(「第Ⅱ章2-3)」より続きます。)
4)1階床組を検討する
土台、大引、根太掛け、根太、荒床、床仕上げ材。 土台は3.5寸(105㎜)角から4寸(120㎜)角。大引は3.5寸角から3寸(90㎜)角。
(1)大引の架け方の検討 通常は@3尺(909㎜)
A)大引の天端を土台と同じ高さに組む:土台も根太を受ける。大引を土台と同時に組む。
B)大引を土台に乗せ掛ける:土台際(きわ)に根太掛(ねだか)けが必要。柱通りの大引は土台際に束が必要。
(2)大引と根太の組み方の検討
a)根太を大引の上に載せる(「連続梁」状態となる)連続梁と単純梁については「軒桁・小屋梁」の次に解説
-1)丈の小さい根太(45~60㎜程度):大引の上に転がす。@1尺(303㎜:1間の1/6)、1尺2寸(363.6㎜:1間の1/5)
-2)丈の大きい根太(75㎜~):転倒を避けるため、大引に渡りあご掛けとするのが確実(大引と根太を相欠きの方法もあるが、大引を傷めない点では、渡りあご掛けの方が適切)。大引きへのかかりの寸法で床高を調節できる。@1尺5寸(454.5㎜:1間の1/4)。 ◇「根太を落とし込む場合」については1階床組の章で解説
土台まわりの仕口の一例 左:腰掛け蟻掛け・柱 長ほぞ込み栓打ち 右:平ほぞ差し割・柱 重ほぞ
左:大入れ蟻掛け・柱 短ほぞ差し+補強金物 右:片蟻掛け・柱 扇ほぞ+補強金物
5)胴差・2階床梁の位置、組み方を検討する。
通常の建物:1階の管柱に3m材を用いる場合 :約2.76m
2階までの通し柱に6m材を用いる場合:約5.76m
1階、2階の天井高を概略検討する。
通常、天井のふところ(1階の天井~2階梁下端、2階の天井~小屋梁下端)は30cm必要と言われているが、実際には、梁下に電線等を配線するスペース(15cm程度)が確保できればよい。給・排水管の配管には梁下30㎝程度必要。 【かつては、天井高は部屋の大きさにより変え、目安として[内法高(尺)+{部屋の畳数×0.3(尺)}]が用いられた。例 内法高が5尺8寸の場合、8畳間は8尺2寸(2484.6㎜)、10畳間は8尺8寸(2666.4㎜)。】
胴差:建物の長手方向に設け、継手で延長し、通し柱以外の箇所では、管柱で支える。梁間が長いときには、梁間中央に設けることもある(敷桁しきげたとも言う)。
床梁:建物の短手方向に設け、通し柱の中間または胴差に取付き、床の荷重を受ける。通常は1間(6尺:1,818㎜)間隔に設ける。
小梁:丈45~60㎜程度の根太は、小梁を通常@0.5間(3尺:909㎜)以下に設けて支持する。
◇胴差・梁材の寸面の決定
胴差・梁など横架材の寸面は、「単純梁」状態(後述)とみなして、架け渡される距離:スパンにより加減するが、寸面をスパンの大小なりに機械的に単純に増減することは避けなければならない。極端な差がつくと、建物(架構体)全体に外力が作用したとき、寸面が急変する箇所に応力集中を起こすからである。立体的に全体を考える。
また同じスパンに架かる場合でも、胴差あるいは梁が、そのスパンを越えて次のスパンに伸びている場合(支点が2ヵ所を越える場合)には、胴差あるい梁は「連続梁」状態となるため、寸面は相対的に小さくて済む。
胴差と梁をどの高さで納めるか
A)胴差と梁・小梁を同じ高さで納める(天端てんば同面どうづら)に納める
矩計の計画が容易であり、階上の管柱の取付けにも問題が起きない。2階の天井高を最も高くすることができる。(階下に管柱がない場合は、胴差の丈≧梁の丈であることが必要。梁成が胴差からこぼれる。)
根太の納め方
a 胴差・梁・小梁に乗せる。
-1)丈60㎜程度以下の根太の場合:小梁が必要。
-2)丈75㎜程度以上の根太の場合:胴差・梁へのかかりで床高を調整できる。 梁上にのせるだけの場合と、欠きこんでのせる 渡りあごの場合があり、後者の方が強度がある。
b 胴差・梁・小梁の間に落とし込む
通常は、根太の支持間隔は6尺(1,818㎜)程度 以下、丈は90㎜程度以上必要になる(荷重と根太間隔による)。「単純梁」状態となるので、材寸は aに比べ大きくする必要がある。(商家・農家 の踏み天井:根太天井はこの方法をとることが多く、これを意匠化したのが竿縁天井と考えられる。
