ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Patty Loveless パティ・ラブレス Sleepless Nights

2008-10-10 | カントリー(女性)

★「When Fallen Angels Fly」「On Your Way Home」等の代表作やプロフィールについてもコチラに投稿しています

 今のカントリーってどんな感じか教えて?って聞かれたら、さすがに1枚では厳しいので、2枚のCDを渡したいと思います。1枚はキャリー・アンダーウッド(Carrie Underwood)の「Carnival Ride」。カントリー・ミュージックの貪欲な吸収力の象徴として。そしてもう一枚は迷うことなく、このクラシック・カントリーのカバー集を選びます。

 ファンにとっては待ちに待ったパティ・ラブレスによるクラシック・カントリーのカバー集。いつかは出してくれるだろうと思っていました。まず、ジャケットからして最高に粋です。エピフォンのアーチ・トップ・ギターを爪弾きながら~これだけでしびれるくらいカッコイイ!~、床に広げた懐かしいカントリーのレコードを眺めているパティ。ジャケットの上部にはレトロっぽく”<<< STEREO >>>”の文字が。副題に”The Traditional Country Soul of」とついているのも、良い雰囲気と強い意志を感じさせます。彼女のキャリアを知っている賢明なカントリー・ファンの方なら、これだけで中身の良さを確信されるでしょう。夢心地になります。



 プロデューサーで旦那の Emory Gordy, Jr(元Hot Band)により選曲された14曲は、いちいち説明不要のクラシックな名曲ばかり。そしてこのアルバムを素晴らしいものにしているのが、カントリー・サウンドのツボを心得きったバックのサウンドです。以前、同じTime Lifeレーベルからリリースされたクラシック・カントリーのDVD「Opry Video Classics」をご紹介した時、その伴奏の素晴らしさに触れさせていただきましたが、そのかつてのダウンホームなトラディショナル・サウンドのエッセンスがここでは見事に表現されているのです。キレのある泣きのペダル・スティール、コクのあるエレクトリック・ギター(そういえば、「Opry Video Classics」に多くその姿が見られたギタリストJimmy "Spider" Wilsonのギターはエピフォンでした。まだテレキャスターではなかったのです)、物静かながら厚みのあるシャッフル・ドラム。それがただのノスタルジーに終らないのは、最新のテクノロジーによる録音技術とナッシュビルの精鋭ミュージシャンのセンス、そして、パティの声の持つ草の根ソウルネスのおかげなのでしょう。本当にいつもどうりと言えばいつもどうりの安定した歌声ですが、天賦の才の賜物である魂溢れる説得力には聴くたびに感動を覚えてしまいます。本国では、今の多くのヒット・カントリーが70年代~80年代のロックの要素を相当に取込んで、ややもするとカントリー・ミュージックとしての独自性や創造性が危うくなっている中で、このクラシック・カントリーのカバー集が今最も過激な作品になっているなんて誰が考えただろうか?なんて批評もあります。



 いずれの曲も文句なしの聴きものですが、盟友ヴィンス・ギルがエバリー・ブラザーズの"Sleepless Nights"でデュエットしてハイライトの一つになっています。パティのバンドのギタリストであり、ソロとしても活躍しているJedd Hughesは"That's All It Took"で軽やかながらもアーシーなハーモニーを披露。ジョージ・ジョーンズの曲が "Why Baby Why"(ロカビリー~パブ・ロックのファンの皆様、聴きなさい)、"He Thinks I Still Care"と複数取り上げらており、改めてジョーンズ御大の大きさが感じられますね。 個人的にしいて1曲挙げろと言われたら、"There Stands the Glass"かな。 Webb Pierce曲を実にダウンホームな形でストレートにカバー。曲が良いからね。そしてラストは、アラ、やっぱりこの人の曲で締めるのね、っというハンク・ウィリアムスSr.の"Cold, Cold Heart"。コレがアメリカ南部のスタイル。タイトルからしてブルーなこの名曲をしっとりと歌い上げて、素晴らしいアルバムは幕を閉じます。

 クラシック・カントリーのカバー集としては、マルティナ・マクブライドの好盤「Timeless」が思い出されます。マルティナ盤も的確なバックのサポートと歌の上手さで聴かせてくれていましたが、このアルバム、カントリー・フィールドのエンターテイナーとしてキャリアをステップアップする為の必要から製作されたのだろうと思っています(つまりファン層を上に広げる為)。対してこのパティー盤クラシック集は、彼女のカントリー・ミュージックへの心の奥底からの純粋な愛情と使命感から、必然的に自然に生まれてきたように聴こえるのです。



 今のカントリーだとか言われて、このクラシック集を渡された方は、困ってしまうんでしょうね(困らなかったら、凄く有望)。おまけに、クラシック集の方が過激なんだよ、などと言ったら、もうわけが分からないって。しかし、キャリー盤に心引かれるような方なら、いずれ分かってくれると信じたいのです。

 ●PattyのMySpaceサイトはコチラ


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5 コメント

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イイ!! (torldor)
2008-10-12 17:43:45
MYSPACEで聴きました。これはイイ!!
早速買います。
なんか最近、クラシック・カントリーの匂いを感じることのできるアルバムにレベルの高いものが多いような。
今まできちんとチェックできていなかったせいでしょうか?
しかしこれは個人的には嬉しいこと!POPカントリーも好きですが、やっぱりこういう音が元気だとうれしいのです。
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私も購入しました。 (POCKE)
2008-10-12 18:55:19
しびれるジャケットですね。
中身もGoodです。
大好きなパティーがこんなアルバムをリリース
してくれてうれしいです。
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Patty (bigbird307)
2008-10-15 22:28:34
torldorさん

コチラも気に入っていただけて幸いです。この時代にオーソドックスなスタイルを貫くアーティストやスタッフは、やはりこのスタイルへのただならぬ愛情と深い洞察、そして信念を持っている人たちでしょうから、作品が研ぎ澄まされたものになるのでしょう。そうそう度々聴けるモノではないでしょうけれども。貴重なアルバム、ぜひお楽しみください。

POCKEさん、お久しぶりにコメントを頂き嬉しいです。

ジャケット一目見て買っちゃいますよね。前作「Dreamin' My Dreams」が、いつもながらすこぶる好盤だったものの、例のソニーのコピー・コントロールCD問題で回収騒ぎになったりで、新作はどうなるのかやきもきしていました。こうしてありがたく拝聴する事ができてホッとしました。
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Patty Loveless (Dolly)
2009-01-27 11:21:45
はじめまして、Patty Loveless は私も大好きです。 いろいろな歌をLive house で歌っていますが、Patty Loveless の曲は本当に感動しますね。 このalbum (sleepless nights)も全部歌いたい曲ばかりです。 日本のcountry ではあまり歌っている人は少ないですが、こうやってきいてる人達と共感できるのはとてもうれしいですね!
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Unknown (bigbird307)
2009-01-29 00:45:21
Dollyさん、コチラこそはじめまして。コメントを有難うございます。

Live Houseで歌われているとのことで、プレイヤーの方からコメントいただけるのは大変嬉しいです。このブログでもバランスを考えると、国内シンガーの方々のライブ・レポートなどもホントは入れたいのです。でも、プロのジャーナリストでもないので、そんな時間もないもので・・・

今後ともシンガー目線のご意見をいただけたらとても嬉しいです。

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