「このミステリーが面白い」07年度大賞「警官の血」(佐々木譲)と、僅差で次点だった「赤朽葉家の伝説」(桜庭一樹)は、両方とも主に昭和の日本を舞台にした3代記で、読み比べるのも面白いだろうと、まず「赤朽葉家の伝説」を読んだ。そうしたら直木賞が発表になって、一部業界人の予想通り《文藝春秋》の「私の男」(桜庭一樹)に決まったので、予定変更して桜庭を続けて読み、ついこのあいだ「警官の血」を読み終わったところ。
.
で、個人的な順位をつけるとすると、
①「警官の血」
②「赤朽葉家の伝説」
③「私の男」
となった。
.
「このミス」が直木賞に勝った、という結果だが、あくまで個人的な評価なのであまりあてにはならない。
ただ、年に数冊しか小説を読まない人にとって、直木賞というのは大きな購入動機になる。その直木賞に、読後感がよくない「私の男」という小説が選ばれたことを、本を売る現場の人間として残念に思う、とだけ記しておきたい。
.
父親と息子が「警官の血」を読み回す家というのを想像すると暖かいものを感じる。
母親と娘が「赤朽葉家の伝説」を回し読みする家というのもいいなと思う。
けれど親と子が「私の男」を回し読む家というのは想像できないし、したくない。
.
ぼくの評価を単純化すると、そういうことなのかもしれない。
.
文学とはそんな倫理的なものを超越している、と言われれば、黙るしかないけれど。