前作の「Dan + Shay」からのスマッシュ・ヒットになった"Tequila"と"Speechless"が2年連続でそれぞれグラミー・カントリー・デュオ賞を獲得し、本作に収録されたジャスティン・ビーバーとの共演曲 "10,000 Hours"も今年のグラミーで同賞を受賞するという偉業を成し遂げた、今を時めくカントリー・デュオのダン+シャイ。そんなビッグになった彼らが、彼ららしさたっぷりのニュー・アルバムをリリースしました。本作には、昨年トップ10ヒットしたスロー曲"I Should Probably Go to Bed"や、現在ヒット中の"Glad You Exist"も収められています。
アルバムのプロデューサーや全曲でソングライターにクレジットされているダン・スマイヤーズによると、本作は昨年の新型コロナ・パンデミックの期間に大半の作業をしたものの、2018年の「Dan + Shay」リリース直後からプロジェクトはスタートしていたそうです。゛このアルバムは僕らがこれまでリリースした中でベストな仕事だと感じているよ。どの曲も本当に、本当に深く掘り下げて、3年前にアルバムを出してからもずっと書き続けて来たんだ゛゛このアルバムには全ての人にとって何かがあるんだ。幸せな歌や悲しい歌、そしてその間のもね。前回のロード・ツアーから随分と時間が経ったから、「Good Things」の曲を今度の僕たちのアリーナ・ツアーでプレイする事が待ちきれないよ゛9月からいよいよヘッドライナーとしてのツアーが予定されています。
ニュー・シングル"Steal My Love"
ダンは、コンサートやソーシャル・メディアでファンとつながる事を望んでいますが、そこで大切にしているのが、真実である事、です。゛人々がつながりたいモノは信頼できる本物であり、僕たちも音楽や人生において信頼のできる本物であろうとしているよ。誰かがソーシャル・メディアで僕たちをフォローした時、僕らは良く見せようと取り繕ったりはしないんだ。良くも悪くも、見たまんまなのさ。忠誠心溢れるファン達が居続けてくれるのはその結果なんだよ。僕はカントリー・ミュージックのコミュニティーの一部でいる事を有難く感じているんだ。他のどのジャンルの音楽よりファンは忠実でいてくれるんだよ゛
ダンの言葉からも、この新作の音楽が彼らに期待されるイメージから大きく逸脱しない事が理解できますね。「Dan + Shay」の記事で触れたプロフィールの通り、二人とも元々はポップやR&Bを目指したアーティストです。そんな二人によるポップ・カントリーは、「ポップなんて・・・」と眉をひそめるトラディショナルな(私のような)輩にも不思議とアルバム通じてすんなり聴けてしまうくらい、心地よく角の取れたサウンドとメロディーが徹底されていて、それは本作でも変わる事はありません。ポップR&Bグループのようなコーラスとシャイ・ムーニーのハイ・トーン・ボイスがアコギなどの生音を程よく織り交ぜた弾むサウンドに乗って、聴いてすぐダン+シャイだと分かる音楽はここでも健在です。親しみやすさと個性の両立、なかなか出来る事ではないと思います。
そんな中で、表現の幅を広げようとする意欲も十分感じられます。”You”や"Lying"あたりはR&B色がこれまで以上に漂い、特に後者はかつてのニュー・ソウルのようなクールな出だしが印象的です。また、前作の"Tequila"で見せたシンフォニックな音世界をさらに発展させたのが"Give in to You"。メロディの流れというより歌声やコーラス、そしてストリングスの掛け合いで聴かせるこれまでにないタイプのナンバーで、これをたった2分半の中にパッケージする所が彼ららしいです。重厚なスロー"let Me Get Over Her"でもストリングスがフィーチャーされ、シャイがさすがの歌唱力で歌い上げます。全体的にサウンドは適度に華やぎを増していて、ゆとりの音創りをしていますね。
前作「Dan + Shay」はとにかく"Tequila"と"Speechless"の2曲のハイライト有りきのアルバムでしたが、本作は(終盤の既発ヒットは別にして)アルバム全体でクオリティをアップしようとした意欲作である事を、音からも感じられるアルバムと思います。
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