国鉄があった時代blog版 鉄道ジャーナリスト加藤好啓

 国鉄当時を知る方に是非思い出話など教えていただければと思っています。
 国会審議議事録を掲載中です。

国鉄労働組合史 278

2011-09-05 08:54:30 | 国鉄労働組合史
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第五章 分割・民営体制の矛盾の表面化と国労運動

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第三節 賃金・労働条件・安全確保をめぐる取り組み
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三 安全確保の取り組み

 職場からの安全点検調査   
 
 1989年3月から4月にかけて国労東日本本部は、400の職場を対象に安全総点検を実施した。その結果は報告書『JRの安全を職場から総点検する』( 1989年9月) としてまとめられた。それによると、乗務員の職場の問題点として、
①「旅客サービス」を理由とする列車のスピードアップがはかられた結果、駅間の運転時分、停車中の旅客乗り降り時間が短縮されたこと、列車の最高速度は曲線区間及び旅客駅通過時を含めて引き上げられたこと、
②運転士は定められた列車の測度と運転時分を守り、列車の遅れを出さないために、また、列車の編成両数の違いによって生じる各駅の停止位置の違いよるミス防止など、非常に大きな精神的緊張を求められていること、
③大幅な人員削減が要員不足を招いており、1週平均労働時間は40時間を基準としているとはいえ、実際上はこれを超過化していること、特に予備勤務者の労働時間については48時間を越えていること
④運転時間が長いことから運転士の食事時間、仮眠時間が不規則になっていること、そのために規則正しい生活ができない状況になっていること、
⑤運転士に対する教育・訓練が不十分であることなどが明らかになった。

 また、検査・修繕部門では、
①JR社は車両の検査作業を行うための「規定」を改悪・緩和させたことが、安全基準の低下を招いていること、この「規定」についての説明や教育も不十分であり、日常的な技術教育については単なる資料の配布にとどまっていること、
②経験豊富な車両技術係が国労所属の組合員であるという理由から当該職務からはずされているために、職場に経験豊かな技術者が少なくなり、判断業務をともなう検査・修繕業務に支障をもたらしていること、
③過去7年間にわたる新規採用の抑制と「55歳定年制」の結果、年齢構成の面で見ると技術者断層が生じていること、
④「分割・民営化」以降の要員削減とその後の「ダイヤ改正」によって、検査・修理職場では時間的余裕をもって作業に従事することができなくなっていること、
⑤職場によっては、残業をしないとその日の検査・修繕作業が終わらない状況も生じていること、
⑥就業時間外に「小集団活動」が強制されており、タダ働き残業が強いられていることを指摘している。このような職場実態を踏まえて、『報告書』は「JR以降の検査・修理職場の実態は、安全・サービスの行き届いた車両を国民・利用者に提供するどころか、車両は故障を抱えたまま走っています」と強く警告した。
 施設管理・保守部門ではJR以降後、線路の保守・点検に関する基本的な考え方が大きく変更された。国鉄時代に行われた「定期修繕方式」が廃止され、「整備目標値」によって整備する方式に変更された結果、目標値にまで達しなければ多少の軌道の狂いは修繕しないことになり、また、軌道整備基準値以内であれば修繕せず、整備基値を越えて初めて修繕を行うということになった。
人員削減と平行して進められた修繕作業方式の変更は、巡回検査周期の変更、保守状態検査基準の変更、軌道材料検査基準の変更、分岐器細密検査基準の変更などとも関連し、それら一連の基準緩和策は、実際に保線作業に従事する「管理室」の判断に依存する割合を強めることになったばかりでなく、管理室の統廃合に伴う線路巡回範囲の拡大と要員不足状況のなかで、いわば検査作業の手抜きをさえ強いられることになった。しかも、いったん事故・故障が起これば、その責任だけがしわ寄せされる仕組みになった。 JR社における人員削減、規制基準の緩和が、職場労働者の安全作業の確保の問題に、また、列車の安全輸送という問題に多大な影響を及ぼしていること、実際上、JR職場の実態は労働者が安心して業務に専心できる体制になっていないことを、『報告書』は、以上の職場以外の職場においても具体的に明らかにした。 ついで国労本部は、「安全基準が守られていない状況が当たり前になっている」「要員が足りなくて年休も取れず、休日労働が拡大するなど、労働者の健康が侵されている」「予備品がなかったり、管理者が仕事のことについて知識がなかったり」するという職場状況、「国労が安全問題を提起したり安全点検運動を行うことを敵視し」、これを「企業倒産運動だとして避難」するJR社とJR総連を見据えながら、国労本部が釧路、旭川、札幌、青函、盛岡、秋田、仙台、新潟、高崎、水戸、千葉、東京、長野を対象として 労働者と乗客の安全を守るために「安全総点検調査」に取り組
んだ。

続く

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