コーヒーとたばこ

真っ黒な壁に
部屋中に漂う紫煙のむこうにぼんやりと
映し出された山崎ハコのコンサートのポスター
そして黒人ミュージシャンが奏でる
哀愁漂うトランペットのブルース

苦いコーヒーをすすりながら、
肺一杯にタバコの煙を吸い込む。
しかもタバコの銘柄は両切りのショートピース。

このように、健康とは対極的な
青春時代を送られたご同輩も少なからずいらっしゃるのでは。

確かに若い時はいつまでも続くみたいな
感覚はありましたよね。

時は流れて
今　そのゆるかった日々のなごりか
コーヒーだけはある種のこだわりをもっています。

そう、時間がゆっくりと流れたあのアンニュイな記憶を呼び起こすように。

いつものコーヒー豆専門店から届く
一部をタッパーに入れ
残りは密閉して冷凍する
煎りたての豆の香りを楽しむ
豆からミルで挽く時間
豆がミルによって挽かれる音が変化するタイミング
お湯の温度
挽かれたコーヒーにお湯を注ぐ時空気と交じり合う膨れ具合と音
使ったコーヒー豆の分量に対してのお湯の量
お湯を注いでから置く時間
濾す時の力の入れ具合
注ぐコーヒーカップへの思い入れ
誰にも触らせない時間と空間

茶の道に近いと言ったらおこがましいでしょうか？
入れるたびに違う味と香り
コーヒーに対する自分だけの世界をしばらく続けます。