【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》

古都、薬を売る老翁(壷公)がいた。翁は日暮に壺の中に躍り入る。壺の中は天地、日月があり、宮殿・楼閣は荘厳であった・・・・

現代の探検家《田邊優貴子》 =10=

2016-11-06 16:46:22 | 冒険記譜・挑戦者達

○◎ Great and Grand Japanese_Explorer  ◎○

○ 南極の凍った湖に潜って、原始地球の生態系を追う =田邊優貴子= ○

◇◆ 第4回 ヌナターク =2/3= ◇◆

はるか昔から生命を閉じ込めてきた露岩地帯

 私はこのヌナタークに、生物の調査をしにきた。
 南極大陸の大半を占める氷床地帯では、基本、生物は生きていけない。生命が息づいているのは岩が露出した一部の地域だけだ。ヌナタークはそうした露岩地帯の一つである。

 このヌナタークがさらに貴重なのは、今から6万年前も岩が露出していたこと。
 昭和基地やノボラザレフスカヤ基地がある南極大陸の沿岸部にも露岩地帯はあるが、この地域の氷床が後退して剥き出しになったのは、最終氷期の終わりごろ、今から1~2万年前のことだ。一方、このヌナタークは、今より氷表面の標高が約1000メートル高かった最終氷期の間も、ずっと氷に覆われることなく陸地が孤島のように取り残されていたのである。

 その前の氷期はどうだったのかは明らかになっていないが、地形から考えるにその前の氷期にも山々は氷床から突き出ていたと考えるのが妥当だろう、という話だ。とにかく、大陸沿岸よりもヌナタークのほうが、ずっと古くから岩が露出してきたわけだ。

 つまり、はるか昔からヌナタークは、周囲を氷床という物理的に大きな障壁に取り囲まれ、極端に分断・隔離された環境にずっと置かれてきた。そうなると、移動能力の低い生き物は周囲へ分散・拡大することがとても困難になり、その場にとどまって環境に適応し、独自に進化していく道を歩むことになる。しかも、環境が特に過酷な南極大陸だからその淘汰圧はより強いものとなりうるだろう。

 こういうヌナタークの状況のことを、“レフュージア” =“退避地”(生物が絶滅するような環境下で、局所的に生き残った場所)と呼ぶこともある。地球上で一番隔離され、厳しい環境に置かれているこのレフュージアで、そこに暮らしている生物とその生き方について調べることによって、原始地球の生態系を知る手がかりを得てやろうじゃないか、というのが今回の最大の目的だ。

到着

 さて、すでに気合いだけで走っていた私だが、やっと目的地が見えてきたことによって、「とにかくまだこの気合いを保ってゴールまで走り続けることを誓います!」という自分の心の声が聞こえてきたような気がした。

 グルーバー山地に近づくと、これまで以上に裸氷のデコボコが鋭く大きくなった。信じられないくらい手と体にこたえる。ゴールを目の前に、とどめを刺されているような気分だ。残り少ない力でなんとかアクセルを保ち、時速5kmくらいでゆっくり進んでいった。デコボコは激しくなったものの、山の近くでは風が格段に弱まり、急に暖かくなってきた。山が風を遮り、露出した黒い地面が熱を吸収しているのだ。

 とは言え、寒さよりも、このにっくきハードデコボコがこの時の私にとって最大最強の敵であって、スノーモービルの旅の中で今思えばそこが一番の難所だった。橇に載せている荷物の中の電子機器類がすべて壊れたに違いないと思った。

 

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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