昔話

小学校２年生の時、私のクラスに男の子が転入して来ました
名前は忘れてしまったけど、私より背が低くて、坊主頭で色黒で、目がパッチリ大きくて可愛い男の子。自己紹介の時、ペコっとお辞儀をしただけで何も喋らなかった。それからも、授業中に発表することも無いし、遊び時間も自分の席から離れず誰かが話しかけても無口。変な子だなと思ってた。
転入してから少ししての掃除の時間に、その子が「・・・！！」真っ赤な顔して怒ってた。何て言ったか忘れたけど、聞いたことない言葉、鹿児島弁のような東北弁のような言葉だったような。持ってたホウキを床に叩きつけて教室を飛び出した　どうも、クラスの悪ガキが彼をからかったらしい。
その日の帰り道、友達と、あれから教室に帰って来なかった男の子の事を話してた。その私達の前方で何やら人だかり。皆、上を見上げていた。
私達も上を見た。
火の見やぐらの一番上の半鐘の所に誰かがしがみ付いてた。
あの子だ
下で皆は「あぶない」「あぶないから早く降りてこい」とか口々に叫んでた。
男の子は泣きそうな顔をしてた。
たぶん、登ったけど怖くて降りられなくなったんだろうなあ。
そしたら、男の人が走って来てスルスルと登って男の子を抱いてスルスルと降りて来た。テレビで見たターザンみたいでカッコ良かった。
誰かが「さすがサーカスの人や」って言うのを聞いた。二人は親子のように見えた。
その頃、町にサーカスが来てました。
その事があって少ししてから、男の子は転校して行った。
一ヶ月も居なかったと思う。

今、市内で開催してるサーカスのポスターを見て
夜空の丸い月を見て
ちょっと感傷的になって昔のことを思い出した
あの子、サーカスの子だったのかなあ。
そうなら、今頃、どっかのサーカスの団長してるんかなあ。