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ハリポタと販促会社

2006-05-13 05:50:34 | 出版業界

 5月17日の午前5時からハリーポッターシリーズの最新作 「ハリーポッターと謎のプリンス」が発売になる。

 なにしろ、その年の出版界の総売り上げに影響を与える当シリーズ。はやくも、どこかのネット書店は何万部注文したらしいとか、一般紙でも取り上げられたりしていてかまびすしい。

 ハリポタの第一巻が世に出たのが1999年の12月。

 その経緯についてはすでにさんざん語られていて、夫を癌でなくし、小出版社である静山社をひきついだ松岡祐子社長が、著者のJ.K.ローリングさんに手紙を書き、大手出版社を押さえて版権を取得した話は伝説のようになっている。

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 ハリポタ成功の要因のひとつに、静山社が営業を、営業のプロの会社に委託したことがあげられる。

 ブックストラテージサービス(豊田哲社長)がそれ。

 ここがうまかったのが、まず情報操作。上述の版権獲得話をパブとしてマスコミに事前に流し、下地を作っていったりした。

 そして、販売条件などの設定。

 「買い切り」 あるいは 「責任販売」 と呼ばれるものを採用し、基本的に書店が注文した本は売り切ってください、という方法をとってきた。

 これがなかったら、静山社のような小さな出版社は、返品に押しつぶされていただろう。もちろん書店サイドからすれば痛し痒しなのだが、松岡社長が営業までひとりでやっていたらこうした対応はまずできなかったわけで、正解といってよいのではないだろうか。

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 ブックストラテージのような出版の販売代行業者は最近多い。単に書店の欠本補充を担当するところ、企画の段階から参加するところなど、やりかたはいろいろ。

 出版というと、著者や編集者にスポットライトが当たりがちだが、よく言われるのは、出版社にとって「編集」と「営業」は車の両輪、ということだ。

 できたら、大手出版社で編集をする人は、何年か営業経験をしてもらいたい。でも、営業が前面に出すぎるのは、それはそれでちょっと、という気がしないでもない……。

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 老婆心ながら、ハリポタは全7巻というから、残すところあと1巻。大手出版社だったら、ドル箱がなくなった後の売り上げ前年比対応策が大変だろう。

 その点静山社はなんだか潔い。たぶん、ハリポタ後に無理なベストセラー狙いには走らず、良書をじっくり出していくのではないかという安心感がある。くれぐれもご自愛のほどを。