goo blog サービス終了のお知らせ 

センター突破 これだけはやっとけ 鳥取の受験生のための塾・予備校 あすなろブログ

鳥取の受験生のための塾・予備校  あすなろ予備校の講師が、高校・大学受験に向けてメッセージを送るブログです。

御馳走中華 歌い放題プラン

2011-06-07 08:31:47 | 洛中洛外野放図
生ビールが出てきたところで、料理を注文した。
「それと、『季節の野菜炒め』と『湯葉と野菜の葛かけ』と…」
と言いかけると、日本語はまだよくわからないので、メニュー表のそれぞれの料理名の横に振ってある番号で言ってくれといわれた。
「あー、これ、49番と48番、それと34番と27番」
「炒蔬菜、炒素□(中国簡体字・火偏に会)、干烹鶏、糖醋肉、ひとつ?」
「あ、うん、ひとつずつ」
四条大橋の西詰め、南側に古くからある北京料理店『東華菜館』本店は毎年5月から9月にかけて『鴨川納涼川床』を開催するので、4~5人で連れ立って毎年夏に何度か足を運んだ。ホールスタッフは中国人留学生が多く、そのときはたまたま日の浅い人に当たったらしい。確認されても正味の中国語なので、合ってるのかどうかよくわからない。それまで何度か行った中でそんな経験は初めてだったが、まぁ、メニューに載っているものなので、食えんモンは出てこないだろう。とはいえ、だ。

 ここの建物はウィリアム・メレル・ヴォーリズ氏(といっても誰だかわからないが)の設計になる『スパニッシュ・バロック様式』だそうで、大正時代の俊工時そのままの姿を残している登録有形文化財なのだという。エレベータは手動式で、アメリカOTIS製(といっても何のことだかわからないが)の日本に現存する最古のものだそうである*。このどうしようもなくレトロで大正モダンな風情漂う洋館で食事をするのになんというか憧れていた。一品の値段はスープやデザート類を除いて1,200円~1万円くらい、本格中華としてはお手ごろなのであるが、なにせ普段の食事に一日1,000円もかかってない、というかかけられないようなヤツらなのである。最初の注文も1,600円を越えるものは含まれていない。間違えて高いものを持ってこられたら、食えんモンではないだろうが財布と相談の上、ということになっても困る。そこで一番年下の平田に「いざとなったらお前が残って皿洗いなとホールの掃除なと、命じられるまま働いてくるように」と因果を含めているうちに料理がやってきた。
一皿置いていくごとに料理名を言われたのだが、わからない。見てもわからないのがあったので、「どれ」とメニューを見せると「これとぉ、これ」と指差してくれた。合ってはいるようです。何品か頼んでも全部一人前である。それを4人で分けようというのだから到底足りるものではない。そのうち生ビールと中国酒で気が大きくなってくる、となると当然アレが食いたいのコレ持って来いの、ということになる。だが結局追加したものもすべて3,000円未満に収まっている。

「何かせせこましいな、もっと高いモンどう?」「んなこと言ったって、フカひれとかアワビとか、高いもん食ったことないですよ。ホントにうまいんですか」「知らんがな。そんなモン食ったことはおろかナマで本物見たこともないわ」

なにしろ北京ダックの身を食わせろとか言い出す始末である。どうやらこういうところで食事をする資格のある者はいないようで、そのような連中が憧れだけで背伸びしている。

 食うだけ食ったらもう繁華街に用はない。そのまま河原町界隈の店になだれ込むこともあったが、大概は白梅町周辺まで戻って、または誰かの下宿に行ってそのまま呑み続ける。大概はウイスキーとかカクテルとか、強めの酒をショットで飲めるようなところに行った。

ところが一時期「二次会はカラオケ」という流れになることも多かった。そんなわずらわしいことをするよりもただ酒を呑んでいるほうが好きなのだが、そうはいっても付き合いはある。『大阪で生まれた女』を歌ったりしていた。普通に歌われている普及版はディスコの帰りから始まるが、BOROによるオリジナル版は18番まであって、三十数分にも及ぶ一大叙事詩である。大阪の高校時代から始まるので、ディスコで踊り疲れるまでが結構長い。あるとき「全部歌えるか」と聞かれて、何の因果か全部知っていたので「たぶん歌える」と答えたところが、6回連続で入れられてしまった。しょうがないので歌ってはみたが、やめた方がいい、さすがにダレる。後半は歌うほうも聞くほうももうヘトヘトになっていて、間奏中ソファに倒れこんで「水…」。
メンバーがメンバーなだけにテーブルの上にソフトドリンクなんぞは置かれていない。しょうがないからビールをがぶがぶと飲んで肩で息をしていると、横から古邑さんがメニュー表でパタパタと扇ぎはじめた。「もうちょっとやぞぉ」セコンドかい。最後のほうはもう誰も聴いてやしねぇ。けれども誰も止めようともしねぇ。こうなるとこっちも意地である。アホ声を張りあげてがなり倒していると、仲のいい、というかほぼ出来上がっている男と女が隅の暗いほうで睦言を繰り始めた。
「イチャつくなァ!」
同じ曲を6回も入力した張本人である曳田は床に転がって寝落ちしている。魂が叫んだ。
おれの歌を聴けえぇ!

このあたりなんだかもう訳のわからない状態で怒り心頭に発していた。こんなもん、楽しいか?

させたヤツらが悪いのか、歌ったワタシが悪いのか、われながらアホなことをしたものである。この後二度と「大阪で生まれた女オリジナル版フルコーラス」企画が出ることはなかったが、また企画が出ても二度とすることもなかったろうが、当時コミックソングを集めていたので、クレイジーキャッツやドリフターズの「ひとりメドレー」をさせられたこともある。当時は自分でも好きでやっているような気になっていたが、後になってみるとカラオケで「楽しんだ」という感じではなく、銘銘好きな歌を歌って楽しんでいる中、一人荒行をしていたような感じがした。
おかげさまでこのころの経験が軽いトラウマとなって残っているようで、現在に至っては大のカラオケ嫌いになり、楽しそうにカラオケしている連中さんを見ては「ケッ」と思うようになってしまったのである。

 *『東華菜館』メニューと建物の詳細は東華菜館HP http://www.tohkasaikan.com/ を
参照しました。