ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Jason Isbell & the 400 Unit ジェイソン・イズベル - Reunions ~一メインストーム・カントリー・ファンの感想~

2020-10-17 | カントリー(男性)

 

新作を出す度にカントリー・チャートで軽く1位を獲ってしまう、

アメリカーナ系アーティスト、ジェイソン・イズベルとそのバン

ド400ユニットの2020年のアルバムです。2017年のグラミー賞で、

「Nashville Sound」という聞き捨てならないタイトルのアルバム

がアメリカーナ・アルバム賞を受賞しており、そのお陰か、今年

1月にビルボード東京で来日ライブも行っています。同行したフィ

ドル奏者の奥様アマンダ・シャイアズは、あのハイウィメンのメ

ンバーで発起人である事はコチラの記事で紹介しました

 

 

ビルボード・ジャパン等に詳しい記事もあるので、プロフィール

は省略いたします。その「Nashville Sound」やこの新作を聴いて

感じたのは、もし30年前、アラン・ジャクソンの「Here In The

Real World」にハマる前に聴いたらどう思ったかな・・・という

事です。粘りあるスライド・ギターをフィーチャーした、ニュー・

ウェイブ後のアメリカン・ロック調や、アコースティック曲での

精緻な音創りなどよくできてるとは思うのですが、どうもって

こないのです。以前取り上げた、同じくアメリカーナ系のイラ

ー・チルダースTyler Childersは、レトロなカントリー・サウンド

に乗った煽情的なロック・ボーカルが結構気に入ってたのですが・・・

 

 

 

そもそもアメリカーナとは何ぞや、ですが、レコードコレクター

ズ増刊「カントリー・ミュージック」では、アウトロー・カント

リーと同じカテゴリー分けで、゛1970年代中盤にテキサス系人脈

を中心に起こったアウトロー・カントリーのムーヴメント、また

それ以前からロック/ポップ/フォーク系のアーティスト、あるい

はシンガーソングライターたちが行っていたカントリーへのアプ

ローチ等々。本章ではそれまでのカントリーの本流にくみせず、

それぞれの個性と視野のもとに描いたカントリー音楽にアプロー

チしたアルバムを幅広く紹介している゛とあります。なるほど、

ですね。今となっては、カントリー、フォーク、SSW、R&Bなど

もひっくるめたルーツ系非商業的音楽を「アメリカーナ」と呼び、

アワードも開催されるほどのジャンルになってます。

 

つまりは、アメリカーナという音楽スタイルが有るわけではなく、

アーティストそれぞれの信念を前面に押し出したルーツ系音楽と

いう事になりますかね。ノンコマーシャル、つまり聴き手にあまり

媚びない芸術志向。ジェイソンの音楽を聴いてると、メインスト

リーム・カントリーに有るものが、ことごとく無い感じがします。

曲想、コード進行がフレンドリーでない、フックが無いとは言

ませんが、薄い。声が徹底的に切実で、楽しんで!寛いで♡ではな

い。勿論、それを意図して製作しているのです。これは音楽の質

の事ではなく、音楽にどんな機能を託したいかの考え方の違いと

いうことですね。アメリカーナはやはり自己表現のロックから派

生してきた音楽であり、そもそもが娯楽芸であった戦後黄金期の

カントリーにだんだんロック、ポップ的要素を後追いで加えて

ニュー・カントリーとは出どころがちがうんでしょう。あまり

ャンル分けにこだわりたくないですが、昔のおおざっぱな区分

だと、ジェイソンの音楽は「ロック」なんだと思います。

 

 

ただ、これだけは事実として押さえておきたいですが、やはり非

商業的なので、アメリカ社会における影響力は限定的だと頭の

片隅には置いとくのが冷静です。ロバート・T・ロルフ氏が「カン

トリー音楽のアメリカ」での論考のターゲットを設定する際の考

え方について、゛取り上げたのは、商業ルートに乗り広く歌われ

た主流のカントリー音楽だけである。(「オー・ブラザー」のお

陰で)ブルーグラス音楽の人気は当然ながら高まったが、聴衆の

数が少なく、本書ではほとんど紙面を割いていない。「アメリカ

ーナ」につていも同様である゛と説明されています。

 

 

「Reunion」はカントリーとアメリカ―ナのアルバム・チャートで

1位になる前の週もチラリと顔を出していて、その時はアメリカー

ナで2位、カントリーでは17位でした。集計の方法の詳細はわかり

ませんが、マーケットの規模の違いが現われたような気がしてます。

また、例えばメインストリームの代表格フロリダ・ジョージア・

ラインはデビュー・アルバム以降ほとんどRIAAのプラチナ・セー

ルス(100万枚以上)を記録してきましたが、ジェイソンは残念な

がらゴールド(50万枚以上)に届いていないようです。

 

チョッと上げ足取りみたいになって申し訳なかったですが、あまり

に持ちあげられるのも複雑なので(返す刀でメインストリームを叩

いてくる・・・)、なるべく冷静に実際をまとめてみました。繰り

しますが、売れたからいい音楽だ、という事はありません。た

売れてる方が影響力やその国の文化をよく表現していて、そこが

面白いのです。そして売れた人の方が多くの人を笑顔にして

るの事実なはずです。

 

要するに、メインストリーム系アーティストをどなたかもっと日本

に呼んで欲しいのです。アメリカーナの人が来日しているのに、な

のです。


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