ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Becky Schlegel ベッキー・シュレーゲル- Dandelion

2010-06-28 | カントリー(女性)
 ミネソタのブルーグラス界というローカル・シーンで活躍後、2008年に「For All the World to See」で全米デビューし、カントリー・ファンにも馴染みよいアコースティック・ミュージックで楽しませてくれたベッキー・シュレーゲル。その彼女の2010年最新作です。「For All the World to See」がまだブルーグラス・ルーツをそこかしこに感じさせていたのに対し、本作はカントリー・スタイルやフォーク色をより推し進めたイメージで、ナチュラルな生音メインはそのままにレパートリーが広がりました。リー・アン・ウォマックLee Ann Womack、ドリー・パートンDolly Partonそしてアリソン・クラウスAlison Kraussらが引き合いに出されるほどに、美しくリラックスしたソプラノ・ボイスの表現力には磨きがかかっています。さらに、全曲ベッキーの自作と言うソングライティング能力。まだまだメジャーとは言えませんが、今後も注目し続けたいシンガー/アーティストの一人です。

                    

 オープニングは"Anna"で、フォーキーに幕開け。アンニュイなベースラインがチョッとアーバンな雰囲気です。続くタイトル曲"Dandelion"は、ジャケットの艶やかさとは裏腹な、実にブルージーでジャグ・バンド風のスロー曲なのがユニーク。タイトルの”ひまわり”を、歌い手の心を捉える愛する男性に喩えて、その気ままな振る舞いに心を痛める心情が、虚無感すら漂わせる歌声で表現されます。これら2曲で新境地を聞かせた後、"Colorado Line"でようやく、これまでの彼女らしいアップテンポのブルーグラス・チューンが登場。和み感溢れるお得意の歌声が楽しめ、チョッと一息つけます。ただ、ストレートなブルーグラスはこの曲くらいかな。新境地の最右翼と言えるのが、なんとピアノ・バラードの"The Way You Are"。ソフトでナイーブな曲調は、まるでドラマの主題歌のよう。ベッキーのアーティストとしての成長を印象づけてくれます。

                    

 リードシングルの"So Embarrassing."は、このアルバムを代表するフォーキーなカントリー・ソング。心和むフル・アコースティックのミディアムです。ベッキーのジェントル・ボイスとドブロの響きが会話してるかのよう。"I Never Loved You Cowboy"は、よりカントリーにシフトしたモダンなナンバーで、エレクトリック・ギターとペダル・スティールがロンサム・フィーリングを演出します。そして私お気に入りが、ドラマティックな旋律とバンジョーが全編効きまくりの"Don’t Leave It Up To Me"。カントリーにシフトしようとする場合、大概バンジョーを抑える事が多いのだけれど(アリソン・クラウスがこの手の事をやってる)、このナイスなカントリー・ナンバーでのバンジョーの堂々たる絡み具合は絶妙、グッと来ますね。そして、エコーを効かせたギターの音色が、これまた泣かせてくれるんです。

 演奏の編成はごくごくミニマムで、音も素のまま。加工された音に馴染んだ方々には新鮮に響くことでしょう。オルタナ・カントリーともラップする作風と言えるかもしれませんが、バンジョーがバリバリとフィーチャーされた音はチョっと違うかな。そういった牧歌的なルーツ感を残しつつ、楽曲の幅広さ、質の高さで聴かせるこの作品、今のベッキーだからこそ聴けるサウンド、そして歌声なんだと思います。ルーツ・ミュージック・ファンには応えられないでしょう。聴き込む毎に味が出てきます。

 ●ベッキーのMySpaceサイトはコチラ


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