噛噛堂しみじみ備忘録

鞄に本。リュックに本。
遅読、乱読、併読、積ん読、それでも中読。いえ中毒。
どうにもこうにも本とのハナシ。

パレード/吉田修一

2007年03月06日 | 噛読了/総評の備忘録

人生後半ともなると、
「もう一度読み返したい本を、じっくり読み返す」…
恐らくこの作業だけでも(最早、まさに、)ライフワークになってしまうと思われ。

でも。
やっぱり。ここまで来ても、「未トライ作家を開拓したい欲」も押さえきれず。

 都内2LDKマンションに暮らす若者男女、4人。大学生の良介。人気俳優の恋人・琴美。おこげの未来。映画配給会社勤務・直輝。ここに男娼をするサトルも暮らし始め、平穏無事に見えそうだったその「暮らし」の闇が見え隠れし始める…

登場人物5人が各々、五者五様の語り口で独白していく各章。
この五者五様ぶりの「自然」な描き分けに、まずは、思いがけず圧倒される。
読者側の嗜好により、ご贔屓の章が異なるであろうほど、各々独特。

ほんの少し「何か」がひっかかるような気がする…
それが、読み進むうちに、「嗚呼」と静かに声を上げる程の「小さなドラマ」につながる。
のほほんとした、アンニュイなそぶりを見せながら、
小さな闇をチラチラと見せていく手法。
この展開の最後に、大きな闇を最後に抱えていることも知らずに、
小さな闇にはだんだんと慣れてゆく。

「なんてこった」
突きつけられた大きな闇を、本当のところ5人はこれからどうやって受け止めるのか、、、
もう一度。
もう一度読み返せば、5人はまた別の顔を見せてくれるだろうか。

この、「不思議」な読後感。「不思議」な魅力。
吉田修一。気になる作家となりぬるを。