B)胴差に梁に乗せ掛ける(胴差の丈<梁の丈の場合も可能。)階上の管柱と梁の取り合いに注意。
ァ)梁の端部を胴差の内側に揃える
根太の納め方 a 梁に乗せる b 梁間に落し込む (a,b共に際根太が必要になる。)
イ)梁の端部を胴差の外側まで延ばす
胴差の上に梁をのせ掛けた場合、階上管柱は梁の端部に立てることになり、確実な根ほぞがつくれず(長ほぞではなく短ほぞの扇ほぞになる)、不安定になる。そこで梁の上に直交して横材をまわし、2階管柱を立てる方法がある。この横材を台輪(だいわ)と呼ぶ。台輪と胴差が梁を挟む形になる。言わば、土台をまわしたと考えればよい。しかし、これら三者の噛み合わせだけでは構造的に不安であるため、通常台輪と胴差をボルトで締めつける。ボルト締めは木材の収縮で緩むことがあるので注意が必要。 ◇「梁を胴差の外側に延ばす」別の方法については、2階床組で解説
仕口の一例 左:小根(こね)ほぞ差し 割り楔楔め(わりくさびしめ) 右:三方差し 竿(さお)シャチ継ぎ・小根ほぞ差し割り楔楔め
胴突き付 蟻掛け・柱長ほぞ
左下:傾木(かたぎ)大入れ 全蟻ほぞ差し+補強金物 右下:傾木大入れ 小根ほぞ差し+補強金物
6)軒桁、小屋梁の組み方を検討する。(ここでは束立て和小屋組・束立て組の場合で解説)
束立組は、切妻、寄棟、方形、入母屋のどの屋根形状にも対応できる。
構成部材:軒桁・小屋梁・小屋束・(二重梁・つなぎ梁・貫)・母屋・垂木。
束立組の基本:小屋梁上に据えた小屋束で母屋・棟木を支え、棟木・母屋・軒桁間に垂木を掛け三角断面を形成する(切妻、寄棟、方形、入母屋は、いずれも中央部では三角断面)。
小屋梁の特性:通常、軒桁・小屋梁材にはマツまたは米マツ等の曲げに強い材で、軒桁には平角材、小屋梁には平角材、丸太、太鼓落としが使われる。小屋束を通じて屋根の荷重を受けるため、曲げの力がかかる。梁材の長さには限界があり、梁間が大きいときには、敷桁(しきげた)、敷梁(しきばり)、中引梁(なかびきばり)などと呼ばれる受け材を中途に設ける必要が生じる。
二重梁を用いる
小屋貫を用いる
軒桁と小屋梁の組み方
京呂(きょうろ)組:先ず柱上に軒桁を架け、次いで小屋梁を架ける。柱の位置は軒桁の断面次第で任意。軒桁は、梁を経て屋根荷重を集中的に受ける。下部に柱がない個所では、折置組に比べて軒桁には大きな力(桁を曲げようとする力)がかかる。
折置(おりおき)組:先ず柱上に小屋梁を架け、次いで軒桁を架ける。小屋梁ごとに柱が必要。軒桁は垂木を経て屋根荷重を分散的に受ける。
(1)京呂(きょうろ)組の場合
A)軒桁に小屋梁をのせ掛ける。一般的な方法。 小屋梁に丸太、太鼓落とし、平角材のいずれを用いても可能。◇「小屋梁」を軒桁の外側に出す場合については、軒桁・小屋組の章で解説
B)軒桁と小屋梁を天端同面で納める。 小屋梁に平角材を用いる場合に可能
仕口 左下:兜(かぶと)蟻架け 右下:胴突き付 蟻掛け
(2)折置(おりおき)組の場合
A)小屋梁に軒桁をのせ掛ける。 小屋梁は丸太、太鼓落とし、平角材いずれも可。
B)小屋梁に天端同面で落としこむ。 小屋梁が平角材の場合に可能。
仕口 左下:胴突き付 蟻掛け 右:相欠き渡りあご・柱 重ほぞ
[ 単純梁 と 連続梁 ]
単純梁 : 梁を2支点で支える。梁に荷重がかかると梁を曲げる力が働くが、その力は2支点間だけにかかる。曲げモーメントで言えば、支点間中央が最大で支点でOになる。
連続梁 : 梁を3支点以上で支える。ある支点間にかかる荷重による曲げの力は、支点を超えて隣の支点間に伝わる。その分、支点間での負担が少なくなる。 曲げモーメントで言えば、支点間中央で最大で、支点でマイナス(反対向き)になり隣へ伝わる(中途でOになる箇所がある)。そのため最大値は単純梁のときのそれより小さくなる。したがって、横架材を連続梁として使うと、小さな断面で、同じ荷重に耐えることがきるようになる(材の曲げに対する強度は断面形状により一定である:断面2次モーメント)。