国鉄があった時代blog版 鉄道ジャーナリスト加藤好啓

 国鉄当時を知る方に是非思い出話など教えていただければと思っています。
 国会審議議事録を掲載中です。

国鉄は高額納税者だった。第1話

2018-07-29 23:17:28 | 国鉄思いで夜話
国鉄は実は、高額納税者だった。
国鉄と聞けば、鉄道ファンの人であれば、国鉄形車両と答えるかもしれませんが、一般の意見としては、国鉄と聞けば、「赤字」と答える人が大半では無いでしょうか。
しかし、国鉄が実は大変高額納税者であったと言えばどう思われるでしょうか。
実は、国鉄は分割民営化されるまで、地方納付金と言う固定資産税に相当するものを支払っていたのです。
駅舎から、車両など全てに渡って税金が課せられており、各地方自治体の収入となっていました。
始まりは昭和31年4月24日に、「国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律」という非常に長ったらしい名称の法律が公布されました。
このような法律ができた背景には、地方自治体への地方交付税の問題がありました。
当時の地方自治体は、多くの権限を国が握っており、地方時自治体はその出先機関的な扱いをされている時代でした。
ただ、国としても地方交付金を増やしたいのですが、なかなか増やせないと言うジレンマから、このような納付金制度を発足させたようです。

国鉄は資産の90%以上に税金がかけられていた。
地方納付金を国鉄等が支払うべき理由? が、交通年鑑、昭和32年版にありましたので、少し長いですが、引用させていただきます。

31年度から3公社の所有する固定資産に対し公社有資産所在市町村納付金が賦課されることになりました。
納付金賦課の理論上の根拠とされるところは、国鉄等の固定資産も所在市町村の消防、道路、衛生その他の施設から利益を受けていることは一般の現に固定資産税を賦課されている他の固定資産と同様であり、応益負担の原則上、国鉄等も本税を負担するのが当然でただ公社の特殊な性格に鑑み納付金の形式によるというにあります。
しかし、会社に対する固定資産税ないし納付金の賦課については、公社の実質上国に等しい性格、国鉄についていえば赤字線区の経営、公共的運賃割引の実施などに見られるごとき公共的性格運賃制度上の制約等の点から多大の疑問があり、またその賦課を肯定するとしても所在市町村別申告に多大の経費人員を要する点等から、英国鉄道の場合に見られるような自治庁に対する一括申告及び一括納付の制度が望まれる。【原文まま】


国鉄も、消防署や警察のお世話になるでしょうから、金を払えという論調なのですが、言わば警察に動いて欲しければ金払え・・・みたいなむちゃくちゃな論調であり、国鉄としても既に通勤・通学定期の運賃割引や、身障者割引、その他の公的負担を行っていることや、同じような現業機関でも郵便局は公社ではなかったために納付金の納付を免ぜられるなど最初から矛盾に満ちたものでした。
その辺は、「公社の実質上国に等しい性格、国鉄についていえば赤字線区の経営、公共的運賃割引の実施などに見られるごとき公共的性格運賃制度上の制約等の点から多大の疑問があり」とその矛盾に対して苦言を呈していますが、この制度は当時の地方交付税の財源が不足していた政府にしてみれば、むちゃくちゃな理屈を付けてでも成立させる必要があったようです。

納付金は、その性格上。
固定資産税の1/2とされていましたが、国鉄の保有する財産の90%以上に課税されるわけですからその額は相当なものでした。
なお、国鉄では、地方納付金の他に固定資産税等も払っていました。
税別の分類は下記のようになっていました。


  1. 宿舎(第1種・第2種の宿舎を除く)・福利厚生施設・貸付施設・遊休施設・旅客誘致施設・発電所及び専用側線の用に供する固定資産・・・固定資産税・都市計画税

  2. 自動車(営業用・非営業用とも)及び軽自動車・・・自動車税又は軽自動車税

  3. それ以外の、直接本来の事業の用に供する線路・駅区などの用地及び建物・軌道・隊道・橋りょう・駅のホーム・車両・船舶及び機械など・・・市町村納付金


が賦課されることとなり、非課税となるのは
病院及び診療所・鉄道学園(第2種を除く)皇室用車両及び踏切設備が非課税
となっています。

宿舎(第1種)とは、駅長宿舎など、駅の近くに設置される宿舎、(第2種)とは、鉄道建設などで工事現場等に設けられる宿舎を指す
鉄道学園(第2種)とは、旧鉄道養成所と呼ばれるところで、規模の小さいものと思われます。


「国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律」条文
参照 http://jnrera3.webcrow.jp/potal_shiryou/Law/Law_other/s31/s31_82.html 国鉄があった時代

なお、国鉄はこの納付金を払いながら、新幹線の建設、ローカル線の建設という離れ業を行っていくことになるのですが、この辺は改めて、記述させていただこうと思います。

すみません、概要としてさらっとまとめようと思ったのですが、書き始めるとよりきちんとしたものにしたくて何回かに分けてアップさせていただこうと思います。
じっくりと、私も調べてアップすることが出来ますので、どうかご協力の程よろしくお願いいたします。


続く



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