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KPR(金長ぽんぽこラン)

金長たぬき公園周辺をランニングする仲間のちょっと道草、つぶやき、ささやき・・・

超短編読みきり小説「丸亀ハーフの熱い道」

2010年02月07日 | 読みきり短編小説
丸亀国際ハーフマラソン
記録狙いのランナーであれば
自己新記録を狙って挑戦するコースである。
折り返し地点で全く往路と同じコースを引き返すこのコースは
様々なランナーとすれ違い
刺激を受け、またコースがフラットなこともあって
良い記録が出て楽しいマラソンとして好評なのだ。

「とばしたくなる熱い道」のキャッチフレーズどおり
第64回の大会も8000人超えるランナーが集う。

そして今大会で生まれたひとつの都市伝説
「ハーフマラソンで30km走った男がいる」というのである。
ハーフマラソンはその名のとおり、21.0975km
誰もそれ以上は走れないはず・・・。

なのにである
いくつかの目撃証言がある。
「1時間経過した頃、折り返して復路を走るYを見ました。」
その一方で
「1時間20分を過ぎて復路を走っていると、往路を走るYに出会いました。」

これはいったいどういうことなのだろう。
先に復路を走っていた男が
また往路を走るなんてことがあるだろうか。

また、こんな証言があった。
「もう3時間の制限時間も近い頃、ゴールの丸亀競技場にYが女性を
 リードするようにゆっくり走って入るのを見ました。」

推理はこうだ。
まず、Yは順調に自分の走りで往路を走っていたようだ。
折り返しを過ぎ、一緒にエントリーした妻のY子のことが
気になってきた。彼女は6時間制限のフルマラソンは
ほとんど走ったことがなく、
制限時間が緩やかなレースを好んで走っている。
その彼女が挑戦したのが今回のハーフマラソン。

走る前からその不安ばかり口にしていた。復路を走り始めて、
少し速度を緩め、彼女の姿を探すがいっこうに出会わない。
だんだん不安が募ってくる。

そのとき、息を切らして折り返し点目指す彼女とすれ違う。
そこで迷わず、再度往路に飛び込んだのだ。
自らがペースメーカとなって彼女の完走を伴走するために。
そしてふたりで競技場の門をくぐり、彼女を完走まで導いた。

すべてはつじつまが合う。
自己の記録や走行距離を考えればできないことである
そして、彼自身の記録は果たして認められたのか
さまざまな憶測がされるが
そんなことはどうでもいいことなのかもしれない。
そこには、記録などという一時的な数字よりも
もっと貴重な事実があるのだろう。

この物語は実際にあったかもしれない話をモデルに
創作したフィクションであり、登場人物は架空です。
はい。お後がよろしいようで・・・


助け合って励ましあって
時に自分の不利益があったとしても
まず大切な人のために
尽くすことができる
そんなランナーのいる限り
この世も決して捨てたもんじゃないって
マラソンを通じて
また、ひとつ教わりました。

丸亀完走報告はまた後日。


超短編読みきり小説「転倒」

2009年07月07日 | 読みきり短編小説
あっと思ったときには転んでいた。公園の入り口に差し掛かる角、
特に死角になっているというワケではないのにいきなり何かにぶつかった。
何かはかなりのスピードで、走っていた私を弾き飛ばした。
倒れながら、私の目が見たのは、“あの人”の顔だった。

一瞬のできごとで目の前が真っ暗になり、
遠のいていく意識の向こうから、かすかにその人の声が聞こえた。
なぜここにいるのだろう、彼に間違いはないのだろうか。


頬を伝う何かが不快に感じて手で触れると、流れる汗だった。
そして、私はテニスコートにいた。
沸き起こる歓声というものはなく、目の前でゲームが静かに進められている。
ただ、白いボールがはじかれる音が規則的に聞こえてくる。
まぶしさに目を細めた後、コートで試合をするのが彼だと気付いた。

「これが最後の試合だから、応援に来て」と言われていたんだ。
だから今ここにいるんだ、と思い出した。
なかなか対戦相手が手ごわく、かなり苦戦している。
試合の盛り上がりに反して、観客も少なく声援もなく、
それゆえに、名前を呼んでの応援も目立つようではばかられた。

僅差で彼は負けた。試合の後、なんと声をかけていいものか
励まさなければと思いながら戸惑い、黙ってしまった私に
「終わったよ」と笑顔で話しかけられ、こちらが悪いことをしたような気がして
気まずい想いがこみ上げてくる。

ふたりで自転車に乗り、また暑い八月のアスファルトの道を一緒に並んで
テニスコートを後にして・・・走っていたんだ。そして、ぶつかった。


いや、違う。
走っていた。私はランニングをしていたんだ。自転車じゃない。
「大丈夫ですか」と繰り返す声に、目を開けると、彼がいた。
しかし、よく見るとそれは、あの彼ではなかった。

