか…。
その後この方から食事に招待される度に、「肉は要らない、野菜と魚が好物です」と説明を加えるこ
とを、決して忘れなかったそうです。他からの招待の時も同様にしたそうです。他の国の外交官から
学んだそうです、これ。
♢
日本に赴任してから、ヨープさん、日本にもこの「子羊の目玉」の記憶に繋がるモノがあるのに気が
つきました。魚の姿作り。「活のいい魚の眼が睨んでる!」と、言ってました。で、いつでもシソの
葉っぱで、魚の顔を覆ってから食べ始めることにしたそうです。刺身は大好きでしたから。(^^ゞ
この話を聞いたとき、数え歌か何かの替え歌の一節を思い出しました。「○○○とするときは、ハン
カチ被せて、せにゃならぬ〜」という、いまだったら考えられないようなひどい歌詞の...。
以上、子羊の目玉のお話でした。