斬!
鋭く空気を切り裂く刃音と共に腐敗人が崩れ落ちた。
その女性騎士の持つ剣は羽のように透き通り、武器とは思えぬ美しさがある。
金色に輝く素晴しい作りの甲冑を身に纏っている事からも、この女性が名門の生まれである事は明らかであった。
実は彼女は戦いは好まない。
しかし、ヴィンランド家の一族であるが故に一介の兵士を遥かに上回る剣の腕前を誇っていた。
彼女は亡くなった父が弟「ガル・ヴィンランド」宛てに残した言葉を伝える為、彼の行方を捜していた。
常人であればたちまち絶命してしまうであろう毒の沼を彼女「セレン・ヴィンランド」は戸惑うことなく進む。
古くから聖女と共に魔を封じ込める働きをしていたヴィンランド家に伝わる甲冑は対魔性に優れている。
その甲冑に身を包んだセレンにとって毒の沼など気に留める存在ですらなかった。
「こんな所で何をしているんだい」
セレンの前にみすぼらしい服を纏った老婆が佇んでいる。
暫くの間、獣と化した者としか接していなかったセレンに取って、
この場所に会話の出来るような人間がいた事に正直驚きを隠せなかった。
「お婆様・・・この地で人に会うとは正直思っていも居ませんでした・・・」
「失礼な娘だねぇ!ここの奴らは元は皆、人間だ!」
「すみません。お婆様・・・」
何をしているかと聞かれても、こんな老婆が弟の事など知っているはずが無いとセレンは思っていた。
しかし、今のセレンは藁をも縋りたい気持ちであった為、無駄だと判っていても尋ねてみる事にする。
「弟を探しているんです!巨大な槌を担いだ騎士と女性をご存じないですか?」
「あぁ・・・そいつらなら知っているよ」
「!!」
「あの女は悪い女だ!何人もの腐敗人を引き連れて谷の底へ降りて行ったさぁ」
「ありがとうございます、お婆様!」
セレンは老婆に深々と頭を下げると足早にそこを立ち去った。
アストラエアを知っているセレンにとって彼女が悪人になるはずなど無い事は明白だった。
しかし、過去の忌々しい記憶が頭によぎる。
強靭であった、つらぬきの騎士「メタス」が魔の手に落ちてしまった事・・・
父の古くからの友である、双剣の「ビヨール」が何者かに捕らえられ行方知れずになった事・・・
「そんなはずは無い・・・」
不安な心を抑えながら、暗い毒の沼をセレンは更に進んでいくのであった。
鋭く空気を切り裂く刃音と共に腐敗人が崩れ落ちた。
その女性騎士の持つ剣は羽のように透き通り、武器とは思えぬ美しさがある。
金色に輝く素晴しい作りの甲冑を身に纏っている事からも、この女性が名門の生まれである事は明らかであった。
実は彼女は戦いは好まない。
しかし、ヴィンランド家の一族であるが故に一介の兵士を遥かに上回る剣の腕前を誇っていた。
彼女は亡くなった父が弟「ガル・ヴィンランド」宛てに残した言葉を伝える為、彼の行方を捜していた。
常人であればたちまち絶命してしまうであろう毒の沼を彼女「セレン・ヴィンランド」は戸惑うことなく進む。
古くから聖女と共に魔を封じ込める働きをしていたヴィンランド家に伝わる甲冑は対魔性に優れている。
その甲冑に身を包んだセレンにとって毒の沼など気に留める存在ですらなかった。
「こんな所で何をしているんだい」
セレンの前にみすぼらしい服を纏った老婆が佇んでいる。
暫くの間、獣と化した者としか接していなかったセレンに取って、
この場所に会話の出来るような人間がいた事に正直驚きを隠せなかった。
「お婆様・・・この地で人に会うとは正直思っていも居ませんでした・・・」
「失礼な娘だねぇ!ここの奴らは元は皆、人間だ!」
「すみません。お婆様・・・」
何をしているかと聞かれても、こんな老婆が弟の事など知っているはずが無いとセレンは思っていた。
しかし、今のセレンは藁をも縋りたい気持ちであった為、無駄だと判っていても尋ねてみる事にする。
「弟を探しているんです!巨大な槌を担いだ騎士と女性をご存じないですか?」
「あぁ・・・そいつらなら知っているよ」
「!!」
「あの女は悪い女だ!何人もの腐敗人を引き連れて谷の底へ降りて行ったさぁ」
「ありがとうございます、お婆様!」
セレンは老婆に深々と頭を下げると足早にそこを立ち去った。
アストラエアを知っているセレンにとって彼女が悪人になるはずなど無い事は明白だった。
しかし、過去の忌々しい記憶が頭によぎる。
強靭であった、つらぬきの騎士「メタス」が魔の手に落ちてしまった事・・・
父の古くからの友である、双剣の「ビヨール」が何者かに捕らえられ行方知れずになった事・・・
「そんなはずは無い・・・」
不安な心を抑えながら、暗い毒の沼をセレンは更に進んでいくのであった。
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