「すみません。急に引き返したんで、後ろから走ってきているの見えなくて」
私こそ、前に誰か走ってるなんてちっとも考えもしなかった。
でも、これは誰なんだろう。

突然、Aさんじゃないかと口をついて出てきた。
「えっ、そうですけど・・・あの」
間違いなかった、この若者は彼の息子なのだ。
あなたのお父さんを知っているんですと言って、よろっと立ち上がり
心配してくれたことにお礼を言って、私は2、3歩、歩き出した。

若者は、何もなかったように、走り出した。
その背中が、あの彼にそっくりだと思い出しながら
私もまた走り出した。

この物語は実際にあったかもしれない話をモデルに
創作したフィクションであり、登場人物は架空です。
はい。お後がよろしいようで・・・

超読みきり短編小説「迷える女たち」

2009年01月20日 | 読みきり短編小説
小春日和とは正にこんな日を言うに違いない。
1月半ばと言うのに、天気予報では最高気温が10度を超えると告げていた。

長距離を走ったり山道を走ることはできないけれど
山を歩くなら何とかなるだろう、
次のマラソンに備えて足腰を鍛えておこうって
お達者クラブの仲間が5人、山を歩くために集まった。
朝9時。ゆっくりと歩きだす。さわやかな日差しに風も無い。
馴染みの山だけど、これまで山歩きをしたことはなかった。

徳島でのマラソンふたつってどこか?
徳島マラソンと海部マラソン!
いいや、阿波市民マラソンと勝浦川マラソン。
それが地元の通が走るマラソンやな・・笑い話に花が咲く。

目的地までは程なく到着。
下りは別コースで隣町方面に抜ける。
しばらくはなだらかな稜線だったが、

「あれっ、この道 違うみたい?」
先頭を歩く友が急に声を荒げた。
「なんで、お日様からいうと、ちゃんと東に歩いとるよ」
「でも、この先に何も無い」
「えっ」

それまでの賑やかな話し声がすっと木々に吸い込まれ静寂に包まれた。
ハイキング気分での軽装備。食料も持っていない。
かろうじて水分は各自ペットボトル1本のスポーツドリンクを持つのみ。

それからあちらこちらへと木々の揺れに任せるように
私たちは道を求めてさまようことになった。
途中、携帯電話を持っていることを思い出し
バックから取り出したが、「えっ、圏外」
他の仲間の余計な不安感を駆り立てたくなかったが
それよりも自分の不安が強まり「携帯が通じない・・」とつぶやいてしまった。

家族が心配しているかもしれない
捜索願いを出すだろうか
ヘリコプターでの救助隊が見つけてくれるかもしれない
とにかく生き延びなければ・・

どれほど時間が経っただろうか・・・
足もつかれ、空腹を意識し始めた。
「引き返してみよう」
前進するだけが突破口ではないはず。
そう、仲間がいる。
知恵を出し合って、今来た道を戻ってみよう。

そう思ってから力が沸いた。

神の救いか、思いが通じたか、
見覚えのある時点まで
なんとかたどり着けた。
安堵感で足がすくんだ。

「えっ、遭難?それって日の峰?小松島の?あの、ここから見える?」

「う~ん、そうな ん よ。遭難したら恥ずかしかったわな。」

「20分で登って、日の峰を3時間歩きまわっとったん?」

「まあ、戻ってこれたし・・・誰にも言わんといてよ。携帯も通じんのはちょっとの間だけやったみたい」

ってことなんで、お達者クラブの面子のためにも禁口外
お願い申し上げます。

教訓:山をなめたらあかんぜよ

この物語は実際にあったかもしれない話をモデルに
創作したフィクションであり、登場人物は架空です。
はい。お後がよろしいようで・・・

ホノルルへの道のり

2008年12月02日 | 読みきり短編小説
「ご家族の方、診察室に入っていただけますか」
お医者さんの言葉にどきっとした。
晴れた日の昼下がり・・・
義母になにかあったら、一週間後ホノルルにはいけなくなる
頭によぎったのは、自分のこと・・
そんな自分にはっとした。

家族だもの。
何よりも義母を優先してあげないとと
思い直すものの
フルマラソン完走を夢見てホノマラ講座に入り
こんなに走ったのに、
暑い日も頑張ったのに・・
ここまできて行けなくなるなんて嫌だという強い気持ちが
こみ上げてくる。

家族がみんな元気で、
私のやりたいことに理解を示してくれて
この年でハワイまでマラソンを走りに行くことに
反対しなかったどころか
練習したんだから行って来たらと
快く送り出そうとしてくれている
そのことに感謝しなければと
思い始めていた。

自分が恵まれていることに
甘えていたのかもしれない
急に心細いような
きゅんとした想いに包まれた

診察室の窓から、木漏れ日が差し込む

突然、私の思いを突き破る先生の声

「あっ。見てください。これ、こんなに耳クソがいっぱい。
とっておきましょうね」

「えっ、耳クソ?お義母さん?」

「ああ、よう聞こえるようになったわ。
そういや耳掃除や、長いことしとらんかった。なんや耳クソやったんや」

「へ?」

この物語は実際にあったかもしれない話をモデルに
創作したフィクションであり、登場人物は架空です。
お後がよろしいようで・・・

12月2日ぽんぽこ9名、元気に走ってました~


超短編小説「摩天楼を走る女」

2008年11月07日 | 読みきり短編小説
この日のために、随分前から準備をしてきたつもりだ。
走ることはもちろんだけど、仕事でも家庭でも、いつも以上に手を掛け、
心を尽くしてこなしてきた。
気持ちよく遠い地に送り出してもらうためには、下準備が必要なのだ。

