蟷螂の独白

世に背を向けた蟷螂です。喜怒哀楽を綴って18年、モットーは是々非々の団塊世代です。

チャンプ

2020-06-07 14:43:49 | 徒然
蟷螂が具志堅用高氏に会ったのは今から42年前、ガラス屋の息子の結婚式でした。
『グッシーが来る』
親友の、たっての頼みで式の進行を任された蟷螂は身構えました。
なにしろ前々月、防衛戦をKOで飾ったばかりの天下の大チャンピオン、万一粗相があったら一発食らってノックアウトです。
グッシーはガラス屋の、芸能事務所や銀座のホステスにスカウトされるほど超美人の妹の、ボーイフレンドということでした。
そして礼服姿で現れたグッシーは、
『小さっ!』
が第一印象でした。
ライトフライ級なので当然でしょう。
一曲歌ってもらうことになっているとガラス屋に言われてグッシーにお伺いを立てると、なんと結婚式には全くそぐわない『くちなしの花』をチョイス。
その上、伴奏のピアノがついていくのに苦労するほどの超々オンチ。
出席者一同唖然とし、苦笑がさざ波のように宴席に広がりました。
引き出物にはファイティングポーズをとるグッシーの、写真付きのサインが添えられてあり、散会後はグッシーの周りに人だかりができました。
出席者が自分の名前をグッシーのサインの隣に書き添えてもらうために。
 
そして歳月は流れ流れて、ガラス屋の妹はグッシーと別れて同級生の妻となり、1児を設けたのちに60歳で早逝しました。
美人薄命です。
妹が亡くなったその年、ガラス屋は三度の飯より好きな三社祭を自粛しました。
 
そのガラス屋は先月末、工場をたたんで隠居。
奇しくも7月末で白井・具志堅ジムが閉館するという報に触れ、ふと思い出し、グッシーの色紙を引っ張り出して虫干しをするとあちこちにシミができていました。
 
かくのごとく月日は百代の過客、有情無情に過ぎ去っていくものだと、感慨に耽った次第です。
 
 

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