センター突破 これだけはやっとけ 鳥取の受験生のための塾・予備校 あすなろブログ

鳥取の受験生のための塾・予備校  あすなろ予備校の講師が、高校・大学受験に向けてメッセージを送るブログです。

いよいよ

2013-09-25 21:13:59 | 大学入試
こんにちは!

いよいよ
センター試験の出願開始が間近にせまってきました。
出願期間は10月1日~10月11日です。

出願が始まると、なんとなく気持ちが焦りやすいものです。
あぁ、もうすぐ試験だ・・・でも、何もできてない!!(><)

でも、
冷静になってみましょう。あと何日あるか・・・
3か月半ありますよね。

3か月半あれば、できることはたくさんあるはずです。
焦らず、目標をしっかりともって、1日のノルマを決めましょう!

そして、
分からないことをそのままにしないように、
あすなろの先生にどんどん質問してくださいね。
分からないことはその日のうちに解決しよう!!


「ばかなおとこ」フルディティール版

2013-09-20 12:48:17 | 洛中洛外野放図
「あーもぅ、こんなんうちアホみたいやん」
テーブルに肘を突いた右手の指先を額に当てて軽く眉間にしわを寄せながら苛立っている。

 土曜の朝に電話がかかってきた。午後買い物に付き合ってくれという。「今日言われて、今日かい」「昨日何回かかけたよ、しやけどあんた全っ然出ぇへんかったやん」「おぉ、スマン」金曜の夜だ、呑んでいる。帰ってきたのは日付が変わった後だった、と思う。そうは思ってもそのあたりはどうにも曖昧模糊としている。「やっぱり。せやろなー、思ててん」「ほっとけ。でも何でおれなん?」「彼にライターあげたいんにゃけど、うちようわかれへんし。あんたいろんなライター持ってるやろ、しやから選ぶのんてっとうてもらお思て」そういうことか。

下宿の近くにシフォンケーキが美味いと評判の店があるのだそうで、それを京都で暮らし始めてから随分と経っていたそのときにはじめて知った。そもそも甘いものを得意としないのでそのテの店に用事も興味もなかったのでした。とにかくそこで待ち合わせをすると言い出した。「買いモンて、河原町の方と違うんか?」「そうや」「ならわざわざこんな遠いところで待ち合わせんでも…」「食べたいねん!」「さよか」押し切られてしまった。「あんたとこから七本松をずーっと丸太町まで下がったええねん。ほしたら東ィ行き、すぐやから、シーシーズいうとこ。千本通のほうやで、アホでもすぐわかるし」ひと言多いアドバイスを受けて、経験上時間通りに出向くとかなり待たされることになるのは火を見るよりも明らかである。11時の待ち合わせだったので11時に下宿を出た。とろとろと歩いて丸太町通に出て左折、なるほど店名を知っていれば見逃しようがない。店舗入り口の上にしつらえてある青いテントに白抜きで店名ロゴがデザインしてある。アルファベットのCとCとSの並びを見ていると何かを思い出しそうになって、でも明確にならないのでしばらく眺めていると向きは逆だが尾形光琳の手になる頼んないほうの風神の顔だということに思い至った。すっきりして入り口の扉を開ける。
カップル。
女の三人連れ。
カップル ― いてへんがな!
大変な居心地の悪さを感じながら空いているテーブルに付いて、なんだか見られているように感じたのは不慣れな甘いもの屋でちょっとした被害妄想に駆られていたのかもしれない。注文したコーヒーがぬるくなりかけたころ扉が開いて「あー、もう来てたん」って、じき11時半だバカモノ! ケーキを食べるのを待つ間コーヒーをお代わりして駄弁に付き合う。「電話のあと支度しよかなー思てんけど、お風呂入りたなったしな、シャワー浴びててんね」…ようやく店を出てバスに乗り込んだときにはもう1時が近くなっていた。

「なぁなぁ、お昼どうする?」「さっきケーキ食たやろ」「別腹なめとったらアカンで」「そんなもん舐めともないけどやな、もうちょっと後にしよ。コーヒー二杯で腹タポタポや…」

