児童書版元の理論社が10月6日、会社更生法を申請した。
このブログのタイトルは「出版ちょっといい話」だから、暗い業界裏話は扱わないことにしている。そのせいで、最近更新が滞りがちになっている。いい話のネタが少ないから(と言い訳する)。
ぼくは出版業界に身を置いて30年になるが、入社当時でも「出版業界は不況だ」という声があった。一方で「不況に強い出版」ともいわれた。たしかに日本語という枠組みの中、業界全体がガラパゴス的環境にあるので、円高とかに一喜一憂することはない。それでも客観的に見て、前半15年は好況、後半15年は不況、と大別できると思う。これは日本全体にいえることだろうけれど。
理論社といえば灰谷健次郎を見いだし、最近では「よりみちパンセ」シリーズなどヤングアダルトの読み物中心に良書を出版してきた。堅実というイメージで、だから「何故?」という思いが強いのだが、経営不安説は数年前からあったらしい。ただ、なんとか持ちこたえるのではないかとも思われていたようだし、実際、6日の更正法申請は、当事者であるはずの社員にとっても突然のものだったと聞いた。
最近の同じ例でいえば、草思社が似たような感じだった。単行本をコンスタントに発行し、ヒットもそこそこ出ていたのに、維持できなかった。出版はたとえベストセラーを出しても、最後の重版で刷り過ぎれば過重在庫になり、それまでの稼ぎなど吹き飛んでしまう。商品寿命が短くなっていることも、経営者にとっては逆風だ。雑誌がダメ、書籍も草思社、理論社クラスでダメとなると、つくづく難しい時代になったと思う。
でも、業界紙によると、書店で「がんばれ理論社フェア」を実施しているところも出てきているという。あれだけの優良コンテンツをもっているから、かならずや再建のスポンサーは見つかるだろう。それまで管財人の管理下で新刊は出せないけれど、がんばって!
応援しますよ。