第Ⅱ章 2. 矩計図の記入事項

2020-06-24 13:46:00 | 同:矩計・木材

                                        (「第Ⅱ章2-6)」より続きます。)

7)矩計図(断面図)の記入事項

 1 主要軸組の高さを、施工上分かりやすい指示寸法で示す。

 a.土台天端を基準とする指示1階床仕上り天端の指示がしやすい。基礎天端~土台天端の寸法が整数にならない。

 b.土台下端を基準とする指示:1階床仕上り天端の指示がしにくい。基礎天端=土台下端となるので基礎高さの指示が容易。

 2 造作工事、開口部内法高さは、土台天端~敷居天端~鴨居下端の位置を指示。

        造作工事は、土台天端から、鴨居下端(あるいは敷居上端や土台天+1尺など)に墨を打つ造作工事の基準高さを設けて、寸法取り・造作材の取り付けを行うのが通例である。部材の丈、内法高などのすべてを記入すると、混乱を生じる。

 実施設計図 矩計図に記入すべき寸法

 

矩計図は、建物全体を、分かりやすいスケールで書く。部分のみを描いた矩計図を見かけるが、他人の図面を初めて見る側にとっても、軸組全体を考える上でも、梁間全体を描くことが必要である。

◇ スケールは大きくなるほど分かり易く、また曖昧な所も少なくなる。 

 

補足)設計図作成のポイント

伝えたいことを、分かりやすく明確に伝えるための図面と図面編成を心掛ける。

 実施図面は、各職方に設計者の意図を伝えるための手段であるから、分かってくれるだろうという思い込みは禁物である。間違いやすいと思われる箇所、特に留意しなければならない箇所などについては、強調する記号などで指示することも一法である。

通常、図面の編成方法として、平面図→立面図→矩計断面図→天井伏図→屋根伏図→展開図→詳細図、構造図、設備図・・というように、図面種別でまとめる方式が多く見られるが、実際に一つの部屋の造作工事を行うには、その部屋について描かれた展開図、詳細図、天井伏図、場合によると設備図などが同時に必要となる。これらが部屋ごとに数枚にまとめれていれば、図面をあちこちひっくりかえすこともなく、より伝わりやすく、見落としのないものとなる。したがって、図面編成についても、施工手順などを勘案して臨機応変に対応することが望ましい。

さらに、図面相互の記入の食い違いなどを避けるために、必要以上の余計な書き込みは避ける方がよい。「特記以外は〇〇とする」の記入法も一法である(その方が図面が見やすく、設計変更時の図面修正も容易である)。 また、アキソメ図等の活用も有効である。設計図面の作成にあたっては、常に「立体を2次元で表現し」「必要不可欠な情報(だけ)」を「的確に伝える」ということを基本に作図を進めることが必要であるが、2次元で示しにくい時には、アキソメ図、組立・分解図等も活用したい(作図者側の理解にとっても有効である)。

例 玄関 小縁 アイソメ                      

例 管柱・桁・梁・垂木 仕口図

          

 

確認申請等の手続き用の図面では、断面図は1 /50で十分である。しかし、実施設計図では、1 /30 あるいは1 /20で全体断面図を描くと、建物の全容がとらえやすくなる。これは、単に 画面が拡大されるためではなく、大きいスケールで図面を描くために、細部まで描き込むことが必要となり、より多くの事項の検討・決定がなされるからである。

各伏図がどのくらい熟考されているかにより、最も重要な骨組の耐久性が決まる。伏図の種類は、基礎・1階床組・2階床組・小屋組伏図以外にも、敷居伏図・鴨居伏図・壁伏図など、必要と思われる図面を適宜作成すると分かりやすい(加工作業がしやすい)。

◇ 各伏図の記入必要事項:材の寸面と種類、継手や仕口の位置と種類  継手や仕口を検討することは、単に強度のみならず、建方の順番を考えることでもある。

軸組図は梁間・桁行各方向の番付通り位置の垂直断面で見た軸組材を表記するが、各伏図と併せて軸組図を作成すると、伏図の間違い・勘違いの有無の確認が行える。軸組図は、伏図では表現しにくい部分の理解の補助になるので作成を勧めたい。

骨組模型(軸組・小屋組模型)の作成  さらに最も確実なのは、1/30~1/50程度の縮尺の骨組模型を作成することである。伏図・軸組図で考えの及ばなかった部分の検討が行え、また、どこの部分が構造的に弱くなりそうか、明確に読み取ることができる(継手や仕口の検討も行える)。また、模型は立体表現であるため、施工者にとっても、2次元表現である図面を繰ってゆくよりも、最も分かりやすい情報伝達の手段となる。

                    日本家屋構造「柱杖はしらづえ及び各部の合印あいじるし PDF24頁に掲載

 

この記事についてブログを書く
« 第Ⅱ章 3. 木材について | トップ | 第Ⅱ章 2.矩計を考える »

同:矩計・木材」カテゴリの最新記事