 四条河原町でバスを降りてまずは河原町ビブレから、というので普段なら前を通ることしかない建物の中へ。大阪食道楽、京の着道楽、というのは聞いたことがあるけれど、いろんな物をとっかえひっかえあーでもない、こーでもないとさんざん時間をかけている。「なんや退屈そうやねぇ」今きづいたか。「うっとこの彼やったらいっつも楽しそうに待ってくれたはるよ」彼じゃねぇ。「一番上の階にライターやら売ったはるとこあんねん、あとで行くし先行って見といてくれへん?」はよゆえ。「ああ、ええよ。なんか好みとかあんの?」「へ?」「いやオイルのがええとかガスのほうがええとか」「うちわかれへん言うたやん、任せるし」「ええんかいな」「うん、うちがあげんにゃから、何でも喜ばはるよ」せやったら我がで決めんかい! と出かかったが講義ノートだとかレポートの資料ではさんざん世話になっている。今後のこともあるし、まぁ黙っておいた。しばらく経って大きな紙袋を提げて上がってきた彼女にいくつか目星をつけていたのを示す。「へぇ、カッコええねぇ」「いや、かいらしいなこれ」と一通りリアクションをとったあと「こん中でどれがエエと思う?」「これが一番シンプルで使てても飽きがこんと思うで」「ほなそれしよ」即決やな…

 写真や本の好みに似たところがあってよく貸し借りをしていただけあって、好きな店も共通する所が多い。そこから骨董屋のWright商会を皮切りにいくつか書店玩具店文具雑貨店を回り、休憩しよかと喫茶店に入ったときには結構いい時間になっていた。
「お腹もうタポついてへん?」「おー、ちょっと腹減ってきた」「うちだいぶと前からぺこぺこやってん、こないだええ店(とこ)教(おせ)てもうたから食べに行かへん?」「何屋?」「居酒屋」「行こ」普段の話を聞いていると友達同士でもデートでも箸と透明なお酒の出てきそうにない店で食事をしているらしいが、どうやら気を使ってくれている。

 どこの筋だったか、河原町通から西に入ったところ、高瀬川の手前のビルの階段を下りた半地下になったところに連れて行かれた。広々とした店内の照明は明るく有線で洋楽がかかっていて、ボックス席のテーブルもゆったりとしている。メニューを見ると洒落コケた店内の雰囲気にそぐわないような、いわゆる京の「おばんざい」も扱っているらしい。

「この前誕生日に腕時計くれはってん、せやからちょっとお礼したいなぁ思てんね。ホンマうちライターわかれへんし、助かったわぁ。今日はありがとう」と、乾杯しながら殊勝なことを言う。「あー、かまへんよそんなん。その時計か?」「うん」「エラい高そう」「バイトがんばってくれはってん」「ほーん」しばらく話をしてトイレから戻ってみると
「あーもぅ、こんなんうちアホみたいやん」
テーブルに肘を突いた右手の指先を額に当てて軽く眉間にしわを寄せながら苛立っている。
「どしたん」「これ」と指差したのは松田がテーブルに置いて行ったショートピース。「うち酔ったときたまに彼の煙草もろてんねん」そのときも酔いが回って何気なく手に取って、一口ふかしてクラクラときたらしい。「これ一番強いで」「うん、しやけどそんなん周りで見ててわかれへんやん。なんか彼氏のおらんようになった隙に不慣れな煙草を吸ってみて気持ち悪なってるアホアホ彼女に見えるん違うやろか」いや周りそこまで見てはるかな…

