国鉄があった時代blog版 鉄道ジャーナリスト加藤好啓

 国鉄当時を知る方に是非思い出話など教えていただければと思っています。
 国会審議議事録を掲載中です。

国鉄は高額納税者だった。第3話

2018-09-17 00:09:17 | 国鉄思いで夜話
増え続ける納付金
長らく空けてしまいましたが、改めて投稿させていただこうと思います。
国鉄に課された、地方納付金は、もちろん、国鉄だけではなく、電電公社も同じ条件でしたが、電電公社が、主に電柱と交換機などに対して、納付金が対象になるのに対し、国鉄の場合、車両や線路にも対象になるため、車両を増備すれば納付金が増えるわけです。
また。車両にATSを付けたりして新たな保安設備などを付ければ固定資産が増えたということで、納付金も増えることになります。
車両基地のある地域では、何もしなくても納付金という形でお金が入ってくるわけですから、地方自治体としては、車両基地等の建設は反対する積極的な理由はありませんでした。

鉄道の利便性が上がると納付金も増える?
戦後、国鉄では輸送力増強のために車両増備や電化などを行いました。
じつは、国鉄に課せされていた納付金は、国鉄が保有する財産に課税するものでした。
当然のことながら、車両が増えれば車両分の納付金が増えます。
また、車両増備に伴い、電車区などを拡張若しくは新設すれば当然のことながら、その拡張分だけ納付金が増えます。
ただ、国鉄の納付金は、線路や駅施設などに限らず、下記の例に示すように、防風林などにも課税されていたそうです。
防雪林や防風林は、雪崩などを防ぐとともに、風を和らげるなど、いわゆる防災という点でも大きな役割を果たしていたものですので、本来は非課税であるべきなのですが、しっかりと課税されていたようです。
納付金制度の導入に関しては、国鉄は元より運輸省もかなり反対したようですが、当時の政府に押し切られたような感じです。(当時の首相は、鳩山一郎)

国鉄としては、納付金の制度はやはり納得いかない制度であったのか、下記のような不満を述べています。

国鉄部内誌、国鉄線、昭和38年11月号から引用させていただきます。

 数年前、秋鉄局の荒井局長が五能線を視察された折、運よくおともをして
沿線を見学したことがある。この線は浪害等の立地条件により、年々改善されてはいるが、黒字になることがきわめて困難で、車中、局長が沿線の林をさして言われた言葉が記憶に残っている。
 「あの防雪林はまったく不経済だ。松や杉を植えてあるのだが、防雪林だからあまり高く伸びると下の方がすいて来て役に立たなくなるので、大きくして高く売ることができない。普通の杉は大きくするために下枝を落とすのだが、それもしないでいる。それでも三〇年位の杉はまあ幾らかには売れるが、しかし、松になると全然買手がないくらい。大きくなれば切って植え替えるという事をくりかえしている。ところが、市町村納付金はチャンとかかっているのだ。」
 赤字線区を、損をしながら列車の運行を確保し。事故防止に努め、そのため防雪林のような施設に金をかけているところに。さらに固定資産税や市町村納付金が課税されるのでは。泣きツラにハチの感がある。私企業ならとっくに放棄しているであろう。
 これは応益負担の課税と言えないことはもちろんである。また、国鉄が全休としては昨年度に約五〇〇億の純益をあげていても、使命遂行に必要な投資にあてる自己資金としてはあまりにも不足。結局多額の借金を続けて行く現状が、諮問委員会答申の「完全破綻以外の何物でもない」ということになると、応能原則などと気休めも言えなくなる。昭和三十一年度に、運輸省や国鉄の反対を押さえて実施されたこの課税は、再び出発点にもどって本質論から検討し直す要があろう。地方財政の困窮もよく分かるが、この制度を続けて行くことが。その地方の国鉄線の営業を廃止する可能性にもつながることになりはしないだろうか。


引用終わり

ここにも書かれていますが、防雪林なども国鉄の土地と言うだけで地方納付金の対象になっていたわけです。
鉄道には、防雪林の他にも防風林と呼ばれるものがありましたが、これらの場合、植えたら終わりということではなく、本文でも書かれているように、大きくなれば、下枝が枯れてしまうため、余り大きくすることはできないと言った問題を抱えているわけです。
結局、こうした防雪林などは鉄道の安全運行を支えるものであるにも容赦なく税金をかけてくることを嘆いているわけですが、「本質論から検討し直す」ということで、減免は認められず、昭和39年の監査報告書では下記のように記述されています。

 昭和40年度を初年度として第3次長期計画に着手したが、 運賃の是正が行われずに本計画が発足したため、既に初年度から困難な局面に立たされている現状である。第3次長期計画遂行に要する資金の確保には、 上述の諸方策による自己資金の確保と財政投融資等借入金の増加を図ることはもとより、 本計画の緊急性と国家的必要性にかんがみ、 この際、政府出資、市町村納付金の減免等国の財政的措置が特に要望される。

として、国鉄としては市町村納付金の減免について望んでいます。
しかし、の意付近に対しては地方自治体としても既得権益ということから反対意見も多く、国鉄改革が本格的に議論される時期なって初めて減免が認められるのでした。

この辺は、機会を改めてお話をさせていただこうと思います。

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