アルカードの姿をはっきり識別すると、マリツィカは顔をくしゃくしゃにしてベッドの脇に立ったアルカードにしがみついた。
「マリツィカ、どうした――なにがあった、父親になにかあったのか」
「アルカードが出かけてる間に先生が来て、お父さんが、もう意識が戻らないかもしれないって――頭を鈍器で殴られて、脳に損傷が出てるから、意識が戻ってももう元には戻らないかもしれないって」
「後遺症が?」 腕の中でアルカー . . . 本文を読む
とりあえず旅行鞄を鋼管の下に置いて、フィオレンティーナは残る四人に続いて客室に足を踏み入れた。彼女と入れ替わりに、なにか用事が出来たのかパオラが和室から出ていく。
床は先日の神城邸や鳥勢で見かけた草のマット――畳と同じもので、フィオレンティーナの目分量が正しければ一枚一枚のサイズが若干大きい様に見えた。
壁際にテレビと冷蔵庫、貴重品を保管しておくためのものか金庫も置いてある。窓際は板間になっ . . . 本文を読む
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港から出て信号が数えるほどしか無い島の外周道路を車で走ること三十分、コミューターは無事に宿泊施設に到着した。
リョカンと呼ばれているらしいその施設は都会にある様な地上何十階もある様な大規模なホテルではなく地上四階建てで、全室が海側に集中している――オーシャンビューとかいうらしいが。
四階のランプが点燈すると同時にチーンというベル音とともに扉が左右に開き、フィオレンティーナはパ . . . 本文を読む