 水を飲ませたら落ち着いたというのでまた呑みながら話をしていると、微笑ましい惚気話だったはずの時計をめぐるエピソードがまったく違う様相を帯びてきた。バイト先のエライさんがスケベったらしいヒヒ爺ぃで、なんだかんだと贈り物をちらつかせて言い寄ってくる。同じ授業を取っているどっかの社長のボンが、親の金にあかせて贈り物をちらつかせて言い寄ってくる。彼氏は一生懸命バイトをしていて、誕生日に何かプレゼントをしたいと言ってくれる。そこで3人にとある高級ブランドの腕時計がほしいと言い、その上で希望の商品に印をつけたカタログを一部ずつ渡したのだという。手元に全く同じ腕時計が三つ、そのうちの二つを売り飛ばし、「会うとき残ったひとつをつけてたらみんな自分が贈ったもんや思うやろ」半開きになった口からくわえた煙草が落ちそうになった。「あ、せやけどアレやねんで、これは彼が買うてくれはったやつやで」いやいやそんな取ってつけたように言ってみても、なぁ。
「あのなー垂高、お前そのうち刺されんぞ」
「ほっといとおくれやす」意図的に京ことばを使いながら作った笑みにぞくっとした。こういうのを妖艶と言うんだろうか。

 会計時「今日はお礼やから奢らせて」と言い張ってお金を受け取ってもらえなかった。地下鉄烏丸線の四条駅まで送って行く途中「なぁ、さっきのこと誰にも言わんといてな」「言えるかい!」改札を通ってから手招きをされ、柵をはさんで向かい合った。「なんや?」「時計売ったの昨日やってん。そのお金で払ったから、あんたも共犯やで」 ― 嵌められた! 奢ってもらった金の出所など奢ってもらった側の知ったことではないような気もするが、聞いてしまったからにはしょうがない。帰り道、一面識もない彼氏に対して後ろめたさを感じたものである。

9月のイベントの報告

2013-09-16 16:10:51 | あすなろ予備校
こんにちは

9月のイベントが9月14日と15日の二日間で実施しました。
1年生と3年生対象のイベントでした。
たくさんの生徒の皆さんに参加していただきました。

高1生は間近に迫った定期テスト対策の授業でした。
しっかりと基本を身に着けて
定期テストに活用してくださいね。

高3生には、ピンポイント攻略講座を行いました。
入試によくでる内容を3時間みっちりと講義・演習しました。

この時期は、焦らず、
基礎で穴の開いている部分を埋めることが
大切になります。

今回の講座の内容をフル活用して、
これからもしっかりと受験対策をしていきましょう!

9月のイベント

2013-09-12 16:13:39 | あすなろ予備校
こんにちは!

「9月のイベント」が今週末に実施されます


高1生・高3生のみなさん!
是非参加してください!


9月14日(土)

<全学年対象>
16:00~16:30 入校説明会

<高1 定期テスト対策 第2弾>
16:30~17:50 西高1年の数学/東高1年の英語
18:00~19:20 西高1年の英語/東高1年の数学

9月15日(日)

<高3 ピンポイント講座>
13:30~16:30物理(光の干渉) 
生物(ホルモン・腎臓・血液循環)
世界史(現代史(第2次大戦後~現在))

16:30~17:00 今から間に合う勉強法

参加希望の方は、あすなろ予備校(0857-22-6896)までご連絡ください。

後期・2学期授業 はじまりました!

2013-09-03 14:59:57 | あすなろ予備校
こんにちは

浪人生の後期の授業と現役生の2学期の授業が
昨日(9/2)から始まりました!!

いよいよ、センター試験も近づいてきました。

待ったなしの状態です。

しっかりと、気を引き締めて、対策をしていきましょう!

志望校をしっかりと見据えて、
今の自分の現状を見つめて、
足りない部分をしっかりと埋めていきましょう!

では、
後期・2学期からもよろしくお願いします!

