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掘り出し新書「働かないアリに意義がある」「秋葉原耳かき小町殺人事件」

2011-02-14 20:36:37 | 出版業界

 大量消費される新書。その中で個人的に掘り出し物と思われるのを2点ご紹介したい。

「働かないアリに意義がある」(長谷川英祐著・メディアファクトリー新書)は社会的生物である蜂や蟻の研究者による、わかりやすい生物学の本。よく人間でも集団の2割は怠け者だと言われるが、社会的生物でも同じ傾向が見られるという。虫にも個性があるのだ。でも、怠け者が即役立たずではない、と本書は語る。天敵や災害などで人手(虫手?)が足りなくなると残りの2割が働き始め、巣全体の寿命を伸ばすのだ。哀れなのは最初から働き通しの個体で、働き者ほど寿命が短くなる。著者は人間社会との対比は適切でないと専門家らしく慎重だが、身につまされ、読後はいっそ爽やかな気分になる。ぼくらはみんな生きている、生きているから悩むんだ~、という感じになるのだ。

「秋葉原耳かき小町殺人事件」(吉村達也著・ワニブックス新書)は、多くの人が思い出すであろう実際の事件の、裁判記録などから編成されたルポもの。40歳の男が19歳の耳かき店女性従業員に入れあげ、ストーカー行為に走った挙句、女性とその祖母を惨殺した事件。

 最初はとんでもないクズだと思えていた犯人だが、そしてそれは変えようのない事実なのだが、読み進むにつれて、なんだか妙に居心地が悪くなってくる。自分と犯人とに共通項を見いだして。それは時折自分にも現れる「嫉妬」「怒り」「孤独」といった突発的感情に底の方で通じている。裁判員裁判制度への提言も含め、タイトルとは裏腹にきわめて硬派な内容だった

 二冊に共通するのは「身につまされる」ということか。もちろんぼくは「働き蜂」でもないし、「耳かき店」に行ったこともないが、どちらも一気読みした。興味があったら手にとってくだされませ。