介護福祉は現場から 2007.02.22-2011.01.25

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年金と日本経済

2007-11-09 10:30:38 |  年金
第6章 年金と日本経済
p97-p114

このシリーズも、今日で10回目ですが、
この調子だと、30回はかかりそう。
本書の特色は、
「社会保障の問題を、経済学の思考方法で、全体的に見る」
という点にあります。

年金についても、総合的で実証的です。
このブログでは、できれば1000字程度で
とくに重要・面白いと思う点を独断的に、できればわかりやすく紹介します。
(この章のデーターは、2年ほど古いが、そのまま使います)

・今日、公的年金をもらっている方は、3700万人
 保険料を払っている人は、7000万人 という巨大なシステム
・公的年金として支給された総額は、44兆円(2003年度)
 これは、GDPに対して、8.7%に相当する。
・しかも、このGDPに占める割合は、
     1964年   1984年    2003年
     0.39% →  4.28%  → 8.71%
と、急速に比重を高めている。 

・教科書のような話ですが
公的扶助(生活保護)と公的年金の経済的効果を対照させている。
(いわば、定性的な分析。従来の教科書よりはかなり踏み込んでいる)

・定量的な分析で、
1999年から2002年にかけて、
賃金も年金も不平等が増している(p106、図6-4)
ことを、ローレンツ曲線(45度線で完全平均)で示している。

・公的年金があることにより、所得が再分配されてきたが、
それは、所得の格差が拡大してきたことに追いついていない。
(p107、図6-5)
つまり、1981年から2002年の20年間を「所得再分配調査」(3年ごとに行われる)
によって確かめると、
2002年の再分配後の所得のジニ係数 0.3812 は
1981年の当初所得のジニ係数    0.3491 を上回っている。
(ジニ係数が、0に近いほど平等、1に近いほど不平等)

簡単に言うと、せっかく公的年金によって、所得の再分配が行われ、
所得のある人から所得のない人に移転したのだが、
この間の所得格差の増大においついていない ということになる。
(もちろん、もし、公的年金がなかったら、この間の所得格差の増大がナマ
に作用してしまった。所得再配分の改善度自体は向上している)

・すみません・・どうしても、経済学の概念や統計が入ります。
本書では、最近問題になっている保険料に未納問題やデータ処理の問題には
「各論」として触れていない。

・公的年金の、もっとも大きな課題は、その持続可能性ですが、
この点については、本書第14章で消費税との関連で実証的に触れています。
すでに、経済学者たちによって沢山の試算が公開されている(p346)
問題は、政治的決定のレベルにきていますが、この点は後にゆずります。
(最近の国会の議論を聞いていると、政治家が初歩的な経済学的事実や思考方法を持っているとは考えられないのですが・・
何といっても、公的年金の問題は、政治の問題です)

(1315字)

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