そして遂に、ここに立っている。
4万人分の1となり、これから42.195kmに向かう。
実は私には共に走る彼がいる。
彼とは、東京でもローザンヌでも一緒だった。
もう直ぐスタート。彼とまた走れることをかみしめる一瞬。

午前10時20分、号砲。
目の前の景色が、スローモーションの映像のように、
自分を取り残して過ぎていく錯覚を覚える。
ふっと我に戻り、ゆっくりと足を運び走り出した。

とりあえずの目標は、8マイル手前。
会ったことのない知人が待っているはず。
知人の写真のプリントアウトは持っている。さて、会えるんだろうか。
ブルックリンの沿道には黒人の観衆が、空間を空けることなく陣取っている。
足は軽い。「大丈夫、このまま行けば1時間10分程度でその場所にたどり着ける。」と彼のささやきが聞こえる。

ずっと右側の沿道の人の波を、知人を探しながら走った。
離れず走る彼が「1時間12分過ぎた」と教えてくれる。
それから数分、いきなり“徳島大学TJP”のロゴが人をかき分けるように目に飛び込んできた。
わずかA4サイズの紙に書かれた文字なのに、輝いて見えた。
そして、そこに写真でしか知らない知人がいた。
握り締めていた写真のコピーをかざした。
それが、彼らに出会うために走ってきた私の“証明”であるかのように。
それに反応するように、ハグのシャワーを受けた。

しばし留まりたい気持ちと裏腹に、
一緒に走る彼に先を促され、またレースに戻った。
知人との出会いで温かくなったこころが、
その後の永い道のりを走り続ける機動力となって引っ張ってくれた。

摩天楼の町、大都会NYを一緒に走りぬいて彼とゴールしたとき、
安堵感と共に満ち足りた思いで心は張り裂けそうだった。

走ることを止めると彼とのつきあいも無くなってしまう。
しかし、それが現実となることはない。
どこで走ってもレースは感動的で、
私は走ることが止められないのだろうとレースの度に実感する。
もちろん、彼が一番それを知っているのだと思う。

彼の名は、Garmin Forrunner.
最高のパートナーである。

この物語は実際にあったかもしれない話をモデルに
創作したフィクションであり、登場人物は架空です。
はい。本日もお後がよろしいようで・・・

読みきり超短編小説「走る男」

2008年10月28日 | 読みきり短編小説
それは沖縄の南の島、10月も終わりだと言うのに
体感温度は30度を超えて感じられた。
俺は、ひたすらゴールを目指していた。
ハーフマラソンの気軽さも
この暑さでは汗が目に入り厳しいなと感じていた。
暑いが休もうとは思わなかった
射程距離にある前の走者が一番走者だと気付いたときから。
そう、このまま順調に足を運べば
準優勝は確約されたものであり、
あわよくば優勝も夢ではなかった。
欲を出しては駄目だと自重する気持ちと
いや、この機を逃してはとはやる思いとの戦い。

一気に走りこむか・・と思い始めた矢先
ブルブルと腰に振動を感じた。
ウエストポーチに入れた携帯電話。
不吉な思いが頭をよぎる。

この暑さ。徳島を出るときの秋の深まりから
一気に真夏に引き戻された体は
走りだしてから悲鳴を上げているに違いない。
そんな彼女の顔が浮かんだ。

携帯は、その彼女からだった。
「もう駄目、暑くて走れない」
か細い声に俺の脚は止まった。

俺の背を超えてランナーが次々と走り抜けていく。
迷いなどなかった。
俺は、踵を返して
走り来るランナーの顔を見ながら、
今来た道を走り出した。
彼女の元へ。

はやる気持ちに背を押されながら
きた時よりも一層速く
俺は走った。

どのくらい戻っただろうか、
ようやく、ゆっくりと走る彼女の姿を目にした。
思ったより元気そうだ。
急に、力が抜けていくのを感じた。
そうだ、一緒に走ろう。
速く走るために来たんじゃない
共にゴールするために来たんだ。

今までの人生もそうだったじゃないか。
どちらか一方だけの人生じゃなかったはずだ。
君がいて俺がいて
助け合ってきたじゃないか。
そんな思いに包まれた。

容赦なく照りつける南国の日差しに
ちょっと疲れただけと微笑む君。

「おとうさん、なんで来たん?
ゴールで待っといてくれたらよかったのに」
「えっ!?」
「なんも迎えに来てくれんでもいけたんよ」
「そんな~」

この物語は実際にあったかもしれない話をモデルに
創作したフィクションであり、登場人物は架空です。
はい。お後がよろしいようで・・・