たぬききつねねこ

2013-09-03 14:25:30 | 洛中洛外野放図
京都の暑い暑い夏が終わってようやく秋の気配の感じられ始めたようにも思われる、とある週末のこと。祝日の巡りあわせで月曜までが連休になり、連休中は現場が動かないので当然資材搬入の仕事もなく何の予定も立たない。めぼしい連れはバイトにデートに行楽にと忙しく立ち回っている様子、いくつか誘いがないでもなかったが夏の温気(うんき)に当てられたのもあったんだろうけれど何をするにも面倒臭く感じられて、すべて断って三日間を無為に過ごすことにした。のだが。自ら選んだこととはいいながら、いざはじめてみると「何もしない」をするのも相当に骨が折れる。土曜の午後に空腹を覚えたころにはもうどうにもいたたまれなくなって、昼飯のついでにまずは下宿から七本松通を南に下って丸太町通沿いの中央図書館で検索目録を物色した。なにしろもう二十何年も前のことなので蔵書はおろか蔵書目録すらデータベース化されておらず、読みたい本を探したければずらずらと並ぶ棚の該当する小引き出しを開けて、みっちりと詰まっているカードを繰っていかなくてはならない。普段ならばまどろっこしくもある手順だけれど、今回のように無目的に思いつくままあちこちの引き出しを開けて回っているとあれこれと連想がつながっていって意外な書籍に行き着いたりする。要は手間と時間のかかるアクティブなアナログ版ブラウジングなのである。結局午後の何時間かをかけて目録を渉猟し、面白そうな本をとっかえひっかえしながら選んで貸し出し手続きを済ませてから昼飯に食べたかやくうどんはもう晩飯にしてもいいほどの頃合いになっている。そうして借り出してきた硬軟取り混ぜ十冊ある本を枕頭にうずたかく積み上げ、手の届く範囲にピースの缶と灰皿とメモ用のスケッチブックとペンと12色の色鉛筆セットとを並べて万全の体制を整えてから銭湯に出かけた。ほんの少し前まで日が暮れた後でも徒歩五分とかからない銭湯から下宿に戻る頃にはもう汗だくになるほど暑かったのだが、風呂上りにまだ暮色の残る中を歩いていると涼やかな空気が湯上りの火照った肌に気持ちよく感じられる。そんなことに秋を感じながら坂の上に立って紫がかったピンク色に縁取られる西の雲の色が変わっていくさまに見蕩れていた。傍から見たら阿呆が呆と突っ立っているようにも見えたろうが、そんなことをしていると少し寒くも感じられたので湯冷めをするのも莫迦らしい、坂を駆け下りて、階段を駆け上って、布団に潜り込んだ。

 そこからは枕元に手を伸ばしては触れる本を「当たるを幸いなぎ倒し」手当たり次第にページを開いていったのだが、一冊を通読することはせずきりのいいところで次の本を開き、何冊かずつ同時進行で読みながら気になった事柄のメモを取ったり図版を模写したり、しているうちにうとうとと微睡(まどろ)んできて、目が覚めればまた本を開いて、途中で煙草を差し挟みながら眠って覚めてを繰り返していたようで。腹が減って時計を見ると日曜の夜明けが近い。布団を出るのも億劫だったが、そういう訳にもいかないので立った勢いでトイレを済ませ、そのまた序に大きな薬缶に水を汲んで戻ってきた。当時は水道もガスもない部屋でほしいだけ湯を沸かすのにアルコールランプと小さな五徳と薬缶を使っており、その小さな薬缶で湯が沸くのを待つ間に手回しのミルで豆を挽いて、何かの実験でもしているようなつもりになってコーヒーを淹れる。風呂上りに実感したように明け暮れ涼しく感じられるようになっていたのでドリッパーの中の豆にまぶすようにして最初のお湯を差すときの、ほんわりと立ち昇る湯気の暖かい香りが嬉しい。とはいえコーヒーだけでは腹にならないので冷蔵庫に常備してあった蜂蜜をなめながらコーヒーを飲んで腹の中からじんわりと温まった。そんなことで腹具合を誤魔化して、それでも甘いものを腹に入れて暫く経つと活字を追って凝り固まった頭の中が解けたようになって、空が薄明るくなりかけた頃に眠気に任せてそのままうとうとと寝入った。

 目が覚めて時計を見ると1時間も経っていなかったが頭はすっきりしている。すっきりとした頭で本を読みメモを取って、煙草を吸ってはコーヒーを淹れて、眠気がさしたら微睡んで覚めては本を読みメモを取って煙草を吸ってコーヒーを淹れときには蜂蜜を舐めて…と繰り返しているうちに日曜の午も過ぎ、そろそろ腹具合の誤魔化しも効かなくなって来た。残りの心許なくなった缶ピースを吹かしながら、どこかに出かけようかと考えながら随分とたまったメモをぱらぱらと捲っていると、ある地図のところで手が止まった。

 京都市内に残る御土居の遺構の在所が記してある。先にも触れたが御土居とは聚楽第などと並ぶ京都改造事業の一環として豊臣秀吉によって当時の京都を囲うように造られた土塁で、これを境に内側を洛中、外側を洛外とするものらしい。その一部が北野天満宮の西側に残っていて、そこから紙屋川にかかる小橋を渡って対岸の小路に抜ける辺りの雰囲気を気に入って大学への往き返りよく歩いてもいた。そんなところがまだほかにもあるかと思い、食事がてら回ってみようかとメモを片手に自転車で出かけることにした。

 自転車で回れないこともないとはいえ京都を取り囲んでいたというだけあってかなりの広範囲に渡る。まずは普段の馴染みもある下宿より西側のものからと、紫野の辺りから南下して行ったが、天満宮の西に残るものほど魅力を感じるところとてなく、陽もだいぶ西に傾いて日差しと風景が黄色味を帯びている。もうやめようかと思いながらたどり着いた西大路御池から一筋東の西土居通りを二筋上がったところにある遺構はこんもりとした杜になっていて、他のところとは様子が違っている。そこまで行ってみると石の鳥居があって、額束には「正一位 市五郎大明神」とある。その奥には参道沿いに朱色の鳥居がいくつも連なっていて、潜って境内に入ってみると拝殿の鳥居の両脇に狛犬のように狐の像があり、拝殿に吊るしてある提灯には「市五郎稲荷」と大書してある。拝殿の前には「史跡 御土居」と書かれた石標が立っていて、階段を上って行った先に当たるお土居跡の上にも社があるようだ。昼でも暗いと思われる杜は薄暮の中次第に色を失っていき、ざわざわと揺れ動きながら不気味さをまとい始めている。鳥居の外とのあまりの落差に呆然とあたりを見回しながら気にかかっていたのは本殿の前に立ったときからなんとなく感じられた、妙にざわついた気配と得体の知れない臭気。と、突然本殿の陰から人が出てきて吃驚した。両手に箒とちりとりを下げたもんぺに割烹着姿のお婆さんが「お参りどっか、ご苦労さんで」と声をかけてきた。たぶん「どすか」と言っているのだろうが「す」の音が明瞭ではなく「どっか」と聞こえるのが印象に残る。
「御土居の跡を見に来たんです」
「はぁ、そうどっか」
「ここはお稲荷さんになってんですね」
「へぇ。お稲荷さんやけど、ご神体は狸ですねん」
「は?」
神社の御守をしているというお婆さんによると祭神の市五郎大明神は狸像を御神体として祀られているそうで、そんな話をしているとお婆さんの足元にわらわらと猫が集まってきた。
「猫、多いですね」
猫は好きなのだけれど、こんな雰囲気のところでどこからともなく何匹も何匹も出てこられてはあまり気持ちの良いものではない。お婆さん曰く、猫好きが嵩じて野良猫にえさをやるようになってから集まりはじめたとのこと、つい今しがたも社の裏手でえさをやっていたのだそうだ。それでどうやら得体の知れない臭いの得体が知れた。猫に与えていたえさと猫の出したものと、猫そのものの獣臭、それにこれだけいれば気配もざわつこうというものだ。
「この辺の人からは『猫稲荷』と呼ばれてますのん」
と言いながらご本人はニコリとしたつもりなのだろうが、見ているとニタリとしか形容の仕様のない笑顔になった。お礼と挨拶を述べて鳥居を潜って道路に出ると空にはまだ明るさが残っている。神社の南側に接する道から西大路通に出て北上しながら目を向けると、うっすらと暮色の残る空をバックに黒いシルエットになった杜がざわざわと揺れている。

 御土居の跡に一塊になってざわめく黒い杜の中心に祀られた狸を守る狐の周りに集まる数多の猫と、そのすべての世話をするネコババァ。翌日行ってみたらそんなものは跡形もなかった、とでもなったら化かしたのは狸か狐か、それとも猫か。なんだか妙な後味を残して無為な日曜が暮れてゆく。